2012年11月10日

épisode / 週末のヴィンテージ -scene:1-








男(Na)  その店は僕にとって、ある意味での憩いの場であった。
      仕事柄、メニューに合ったワインを人にセレクトする立場である私が
      客としてくつろぎ、好きなワインやカクテルを好きなだけ、自分の為に
      飲める場所 ... ここはそんな店だった ---


        SE:ドアの開く音 ---


マスター 「いらっしゃいませ ... ようこそ」


男(Na)  店の中はゆったりとしたカウンターだけの造りで、壁際には船の錨と
      12時を指したままのアンティークな時計が飾られ、狭すぎず広すぎずと
      いった具合のスペースで ...
      中でも僕がお気に入りなのは、窓越しから街が見えるというこの店の
      ロケーションと、清楚で凛としたこの店のマスターの存在だった ---


マスター 「今夜はいかがいたしましょうか ...?」

男    「(コートを脱ぎながら)いつものやつで、お願いします」

マスター 「かしこまりました ... あ、お客様 ... 」


男(Na)  山手の高台に位置するだけあって、ここから見える夜の風景は申し分なく
      グラスを片手に、自分なりにくつろぐにはまさに持って来いの場所でも
      あった ...

      ... そんな僕のお気に入りの店に、週末何度か顔を合わせる女性がいた ...
      いつも窓際のカウンターに席を取り、多分お気に入りであろう白ワインと
      軽い一品料理をオーダーする彼女 ---


女    「すみません ... 今夜のお薦めのこれを ... それといつもの白を ... 」

マスター 「はい、かしこまりました ... 」


男(Na)  誰と連れ立ってくるわけでもなく、見かけるたび一人でいるその彼女の
      存在に、最初は興味本位だったはずの意識が、いつのまにか気掛かりな
      存在となり、今でははっきりと、愛おしさを自覚するまでに、僕の気持ちは
      高まっていた ...
      そして今夜で5回目 ...
      名も知らぬ彼女から一つ席を置いた場所に僕は陣取り、さりげなく口を
      開けた ---

     「ちょうどあの海の向こうにある国で生まれたんですよね ... そのワイン」

女    「エッ? ... (彼顔を見て少し笑う)ウフフフフ ... 」

男    「? どうかしました ...?」

女    「ごめんなさい ... でも ... 」

男    「でも ...? でもどうしたんです?」

女    「鼻の上に ... ケチャップが ... 」

男    「エッ...? ア ... さっきのハンバーガーか ... またやった ... 」





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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