2012年10月21日

épisode / V.S.O.P 最終夜 「慕 情」 -scene:5-








         :サンドリオンの店内 ---

         :ボトルからゆっくりとブランデー(1/3)が注がれ ---
         :グラスが置かれる -----


マスター 「どうぞ ... 」

マサヤ  「またどうして、これをボクに ...?」

マスター 「お客様にとって ... いえ、レイコさんにとっても、このV.S.O.Pという
      ブランデーの階級が、ピッタリではないかと思いまして ... 」

マサヤ  「ボクとレイコにこのV.S.O.Pが? なんだか意味がよくわからないんだけど ...
      一体どういうことなの? マスター」

マスター 「ブランデーの語源は、そもそもヨーロッパ北部の言語だと言われ ...
      その中の一つに『ブランド』という言葉がございます ... 」

マサヤ  「ブランド?」

マスター 「日本語では『燃える』という意味で、昔から強いお酒には、この言葉を語源
      とするものが多く、ブランデーもその一つでして ...
      そのブランデーの階級を表すものが『V.S.O.P』というアルファベット ...
      V.Oに始まり、V.S.O、V.S.O.P、それにX.Oと ... 
      それぞれの貯蔵年数から階級分けされたアルファベットなんです ... 」

マサヤ  「それでボクとレイコの二人の階級がV.S.O.Pだと ...?
      何が基準でそうなるのかな ... 」

マスター 「お二人それぞれの、貯蔵年数です ... 」

マサヤ  「貯蔵年数って ... 」

マスター 「お二人が出逢われてから、今回再会されるまでの8年 ...
      この8年という歳月がV.S.O.Pの貯蔵年数なんです ...
      お二人とも8年という長い時間の流れの中で、心の奥深くにそれぞれの想いを
      ずっと抱いていらっしゃった ...
      例えそれが微かなものであれ、おぼろげなものであったとしても、8年という
      時間を経過し、やがて目覚め完成されるものであるのなら ...
      それはV.S.O.Pと呼べる、想いではないでしょうか ... 」

マサヤ  「V.S.O.Pの愛か ... 少し気障な響きだけど、何となく説得力があるな ...
      でもマスター、レイコの場合は ... 」

マスター 「明日パリへ発つと、おっしゃられてました ... 」

マサヤ  「パリって ... あいつ結婚するために帰ってきたって言ってったくせに ... 」

マスター 「ですので ... 彼女もまたV.S.O.Pだと ... 」

マサヤ  「レイコが ...?!」

マスター 「先程ご自分で、こう言っておられました ...
      私にとっての彼の存在は、8年経った今も同じだったと ... 」

マサヤ  「 ... 先程って ... マスター、彼女、今夜ここへ来てたの ... ?」

マスター 「ちょうど入れ違いに、出て行かれました ... 」

マサヤ  「レイコ ... 」


         :マサヤ、ゆっくりとブランデーを一口 -----


マスター 「V.S.O.P ... つまりそのブランデーは、燃えるお酒であってほしいかと ... 」

マサヤ  「燃える酒 ... 」


         :短い沈黙 -----


マサヤ  「マスター ... 彼女は明日、何時頃の飛行機に乗ると ...?」

マスター 「そこまでは伺っておりませんが ... ただ ... 」

マサヤ  「ただ?」

マスター 「ここを早く出られたのは、今夜最後に行っておきたい場所があるからと、そう
      言っておられましたが ... 」

マサヤ  「最後に行っておきたい場所 ... 」





タグ:階級 貯蔵 想い
posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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