2011年07月28日

千夜一夜 / ハートカラー -scene:3- 





         :サンドリオンの店内 -----


涼 子  「初めて聞くカクテルの名前 ... 」

バーテン 「実は、私も知らないカクテルでしたので、レシピを教わりながら作らせて頂いた次第でして」

涼 子  「このカクテルって、以前からあったものなんでしょうか ...?」

男    「そうだね... ずっと前からあったと言えばあったし、なかったと言えばなかった ...
      そんなカクテルだな ... 」

涼 子  「それって ... どういう意味なんでしょうか ...?」

男    「今言ったままだよ、お嬢さん」

涼 子  「今言ったままって ... 」

バーテン 「つまりその ... 昔は存在していたが、今はもう忘れられたものと ... 
      そういう意味合いなんでしょうか ...?」

男    「ン ... 当たらずとも、遠からずってところかな ... 」

涼 子  「それじゃ ... それはこういうことじゃないでしょうか ...
      昔 ... どこかのお店のオリジナルとして、そこだけで飲まれていたカクテルで
      そのお店がなくなってから、そのカクテルも消えてしまったとか ... 」

男    「(ゆっくりと一口飲み)そうだな ... とにかくうまい酒を飲ませる酒場だった ...
      店の雰囲気は、そう ... ちょうどこことよく似てたような気がするな ...
      ただその店は港の近くにあって、よくその店の小窓から潮風が遊びにやって来ては
      カクテルグラスと戯れてたよ ... 」

バーテン 「店の小窓から、潮風 ... 」

男    「漂うように流れるジャズは、静かにグラスに溶け込んで、そこでは時間までもが
      ゆっくりと、静かに流れてた ... 」

涼 子  「それって ... まるで同じですよね、この店と ... 」

男    「だからその店にやって来る連中は、みんなその雰囲気の中で、それぞれの思いを
      グラスの中にブレンドして、束の間の時間を過ごしてたんだ ... 」

バーテン 「そんな酒場で飲まれてたんですね、このカクテルが ... 」

男    「店には一人の女性バーテンダーがいて ... その彼女が考案したのがこのカクテル
      だった ... 」

涼 子  「そうだったんですか ... 」

男    「彼女は口数の少ない熱心なバーテンダーで、日毎夜毎マスターから客の扱いや
      いろんな酒の知識を吸収してたな ...
      特にカクテルのレシピやテクニックに関しては、相当なレベルのものだった」

バーテン 「まるで ... うちのマスターのような女性だったんですね ... 」

男    「(少し笑って)そうかもしれんな ... 」

涼 子  「ハートカラーか ... 」

男    「このカクテルは ... そんな彼女が、後にも先にもたった一度しか作らなかった
      ものなんだ ... 」

涼 子  「たった一度っきり ... ?! 」

男    「そうだ ... たった一度だけ作ったカクテルなんだ ... それも、涙を添えてな ... 」

涼 子  「涙を ... 」

バーテン 「添えて ... 」






posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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