2011年07月29日

千夜一夜 / ハートカラー -scene:4- 





         :サンドリオンの店内 -----


バーテン 「それにしても ... そんな謂れがあるカクテルのレシピを、よくご存知でしたね ... 」

男    「その答えにも、謂れがあるということにしておこう ... 」

涼 子  「その答えは、ひとつしかないと思うんですが ... 」

男    「というと?」

涼 子  「それは、ご自身が飲まれたということではないんでしょうか ... 」

男    「なるほど ... それが一番手っ取り早くて、理に適った答えだろうな ... 」

涼 子  「違うんでしょうか .... ? それ以外には ... 」

男    「この際、そんなことはどうでもいいことなんだ、お嬢さん」

涼 子  「エッ ... ?」

男    「肝心なのは、昔、港の場末の酒場で、たった一度しか作られなかったカクテルが
      存在してたってことなんだよ」

バーテン 「存在の証し ... 」

男    「そういうことだな ... 」

涼 子  「でもどうしてそのカクテルを、わざわざここでオーダーされたんでしょうか?」

男    「私はこのカクテルが好きだ ... 好きなんだ ...
      だからこのカクテルを飲める場所をずっと探してた ...
      伊達や酔狂の半端な酒場では、決して口にしたくなかったからな ... 」

涼 子  「それでこのお店を選ばれた ... 」

男    「もっとも ... マスターに会って話しをすれば、きっと理解してくれたと思うんだが ...
      生憎と私も巡り合わせが悪いようで、今夜も会えなかったが ... 」

バーテン 「恐れ入ります ... 」

男    「ともかくバーテンさん ... さっきの話、マスターに伝えておいてくれるかな」

バーテン 「かしこまりました ... 確かに」

涼 子  「エ? もうお帰りなんですか?」

男    「例のごとく ... そろそろ眠気が勝ってきたんでね ... 年寄りは退散するよ」

涼 子  「そうですか ... 残念です。その女性バーテンダーの話を、もっとお伺いしたかった
      です ... 」

男    「多分、そうだろうな ... お嬢さんにすれば興味津々の話だろうからな」

涼 子  「でもまたお会い出来ますよね、ここで」

男    「ああ、そうだな ... 約束は出来ないが、またいつか会いたいね、お嬢さん」

涼 子  「私、楽しみにしてますから ... 」

男    「ああ、私も楽しみにしてるよ ... それじゃ、その時まで」

バーテン 「ありがとうございました、藤堂様 ... お気をつけて ... 」

涼 子  「おやすみなさい ... 」

男    「おやすみ .... 」


        SE:ドアの閉まる音 -----


バーテン(Na) その店の名は「バード・バー」-----

      どこにあったのか詳しい場所は聞いておりませんが ... 
      時折、店の小窓から潮風がやって来て、カクテル・グラスと遊んでいたそうですから
      きっと、港のある街の一角にでもあった酒場なんでしょうね .....

      店の雰囲気はこの店とよく似てたらしいですが .....
      マスター曰く、この店が似ていると云うべきなんだそうです .....

      その店に訪れる人は、それぞれの思いをグラスにブレンドしながら漂うように流れる
      ジャズと、静かに通り過ぎて行く時間の中で、束の間の夢と戯れてたそうです .....

      「バード・バー」..... それはまさにその名のとおり .....
      飛ぶ鳥たちの翼を休める、心の止まり木のような場所であったようです -----

      そしてこの酒場はその昔 .....
      私共のマスターが、シェイカーを振っていた店だと聞かされました -----






posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
blogramで人気ブログを分析 にほんブログ村 小説ブログ 脚本・シナリオへ
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。