2012年10月25日

spin-off /「神戸物語」 第一章 -後 編-








        SE:店内に静かに流れるジャズ -----


マスター 「お久しぶりです ... お元気でしたか? アヤカさん」

アヤカ  「マスターこそ無事だったの ... 」

マスター 「おかげさまで、何とか ... でも、あのお店は ... 」

アヤカ  「そうなんだ ... けどよかった ... マスターとこうしてまた逢えたんだもの」

ジュンジ 「俺も最初は驚いたよ ... 何気なくフラッと入った店のカウンター越しに
      マスターがいたんだからな ... 」

アヤカ  「いつからここで?」

マスター 「半年ほど前からですか ... 」

ジュンジ 「俺が見つけてからは3ヶ月かな」

アヤカ  「聞いてないって」

ジュンジ 「あのな ... 」

アヤカ  「それじゃ、これからずっとここで?」

マスター 「いいえ ... これから先のことはまだ ... 」

アヤカ  「でも見た感じ、ここもいい雰囲気のお店だし、ずっとここでやればいいのに」

ジュンジ 「この店はマスターの知り合いのお店で、オーナーが今訳ありで留守なんだよ。
      その間、マスターが任されてるって訳なんだ」

アヤカ  「そうなんだ ... 」

マスター 「私自身も今は被災者です ... が、出来れば同じ状況の中で必死になって毎日を
      過ごされる中で、一人でも多くの方に美味しいお酒を飲んで頂ければと思い
      ここでこうしてお手伝いをさせて頂いております」

アヤカ  「マスター ... 」

ジュンジ 「どうだ? 俺について来て良かったろ?」

アヤカ  「(少し泣き声で)そうじゃなくて、マスターに逢えて良かったよ ... 」

ジュンジ 「お前なぁ ... 」

マスター 「いかがでしょうか ... お二人とも無事再会なされたのですから、ここで祝杯を
      挙げられては ... 」

ジュンジ 「さすがマスター。それもそうだよな」

アヤカ  「ウン、いいね。マスターともこうして再会出来た訳だし」

ジュンジ 「何にする?」

アヤカ  「そうね ... 久しぶりにマスターのカクテルが飲みたいなぁ ... 」

マスター 「それでは、オレンジ・ブロッサムあたりはいかがでしょうか?」

アヤカ  「オレンジ・ブロッサム?」

マスター 「その昔、オレンジの花が幸せの花として新婦のドレスに飾ることが多かった頃
      海外の結婚式の披露宴でよく出されたという、幸せを意味するカクテルです。

ジュンジ 「なるほどね ... じゃ俺はそれでいいけど、お前は?」

アヤカ  「ン? ウン ... 私もそれでいい」

ジュンジ 「じゃ、マスター、それ二つね」

マスター 「かしこまりました ... 」

アヤカ  「(ポツリと)新婦のドレスか ... 」


        SE:キューブ・アイスを3、4個入れたタンブラーグラスに
          ジン(45ml)を注ぎ、オレンジジュースをグラス8分目
          ぐらいまで入れ、ステア ---
         :スライス・オレンジに切れ目を入れ、グラスの縁に飾る ---


ジュンジ 「さて、こうしてマスターとも再会したわけだし ...そろそろ本題に入るとする
      かな ... 」

アヤカ  「本題って ...?」

ジュンジ 「どうして今の今まで、連絡よこさなかったんだ?」

アヤカ  「 ... 」

ジュンジ 「そりゃ大変だったことはわかる ... でもそれはお互い様だ。みんな大変だった
      からな ... でもだからと言って、いきなり婚約解消して『はい、サヨナラ』は
      ないだろ」

マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ」


         :グラスが置かれる -----


ジュンジ 「どうも ... 」

アヤカ  「 ... ありがとう(軽く一口飲む)」

ジュンジ 「どうなんだ? その辺 ... 」

アヤカ  「 ... ごめん」

ジュンジ 「あの時もそう言っただけで、お前は小樽へ行ったっけ。何も理由は聞かせて
      くれなかった ... 」

アヤカ  「 ... ごめん」

ジュンジ 「もういいよ、そのセリフは ...(少し怒って)一体どうしてなんだ?!
      何で結婚止めたくなったんだよ! その理由を聞かせてくれよ」

アヤカ  「(ゆっくりとカクテルを一口) ... 」

ジュンジ 「黙ってても、返事にならないぜ ... 」

アヤカ  「 ... 好きになったの ... 」

ジュンジ 「エッ ...?」

アヤカ  「ある人を好きになったの ... だから ... 」


         :ジュンジ、グラスを落としてしまう -----

        SE:グラスの割れる音 -----



ジュンジ(Na) 武田純二、25歳 ... 神戸市東灘区生まれ、家事手伝い ...
      俺は彼女のことを今でも -----


アヤカ(Na)  杉本綾香、24歳 ... 北海道小樽生まれ、現在無職 ...
      私は今、彼のことを -----





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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