2012年10月12日

épisode / V.S.O.P 第四夜 「哀 愁」 -scene:2-








         :回想 -----


        SE:波の音 -----


マサヤ  「どうしても行く気なのか ... 」

レイコ  「どうしても、行きたいの ...
      私、自分の可能性に賭けてみたいのよ ... 」

マサヤ  「オレと別れてまで、日本を離れたいのか ...?! 」

レイコ  「そうじゃない ... そうじゃなくて ... 」

マサヤ  「じゃ、どうなんだ?
      何がどうなんだよ、レイコ ... 」

レイコ  「憧れだったの ... 夢だったのよ ... 私にとって海外でのピアノの
      鍵盤を叩くことが ... 」

マサヤ  「憧れ ...? 夢 ...?」

レイコ  「他に何の取り柄もない、人に自慢できるものなんて何もない私が ...
      たった一つだけ自分に自身を持てるものが ... それがピアノだった ...
      自分を素直に表現出来る唯一の手段 ... それがピアノ ...
      そんなピアノに対する自分の思いを、どこまで表現出来るのか ...
      私は今、試してみたいの ... 」

マサヤ  「じゃ ... オレのこの気持ちは、どう表現すればわかってもらえるんだろうか
      ...?」

レイコ  「 ... 」

マサヤ  「明けても暮れても鍵盤叩いて、楽譜とにらめっこしてた女に振り回された男の
      気持ちは ... 一体どう表現すれわかってもらえるんだ ...?」

レイコ  「 ... それは ... 」

マサヤ  「ここで一晩中、この海が怒るまでその女の名前を呼べばいいのかな ...
      それとも ...
      あの月が愛想尽かすまで好きだと言えばいいのか ... お前のことを」

レイコ  「マサヤ ... 」

マサヤ  「何なら手っ取り早いところで、時間を止めてしまおうか ...?
      今この瞬間、この時から ... 」

レイコ  「やめて ... お願いだから ... 辛いわ ... 」

マサヤ  「それはオレの方だよ ... 」


         :短い沈黙 -----

        SE:微かな波の音だけが聞こえる -----


マサヤ  「なぁ ... 今までのオレは、お前にとって一体何だったんだろうな ...
      ただの暇つぶし相手だったのか、それとも ... 」

レイコ  「 ... それとも何なの ...?」

マサヤ  「それとも ... 手頃な男だったのかな ... オレは」

レイコ  「そんな言い方、しないでほしい ...
      私は私なりに真面目に付き合ってたつもりなんだから ... あなたとは」

マサヤ  「じゃ、どうしてこんな風になるんだろうな ... こんな風に ... 」

レイコ  「 ... お互いがお互いの色に染まりきれなかったのよ ...
       合わなかったんだわ ... 色合いがきっと ... 」

マサヤ  「色合いが ... 合わなかった ...?」

レイコ  「そう ... お互いの色合いが反発し合って、合わなかった ...
      うまく染まり合えなかったのよ ... 私たちは」

マサヤ  「それは違うな ... 」

レイコ  「エッ ...?」

マサヤ  「私たちじゃなく ... お前が染まらなかったんだよ、お前がね。
      少なくても、オレはお前に染まりかけてたんだから ... 」

レイコ  「そんな ... 」

マサヤ  「オレは ... お前のためなら ... カメラ止めたっていいと思ってた ... 」

レイコ  「 ... マサヤ ... 」


        SE:マサヤ、おもむろにタバコをくわえる ---
         :デュポンで火をつけ、ゆっくりと一口 ---


マサヤ  「 ... 絶対に行くなよ ... レイコ」

レイコ  「 ... ごめんなさい ... それは出来ない相談なの ... 」





タグ: ピアノ
posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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