2012年12月24日

Mémoires / Père Noël '98 - scene:4 -








         :サンドリオンの店内 -----


老 人  「昔、いましたよ ... やっぱりそんな子がね ... 物心ついた頃に、周りの子
      みんなに、そんなのいるわけないって云われて、悲しい思いをした子供がね
      ... それで少しずつ、その小さな手のひらから夢をなくしていき、やがてみんな
      大人になっていくんですよ ...

      知ってましたか? 生まれたばかりの赤ん坊が、手のひらをぎゅっと握り締め
      ているその訳を ...

      そこには夢があるんですよ ... 汚れなき心に宿る夢が、その手のひらにある
      んですよ ... だからその夢が逃げないよう、ぎゅっと握り締めているんです
      ... 何も見えない生まれたばかりの赤ん坊は、その夢を信じて、一日一日を
      生きていくわけなんじゃな ...

      だから夢ってやつは、見るものじゃぁなくて信じるものじゃないかなってね。
      私はね ... そんな風に思うんですよ ...

      アハハハハ ... これはこれは、説教じみた話になってしましましたなぁ ...
      失敬失敬 ... なーに、年寄りの独り言だと思って聞き流してくださいな」

女    「夢は見るものじゃなくて ... 信じるもの、か ... 」

藤 堂  「いい話ですね ... それは」

老 人  「これはどうも ... 年寄りの戯言です ... 忘れてくだされ ... 」

藤 堂  「いやいや ... 逆に忘れてはいけないことを、思い出させてくださるような
      お話しでしたよ」

老 人  「たとえお世辞だとしても、そう云っていただけると嬉しいものですな ... 」

バーテン 「いいえ ... 決してそんなことはございませんでしたよ。ねえ、藤堂様 ... 」

藤 堂  「珍しく ... 意見が同じだな、バーテン君」

女    「いろいろと、ありがとね、おじいちゃん ... 私、元気が出てきたみたい」

老 人  「そうですかそうですか ... そりゃ良かった ... 」

女    「クリスマスには笑えなかったけど ... 明日からなら私、笑えそうな気がする
      わ ... 」

老 人  「そうそう ... 笑顔が一番じゃ、笑顔がな」

女    「 ... それじゃ私、帰りますね ... ホントにありがとうね ... おじいちゃん」

老 人  「いやいや ... どういたしまして」

女    「さよなら ... またいつか会いましょうね、おじいちゃん ... 」

老 人  「ああ、そうだね ... また会えたら、嬉しいね」

女    「どうもごちそうさまでした ... おやすみなさい ... 」

バーテン 「ありがとうございました ... 」


        SE:女が店から出て行く --- ドアの閉まる音 -----


老 人  「(ポツリと)今夜があのお嬢さんにとって ... 本当のクリスマスになるじゃ
      ろう ... 」

藤 堂  「クリスマスか ... 私にとっては今年も、最悪だったな ... 」

老 人  「いやいや、なかなかどうして ... 満更捨てたものではありませんよ、今年の
      クリスマスは、きっとね ... 」

藤 堂  「エ ...? それは一体 ... 」

老 人  「さて ... そろそろ引き上げるとするかな ... 」

バーテン 「もうお帰りですか?」

老 人  「ああ ... そろそろ迎えが来る頃なんでね」

バーテン 「お迎えですか ... 」

老 人  「アッハハハハハ ... 誤解しないでくださいよ、バーテンさん ...
      本当に私を迎えに来てくれるものがいるんですよ」

バーテン 「い、いえ ... 決してそういう意味では ... 」

老 人  「オッホホホホホ ... あったかい人なんじゃな、バーテンさんは ... 」

バーテン 「いえ、私はそんな ... 」

老 人  「来年もまた ... 出来れば寄せてもらいますよ、このお店にね」

バーテン 「ありがとうございます ... その時を、心よりお待ちしております ... 」

老 人  「それじゃ ... 」

藤 堂  「あのう ... 」

老 人  「ン ... 何か?」

藤 堂  「失礼ながら、以前 ... どこかでお会いしたことはないでしょうか ...?」

老 人  「ホッホホホホホ ... そう云われてみれば、ひょっとして ... 遠い昔に
      お目にかかったかもしれませんなァ ... 」

藤 堂  「遠い昔 ...?」

老 人  「それでは ... 私は、これで ... 」

バーテン 「ありがとうございました ... お気をつけて ... 」


        SE:老人、店を出て行く -----


藤 堂  「確かに ... どこかで会ったような気がするんだがな ... 」

バーテン 「実は私も ... そんな気がするんですよね ... 」

藤 堂  「 ... これも長旅の疲れかな ... 今夜は引き上げるとするか ... 」

バーテン 「エッ ...? もうお帰りですか ...?」

藤 堂  「何せ ... 私のクリスマスは、もう終わったからな ... 」


        SE:ドアの開く音 -----


マスター 「そんなことはございませんよ ... 」

バーテン 「! マスター ...?」

マスター 「お帰りなさいませ ... 藤堂様 ... そして、ようこそ ...
      今宵、バールサンドリオンへ ... 」

藤 堂  「マスター ... 」





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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