2015年02月13日

haif and half / ハーフアンドハーフ -first part-









:サンドリオンの店内 ---


マスター 「いいお写真ですね、それ ... 」

ユウコ  「もうどれくらいになるかな... この写真。
      確か出会ってすぐの頃だったと思うな ... だってこの私、かなり若いものね」

バーテン 「でも本当に、洒落た構図の写真ですね ...
      大勢の人が背中を向けて石段を登る中で、お客様だけがこちらを向いて立っている ...
      すごく芸術的なセンスの匂いがする写真ですよね」

ユウコ  「彼は一応、芸大の出身だから、これぐらいは撮れなきゃね」

バーテン 「なるほど ... それでこの写真、モノクロでいい雰囲気の仕上がりになってるのか ... 」

マスター 「『シマ コウヘイ』... 今、日本でも屈指の写真家で、世界中の子供の表情をフレームに
収め、その感性が注目されている方 ... 流石ですね」

バーテン 「エッ? それじゃあの写真家のシマさんがお客様のご主人、なんですか ...?」

ユウコ  「そういうことになるみたいね ... 」

バーテン 「そういうことって ... ?」

ユウコ  「所詮、私にとっては単なる夫であって、ただの一人の男性 ... 
      それ以外の何者でもないもの ... 」

バーテン 「単なる夫で、ただの男性 ... 」

マスター 「ご夫婦という間柄では、そういうものかもしれませんね ... 」

ユウコ  「だって ... 駆け出しのぺいぺいの頃から、主人とは顔をつき合わせてたんですから ...
      それが有名になったからって、それを境に急に変わるものでもないでしょう」

マスター 「そうですよね ... 本質的なものは、何も変わりないのですから」

バーテン 「でもその本質的なものが結婚を境に、変わってしまうことも多いと、よく聞きますが ... 」

ユウコ  「でもそれは、勘違いをしている夫婦じゃないかな ... 」

バーテン 「勘違い、ですか ...?」

マスター 「それは ...?」

ユウコ  「結婚したから、夫は仕事で妻は家事 ... 仕事優先で当たり前、掃除して当たり前 ...
      まるで世間一般の風潮がそのまま自分たち夫婦の在り方であると勘違いしてる ...
      そういうこと」

バーテン 「なるほど ... 」

マスター 「夫婦の数だけ、それぞれの在り方があってもいいと ... 」

ユウコ  「一緒になったからって、定番のパートにおさまるのはどうかと思うの ...
そう思いません? マスター」

マスター 「そうですね ... それも一理あるかと ... 」

ユウコ  「一理?」

マスター 「はい ... やはり男と女が互いに歩み寄り、暮らしを共にするということは、自然と世間一般の
      夫婦の在り方に至ってしまうのではないかと、そうおもうのです ... 」

ユウコ  「ウーン ... 確かにそれも一理あるわね ... 」

バーテン 「つまるところ ... 十人十色という訳ですね ... 」

ユウコ  「そういうことになるわね ... 」

マスター 「お作りいたしましょうか?」

ユウコ  「そうね ... じゃ、同じもので」

バーテン 「かしこまりました」


        SE:冷えたグラスに、ホワイトビールとトラストビールが
          1/2ずつ注がれる ---


ユウコ  「それにしても遅いな ... 」

マスター 「お待ち合わせだったんでしょうか ...?」

ユウコ  「ええ ... 彼とね」

バーテン 「お待たせいたしました ... どうぞ」(グラスを置く --- )

ユウコ  「ありがとう」

マスター 「ではお久しぶりに、お会いになるのでは?」

ユウコ  「そうね ... ちょうど一年ぶりかな ... 」

バーテン 「それって ... あのう、失礼ですがご主人と会われるのが一年ぶりという事なんでしょうか?」

ユウコ  「そう」

バーテン 「そうなんですか ... 」

ユウコ  「思うでしょうね ... おかしな夫婦だって」

バーテン 「いえ、決してそんなことは ... 」

ユウコ  「(少し笑って)嘘が下手なバーテンさんね ... 」

バーテン 「いや、それは ... 」

ユウコ  「(笑っている)... 」

マスター 「そういえば今日はバレンタインデーでしたね ... 」

バーテン 「そのバレンタインデーに、何か謂れでもあるんでしょうか?」

ユウコ  「彼、一年中世界を飛び回って撮り続けてるでしょ ... 私はそんな彼の生き方がいいの ...
      だからいつもそばにいてなんてこと、言いたくない。
      彼も、そんな私のところを気に入ってくれてるみたいだし ...
      それじゃってことで、年に一度、このバレンタインデーのこの日だけは、何があっても二人で
      一緒に過ごそうって、彼がそう決めたの ... 」

バーテン 「素敵ですね、それって ... でも、お淋しくはないんでしょうか ...?
      年に一度しか顔を合わせられないというのは」

ユウコ  「だから夫婦になったのよ、私たち」

バーテン 「エ ...?」

ユウコ  「もし一緒にならなかったら、それこそ会えなくて辛くて淋しいと思うじゃない」

バーテン 「はあ ... 」

ユウコ  「でも結婚してたら、帰ってくるところはひとつ ... だから私は淋しくない ...
      夫婦の絆ってものがあるかぎりはね ... 」

バーテン 「夫婦の絆 ... 」

マスター 「恋人同士の赤い糸が、夫婦の絆となって二人を結びつけている ...
      そんな風に思えますね ... 」

ユウコ  「赤い糸が絆になるか ... でも案外、そばにいない方が気が楽でよかったりして ...
      (少し笑う)」

マスター 「それでは世間一般のご夫婦と変わりないのでしょうか ... 」

ユウコ  「あ、そうよね ... そうなっちゃうわよね。何言ってんだろう私ったら」


       SE:ドアの開く音 -----


バーテン 「いらっしゃいませ ... 」

コウヘイ 「またせたな ... 」

マスター 「いらっしゃいませ、ようこそ ... 」

ユウコ  「お帰りなさい ... 」






posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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