2012年11月01日

spin-off /「神戸物語」 最終章








ジュンジ(Na) あれから三日間 ... 俺はアヤカのことだけを考えてた ...
      彼女が何故、神戸へ帰ってきたのかを ... あんなことを言うためだけに?
      いいや違う ... それなら手紙でも済むことだ ... じゃ、どうして?
      ... 今の俺には、その答えは出せなかった ... だけどただ一つだけ ...
      はっきりとしていることがあった ... それは -----



        SE:ドアの開く音 -----


ジュンジ 「こんばんは、マスター ... 」

マスター 「いらっしゃいませ、ようこそ ... 」

ジュンジ 「 ... まだか ... あいつ」

マスター 「今夜は、お待ち合わせですか ...?」

ジュンジ 「ウン ... アヤカとね ... 」

マスター 「 ... そうですか ...」

ジュンジ 「今朝連絡があって、今夜ここで待ってるからってね ... 
      あいつ、いつも急なんだから参っちゃうよ ... 
      人の都合なんて全然考えてないんだから ... 」

マスター 「それがアヤカさんらしい ... という気もしますが ... 」

ジュンジ 「(少し笑って)マスターも言うね、結構 」

マスター 「恐れ入ります ... 今夜は何になさいますか ...?」

ジュンジ 「 ... 水割りの気分かな ... 」

マスター 「かしこまりました ... 」


        SE:マスター、水割りを用意する -----

         :ジュンジ、タバコを取り出し、ジッポーで火を点ける -----


ジュンジ 「それはそうとマスター ... あれからあいつ、ここへ来た?」

マスター 「そうですね ... 一度だけお見えになりましたが ... 」

ジュンジ 「一人で?」

マスター 「いいえ ... 久しぶりにミユキさんとおいでに ... 」

ジュンジ 「ああ、そう ... 彼女と来たのか ...
      そう言えば彼女に、マスターのことは言ってなかったんだ ... 」

マスター 「そのようですね ... 」

ジュンジ 「とは言っても、ここしばらく会ってなかったし、無理ないか ...
      一時はよく顔合わせてたんだけどな ... あいつのことで」

マスター 「そうだったんですか ... 」

ジュンジ 「彼女には悪いことした ... 俺しょっちゅう引っ張り出しては彼女に
      愚痴ってたから ... だからおしまいには、会ってくれなくなったな ... 」

マスター 「(グラスを置き)どうぞ ... 」

ジュンジ 「どうも」


        SE:その時、店のドアが開く -----


アヤカ  「こんばんは、マスター ... 」

マスター 「いらっしゃいませ ... 」

アヤカ  「ゴメン ... 待った?」

ジュンジ 「見てのとおり ... まだ一口も飲んでない状態」

アヤカ  「そう ... 良かった。マスター、私にも同じものください」

マスター 「かしこまりました ... 」


        SE:マスター、水割りを用意する -----


ジュンジ 「で、今日はどうしたんだよ ... いきなり呼び出したりして」

アヤカ  「ウン ... 」

ジュンジ 「お前はいつだって急だよな ... 小樽へ帰る時もこっちへ来た時も、それに
      この間の晩も」


アヤカ  「 ... この間はゴメン ... 」

ジュンジ 「 ... 今日はやけに、素直だな」

アヤカ  「だって ... そう思うから」

ジュンジ 「フーン ... それで?」

アヤカ  「 ... それで ... 」

マスター 「お待たせいたしました ...(グラスを置き)どうぞ ... 」

アヤカ  「あ、どうも ... (一口飲み)... それで私、自分で色々と考えてみて ...
      気がついたの ... 何が自分にとって一番大切なのかを」

ジュンジ 「それでお前にとっては、何が一番大切なんだ ...?」

アヤカ  「 ... その答えは ... 自分だった」

ジュンジ 「自分 ...?!」

アヤカ  「そう、自分 ... 自分自身が一番大切なんだって、そう思ったの」

ジュンジ 「なるほどね ... 」

アヤカ  「あの地震の時もそうだった ... やっぱり自分が大事だから、必死になって
      助かろうとした ... 生きようとしてた。だから大声も出したし、形振りかま
      わなかった ... だって自分が一番、大事だもんね ... 」

ジュンジ 「誰だってそうだろ ... 自分が一番さ ... 」

アヤカ  「だけどね ... 」

ジュンジ 「ウン?」

アヤカ  「だけど ...
      その一番大切な自分を大事に想ってくれる人は、もっと大切なものなんだって
      そう気付いたの ... それを私勘違いして、命の恩人に横恋慕したりして... 」

ジュンジ 「アヤカ ... 」

アヤカ  「ゴメンね ... 私、勝手なことばかり言ってて ... 」

ジュンジ 「何だよ、改まって ... 」

アヤカ  「私、体裁ばかり考えてて、ジュンジのことこれっぽっちも考えてなかった ...
      やれあなたの両親に反対されてるだの中傷されただのとか言って、肝心の
      自分が大切にしなきゃいけないものを見落として、一人で勝手に悩んでた ... 」

ジュンジ 「それは俺だって、にたようなもんだ ... 一人で粋がってた ... 」

アヤカ  「 ... ジュンジ ... 」

ジュンジ 「ウン ...?」

アヤカ  「私に、最後のわがまま言わせてほしいの ... 」

ジュンジ 「どういう意味だよ、それ」

アヤカ  「私 ... 小樽へ帰ろうと思うの」

ジュンジ 「アヤカ、お前 ... 」

マスター 「アヤカさん ... 」

アヤカ  「ウウン ... 私一人じゃなくて、あなたも一緒に」

ジュンジ 「エッ... ?!」

アヤカ  「それで私の両親に言ってほしいの ... 『アヤカさんを僕にください』って」

ジュンジ 「アヤカ ... 」

アヤカ  「これが私の、最後のわがまま ... 」



        SE:教会の鐘の音 -----



マスター(Na) あの出来事から2年足らず ... ここ神戸では、未だにその傷跡が街にも
      そして人の心にも深く残っております ---

      けれども人は皆その中で、片寄せ合い ... 慈しみ合いながら生きています ...

      確かにあの出来事がこの街や人にもたらしたものは、決して良かったものとは
      言えません ... が、その結果、すばらしいものが芽生えたことも事実なのです。

      それはちょうど ... 彼や彼女たちの、この物語のように -----





タグ:わがまま
posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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