2012年10月15日

épisode / V.S.O.P 第四夜 「哀 愁」 -scene:final-








         :サンドリオンの店内 -----

         :レイコ、カクテルをゆっくりと一口 -----


マスター 「この間 ... 5年ぶりにここへお見えになった夜に、お話しされていたことを
      覚えていらっしゃいますか ...?」

レイコ  「あの夜話したことって ... 」

マスター 「アメリカ、ヨーロッパを転々とし、いつも発見であり感動だった毎日を過ご
      した中で、ただ何かが足りなかったと ... そうおっしゃってたことを ... 」

レイコ  「確かにそういってたわね、私 ... 」

マスター 「手を伸ばせばすぐそこにあるものなのか ... それともここには無く、遥か彼方
      にあるのもなのか ... 
      ここしばらくこちらにいらっしゃっていかがだったでしょう ...?
      その輪郭ぐらいはおぼろげに見つかりましたでしょうか ...?」

レイコ  「足りない何か ... か ... 」

マスター 「それを見つけられない限りは ...
      何をされても、どこへ行かれても ... その琥珀色した哀愁を拭うことが出来
      ないのではないかと ... 」

レイコ  「哀愁を拭いきれない ... 」

マスター 「 ... この間、結婚されると言っておられたので ...
      もしや、その足りない何かを見つけられたのかと ... そう思いまして ... 」

レイコ  「マスター ... 実はあれは ... 」

マスター 「よろしいんじゃないでしょうか ...
      この際、時期は別としても ... いずれは想い想われる方と、結婚なさるのです
      から ... 」

レイコ  「マスター ... 」

マスター 「早く見つけられればよろしいですね ... その足りない何かが ... 」

レイコ  「 (ポツリと) ... そうよね ... 」


         :レイコ、カクテルを一口 ---

         :短い沈黙 -----


レイコ  「マスター ... 私また、旅に出ようかと ... 」

マスター 「旅に ...?」

レイコ  「マスターがさっき言ってたように ... 今度はその足りない何かを見つける
      旅になりそうだけど ... 」

マスター 「レイコさん ... 」

レイコ  「私 ... あの夜ここであの人と再会するまで、ずっと気付かなかった ...
      自分がこんなに過去にこだわってたなんて ...
      5年間という海外での生活で、私は私自身の中で勝手に身も心も変わったと
      思ってた ...
      ものの見方や考え方、そして ... 自分の色合いまでも ...
      でも、ホントはそうじゃなかった ...
      私は私のまま ... あの頃のままだったのよね ... 」

マスター 「だから、旅に出ようと思われたのでしょうか ... 」

レイコ  「それもある ... 確かにあるけど ... それだけじゃなくて ... 」

マスター 「それだけじゃない ... ?」

レイコ  「だってこのままじゃ ... 少し辛いから ... 」

マスター 「辛い 、ですか ... 」

レイコ  「 ... あの人が結婚するんだもの ... 」

マスター 「レイコさん ... 」

レイコ  「すべて身からでたサビ ... 私の誤算だった ... 」


         :レイコ、カクテルをゆっくりと一口 ---
         :微かに聞こえるグラスの氷の音 -----


レイコ  「だから私 ... 旅に出たいのよ、マスター ... 」

マスター 「 ... 逢わずに行かれるのですか? このまま彼とは」

レイコ  「そのつもり ... もう逢う意味もないし ... 」

マスター 「せめて、ご連絡だけでもされてみては ... 」

レイコ  「そうね ... それは考えてみるわ ... せっかく彼の名刺が手元にあるんだから
       ... それに ... 」

マスター 「それに ...?」

レイコ  「彼とここで再会したのも ... 偶然だけじゃなかった気もするし ... 」

マスター 「 ... いつ頃、こちらを発たれるおつもりですか ...?」

レイコ  「遅くとも ... 来週ぐらいには出発しようかと ... 」

マスター 「そんなにお急ぎにならなくてもよろしいのでは ... 」

レイコ  「ウン ... だけど、それがいいかと ...
      マスターとこのサンドリオンには、名残惜しいけど ... 」

マスター 「レイコさん ... 」

レイコ  「でもマスター ... 出発前の最後の夜には、顔を出すつもりだから ... 」

マスター 「お約束ですよ ... 必ずお見えになってください ... 」

レイコ  「ええ ... 約束よ ... 必ず来るわ ... 」

マスター 「お待ちしておりますので ... 」


レイコ(Na) この夜 ... 私は旅立ちを決心した ---
      足りない何かを見つけるために ... そして過去を拭うために ---
      私が私に問いただしてで出てきた ... 一つの結論 ---

      もう振り返ることもなく ... 過去にこだわることもない ...
      そのために私は旅立つ ... もう一度 ---

      でも ...

      この旅立ちは何故か ... 心が泣いている ...
      琥珀色の涙を流しながら -----



ナレーション  こうして今 ---
        琥珀色の哀愁を漂わせた一つのハートが
        涙を流した ...
        心を満たしていた過去との別れを告げるために -----





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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