2011年06月27日

monsieur 〜 紳 士 〜 -scene:2-


その男性の井出達は、紳士の香りを漂わせていた...
地味過ぎず派手過ぎず...
そうでありながら確かな存在感があった...

そしてその男性には...
優しい口調の奥に、鋭い威圧感があった-----



   男 「(店内を見回し)イヤーッ...  これは仲々、洒落たお店ですね... 」

マスター 「お褒め頂き、ありがとうございます... 」

   男 「いやね、近くに友人が住んでましてね、最近お洒落なバーがオープンしたって
      云ってたものですから... それで一度足を運んでみようと思ってたんですが...
      アハハ... なるほど... こりゃ雰囲気がいい... 」

マスター 「それはどうも... 」

   男 「マスターのセンスがうかがい知れますね... 」

マスター 「恐れ入ります...  時にご注文の方はいかがいたしましょう?... お客様」

   男 「お客様?... あ、そうでしたね。これは失礼... そうだな... 何にするかな...
      今日は少し汗もかいたことだし... サッパリしたものがいいなァ... 」

マスター 「サッパリしたものですか... それでは」

   男 「そうだ... やっぱりアレにしよう... 」

マスター 「アレとは... 何でしょう...?」

   男 「レモン・スカッシュをください」

マスター 「レモン・スカッシュ...?」


グラスに氷が入れられ、そこへスクイーズされたレモンが注がれ...
ソーダで割りながら軽くステアされる...

しばらくして男性の前に、レモン・スカッシュが置かれる-----


マスター 「お待たせいたしました、どうぞ... 」

   男 「これはどうも... いや私ね、こう見えてもこいつが結構好きなんですよね... 」

マスター 「左様でございますか... 」

   男 「(一口飲み)イヤーッ、参ったな... これはイケる... 大したもんだ」

マスター 「ありがとうございます...」

   男 「いやね、好きなもんですから、ついつい色んな所でこいつを注文するんですが
      これだけジューシーで口当たりのいいレモン・スカッシュにお目にかかれるの
      は稀ですね... きっと新鮮なレモンをそのまま使って、微妙な甘さを施されて
      いるんでしょう... 」

マスター 「確かに仰るとおりです... フレッシュジュースの類は、加える甘さの微妙な
      加減と素材の新鮮さがその味を決めてしまいますので... 」

   男 「たかがレモンスカッシュ... されどレモンスカッシュ... 私、今夜は少し
      感動してます... 類い稀なるレモンスカッシュに出会えたことに... 」

マスター 「わたくしも及ばずながら... レモンスカッシュにこれだけの含蓄をお持ちに
      なる方とお会い出来るのは、稀にして光栄です... 」

   男 「いやいや、仲々どうして... サイドメニューでこれだけのものを作られる
      このお店こそ、稀にして含蓄があるお店だとおもいますよ... 」

マスター 「そのサイドメニューとお判りになりながら、そのレモンスカッシュをご注文
      されたのには... 何か理由がおありなんでしょうか... 」

   男 「これはまた、するどい質問ですね... 」

マスター 「失礼ながら... このような深い時間に男性の方がお一人でお見えになり、
      ここで口にされるには、少々不似合いなご注文ではないかと... そう思い
      まして... 」

   男 「そうか... 確かにそうですよね。
      大の男がわざわざバーに来て、レモンスカッシュもあったもんじゃないです
      ね... これは軽率だったな... 」

マスター 「軽率...?」

   男 「いやいや、気にしないで下さい... それより私、決してまやかしや冷やかしの
      つもりでお伺いしたのではありませんから... ただ... 」

マスター 「ただ...?」

   男 「ただ、今夜はどうしてもここへ来なければなかったんです... だから私は
      今ここにこうしている... それだけのことなんですよ」

マスター 「お待ち合わせ、でしょうか... 」

   男 「そんなところですかね... 何せこれも、仕事なものですから... 」

マスター 「お仕事...?」




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