2011年12月24日

spin-off / Père Noël -scene:4-






         :バード・バーの店内 -----


マスター 「それじゃあと何日かで、この世に生を享けるんですね ... お客様のお子さんが ... 」

ハジメ  「そうなりますね ... 」

イシハラ 「なのにどうして、あんなことを ... 」

ハジメ  「最後の賭けだと思って、直接出版社に持ち込んだ原稿が、いとも簡単に評価されて
       しまって ... 今までの集大成をと、気合入れて書き上げた作品だったのに ... 」

イシハラ 「それで完璧に打ちのめされたって訳か ... 」

ハジメ  「人から見れば些細なことかも知れませんが ... ボクにすれば決定的な出来事だった
       ... 今日のことは ... 」

イシハラ 「だからと言って、命を粗末にしてもいいものかな ... ねえ、マスター」

マスター 「その代償は ... 残された家族の、深い悲しみだけでしょうね」

ハジメ  「でも、ボクにはもう父親の資格なんか」

イシハラ 「生まれてくる子供には、親は選べないんだよ ... 」

ハジメ  「! ... 」

イシハラ 「仮に君が才能のない男だとしても、たとえ君が最低の男だとしても ... 
       生まれてくる子供にとっては、君が唯一の父親なんだよ」

ハジメ  「オレが、父親 ... 」

イシハラ 「それがまぎれもない事実だろ ... 現実だ」

ハジメ  「 ..... 」

イシハラ 「なあ ... 人それぞれにいろんな生き方があって、いろんな道があると思うんだ ...
       でもその中で、どんな道を選ぶかってことよりも、自分の選んだ道でどれだけやれる
       かってことの方が、大事なんじゃないかな ... 」

ハジメ  「 ... どれだけやれるか ... 」

マスター 「未来にはまだ、失敗はないと思いますよ ... 」

イシハラ 「確かにそうだと思う ... まだまだこれから先があるんだよな、君にも奥さんにも
       ... それにもうすぐ生まれる君の子供にもな」

マスター 「お客様、ご存知ですか ...?」

ハジメ  「エッ ...?」

マスター 「生まれたばかりの赤ちゃんが、ぎゅっと手を握ってるその訳を」

ハジメ  「... それは ... 」

イシハラ 「それって ... どういう意味かな ... マスター」

マスター 「生まれたばかりのその小さな手には、夢を沢山持ってるんだと ... 私はそう聞かされ
       ました ... 」

イシハラ 「夢を持って生まれてくるか ... 」

マスター 「出来ればその手の中の夢を、大切に見守ってあげてください ... 」

ハジメ  「マスター ... 」

イシハラ 「 ... どうかな ...? このカクテルで、少しは温まったかな ... 」

ハジメ  「 ... はい ... そうですね ... 心まで少し ... 」

イシハラ 「何だ、まだ少しか ... それじゃお代わりもらおうかな、マスター」

マスター 「はい。承知しました ... 」


        SE:グラスに角砂糖1個と温められたダーク・ラム(45ml)が
          入れられ、熱湯がグラスの残部に注がれる -----
         :そこへバター(角砂糖サイズ)が浮かべられ、マドラーが
          添えられる -----


ハジメ  「あのう ... 」

イシハラ 「ウン ... ?」

ハジメ  「自分のことばかりに気を取られてて、うっかりしてたんですが ...
       まだ名前を言ってませんでした、すみません ... 」

イシハラ 「そう云われれば、そうだったな ... 」

ハジメ  「ボクはヒモトと云います ... 」

イシハラ 「これはどうも ... で、私は ... そうだな ... 」

ハジメ  「 ...?」

イシハラ 「ペール、ノエルかな ... 」

ハジメ  「ペール、ノエル ...?」





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