2011年06月29日

monsieur 〜 紳 士 〜 -scene:4-


夜の喧騒にまみれながら...
人はひと時の静寂な場所に安逸を求める...

その止め処もないそれぞれの想いを胸に...
人はつかの間の静穏を求める...
たとえそれが仄かな慰めであったとしても-----


今宵、帳に覆われたこの場末の酒場の片隅で...
一つの出来事が語られた-----



   女  ----その時、一瞬何がどうなったのか、自分でもよくわからなかった...
      気がついたらあの人が、階段の下でうつ伏せに倒れたまま、動かなかった...
      私はそれを見た途端、急に怖くなってその場から逃げ出してました...
      必死になって走ってた... 一度も振り返ることもなく...
      その内、息も絶え絶えに埠頭の辺りまで来て... ようやく私は我に返った...

      「私は人を殺めてしまった... 」

      昔の恋人であるあの人から言い寄られ、抱きついてきたその拍子に私は
      思わず突き飛ばしてしまった...
      その弾みで彼は足元を取られ、階段から転げ落ちてしまった-----

      これでもう、すべてが終わり...

      私は途方に暮れ、いつの間にかここへやって来た...
      自分を戒めるため... そして慰めるため... ここバール・サンドリオンへ-----


バーテン 「そうだったんですか... 」

マスター 「サヨコさん... 」

   女 「(泣きながら)私、そんなつもりじゃなかったのに... ホントにそんなつもり
      じゃ... 」

マスター 「信じてます... 只々偶然がそんな結果を招いただけなんだと... 」

   女 「マスター... 私... 」

バーテン 「こういう場合は、正当防衛では... 」

マスター 「そうですね... 状況から鑑みてもそうなるのでは... 
      その辺りはいかかでしょうか、お客様... いえ、刑事さん... 」

   女 「エ... ?!」

バーテン 「刑事って... 」

   男 「今の段階では何とも云えませんが... 少なくとも故意によるものではないと?
      お嬢さん」

   女 「はい、もちろんです... 」

マスター 「それではお客様...  よろしくお願いいたします」

   男 「心得ました... 」


その時、男の携帯電話が鳴った-----


   男 「ちょっと失礼... はい、佐倉ですが..... 」

バーテン 「まさかこの方が刑事さんだったとは... マスターはどうして知ってたんです
      か?」

マスター 「それは... 」

   男 「-----そうか、わかった。それじゃ、そっちへ回ってくれ... こっちは大丈夫
      だから。それじゃ... 」

バーテン 「何かあったんでしょうか?」

   男 「あなたが突き飛ばしたという被害者の方... 命に別状はなかったようです... 」

   女 「え?... ホントですか?」

マスター 「サヨコさん... 」

   男 「嘘をつく謂れが、この場にはありません」

バーテン 「よかったですね、サヨコさん... 」

   女 「(泣いている)..... 」

   男 「しかしあなたには... 彼に怪我を負わせた上、その場から逃げ去ったという
      事実がある... たとえそれが恐怖心からだとしても... 」

   女 「...はい... 」

バーテン 「刑事さん... 」

マスター 「それではやはり... このままここで... 」

   男 「しかし、生憎と私は今... 別の被疑者を探してる最中でしてね... 」

バーテン 「え?」

   男 「ここからまだ動けないんですよ... 張り込み中ってやつですか... 」

マスター 「張り込み中...? 」

   男 「そういうことですね... ですから大変申し訳ないが、最寄の交番にでも
      ご足労願えませんか... お一人で... 」

   女 「エッ...?」

マスター 「お客様... 」

   男 「それに私... ここのレモン・スカッシュを、もう一杯頂きたいと思ってるん
      ですが... いかがものでしょうか? マスターさん」

マスター 「それはありがたいお話です... ねえ、サヨコさん... 」

   女 「... ホントにありがとうございます... 刑事さん... 」

   男 「... だいたい私、根がナマクラなもので、牙を剥く野獣以外には、まったく興味
      がないものでして... 」

バーテン 「なるほど... そいうい刑事さんもいるんですね... 」

   男 「そんなことよりもマスターさん」

マスター 「ハイ...?」

   男 「あなた、よくお判りになりましたね、あのクイズの答えが ...
      私、正直言って驚かされましたよ... 」

マスター 「いいえ... あれは単なる偶然でして... 」

   男 「いやいやご謙遜を... それよりいかがですか? もう一問」

マスター 「お客様... 」

   男 「ああ、申し遅れました... 私、佐倉裕次郎と申しまして... 」

マスター 「佐倉裕次郎様... 」

   男 「これでも一応警部補でして... 以後、どうぞお見知りおきを... 」

バーテン 「警部補...?! 」

   男 「では早速問題ですが... 」




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