2012年06月26日

épisode / ジン来夢.part:W -scene:2-






          長針短針 ... 彼と彼女 -----
          長針がそこから動かなくなれば
          短針もそこから動けなくなる -----
          気まぐれなのか諦めなのか
          それぞれがそれぞれのスタンスで時を見送る -----
          どちらかが少しでも進まなければ
          時の歴史はストップモーション -----
          彼と彼女の二人の時計は
          今はまだほんの少し -----


         :サンドリオン --- ドアの開く音


マスター 「いらっしゃいませ ... 」


ジ ン  「こんばんは、マスター ... 」


マスター 「お久しぶりですね ... ようこそ」

ジ ン  「ホント、ご無沙汰してましたね ... かれこれひと月近くなるかな ... 」

マスター 「確かそのように ... またお仕事の関係で、どこかへ行かれてたんですか?」

ジ ン  「いいえ ... 今度はそんなんじゃなかったんです ... マスターには申し訳ないん
      ですが、単にここへ足が向かなかっただけなんですよ ... ただそれだけ ... 」

マスター 「そうでしたか ... 」

ジ ン  「すみません ... 」

マスター 「いいえ、とんでもない ... お気にならさず。
      それでもちゃんとこうして、またお見えになってくださったのですから ... 」

ジ ン  「そう言ってもらえると、救われます ... 久しぶりに来た甲斐があったってもん
      です」

マスター 「では、そのお久しぶりのご注文は、何になさいますか ...?」

ジ ン  「そうだな ... 今夜の雰囲気にぴったりなカクテルがいいな ... 」

マスター 「今夜の雰囲気、ですか ... 」

ジ ン  「そう ...
      実はここへ来る道すがら、何気に今夜の月の色がやけに青く見えたんですよ ...
      やけにね ... 今まであんなに青くて淋しい色した月なんて見たことなかった ...

マスター 「青くて淋しい色の月 ... 」

ジ ン  「妙に印象に残ってるんですよ、その月の色が ...
      だから、そんな雰囲気にぴったりのやつがいいかなと ... 」

マスター 「かしこまりました ... それでは、ブルームーンがよろしいかと ... 」

ジ ン  「ブルームーン ... 」

マスター 「確か ... キミはいらない ... クローバークラブのお話でしたね ... 」

ジ ン  「そんな経緯を、彼女がボクの友達から聞いて知った時 ... プレゼントして
      くれたのが、このジッポーだったんですよ ...
      確かクリスマスの夜だったっけ ...
      『私がジンの心に火を点けたのなら ... これからその火が消えかけた時には
      このライターで火を点けてほしい』と ... 」

マスター 「そうでしたか ... 」

ジ ン  「だから以前に、マスターとのジッポーの賭けにもチャレンジしてみた ... 」

マスター 「でも、あの時は火が点かなければならない賭けでしたが ... 」

ジ ン  「あの場合 ... 肝心だったのは、火が点くことよりも、このジッポーのライター
      そのものがすべてだったんですよ ... 」

マスター 「ライターそのもの、ですか ... 」


        SE:男、ジッポーのフタを開け -----


ジ ン  「そんな、このジッポーのライターの火が点かないんだから ...
      駄目ですよ、僕たちはもう ... 」


        SE:フタを閉める音 -----


マスター 「そうでしょうか ... 」

ジ ン  「エ ... ?」

マスター 「おっしゃるように、そのジッポーがもし、あくまでも彼女の気持ちの表れだと
      したら、ご自分の気持ちは一体何で表現されるのでしょうか ... 」

ジ ン  「自分の気持ち ... 」

マスター 「それでもやはりそのライターが、お客様ご自身のすべてなんでしょうか ... 」

ジ ン  「自分のすべて ... 」


         :男、ジッポーのフタ開け --- そして閉める


ジ ン  「自分には何もないかもしれませんね ... 気持ちの表れなんて ... 」

マスター 「失礼ながら、私には見えるのですが ... 今も変わらない彼女に対するお客様の
      気持ちが ... 」

ジ ン  「それって ... 」

マスター 「まだその小指にある ... リングの輝きの中に ... 」





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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