2012年10月03日

épisode / V.S.O.P 第二夜 「追 憶」 -scene:final-








        :サンドリオンの店内 -----



レイコ  「 ... 口惜しいけど ... マスターの言う通りかもしれないわ ...
      あの瞬間から私 ... あの頃のことにこだわり出してる ... 」
      それも無意識に ...
      でも ... こだわってるのは私だけじゃなかった ... 」

マスター 「彼もだと ...?」

レイコ  「そう ... 彼もしっかりとこだわり続けてたみたい ...
      それも、つき合い始めた頃 ... 8年も前から、今日の今まで ... 」

マスター 「今までって ... 」

レイコ  「あの日、彼が何気なくタバコに火を点けてたあのデュポンのライターは ...
      私が8年前に、彼にプレゼントしたものだった ...
      今でもそれを使ってるなんて ... 」

マスター 「それは ... 素敵なことではないでしょうか ... 」

レイコ  「私にはそう思えない ... いいえ、思いたくない ... 」

マスター 「どうしてそう ...?」

レイコ  「ある意味では、あの人には変わっていてほしかったから ... 」

マスター 「変わっていてほしかった ... 」

レイコ  「あの頃の思い出にかかわることなく ... 真新しい気持ちでほしかったから ... 」

マスター 「真新しい気持ちで、ですか ... 」

レイコ  「わかってる ... 私の勝手な思い入れだってことは ...
      でも、それでいてほしかった ... せめて再会するのなら ... 」

マスター 「デュポンのライターがすべてを物語っていたと ... そうおっしゃるん
      ですね ... 」

レイコ  「それがすべてだと思うの ... 5年という空白の時間を知るには ... 」

マスター 「それではもうご連絡はなさらないと ...?」

レイコ  「また昔のように、そばにいろって言われるのはこりごりだもの ... 」

マスター 「本当にそうおっしゃるのでしょうか ... マサヤさんは」

レイコ  「そう言うために ... その名刺をマスターに預けたのよ ... きっと。
      彼の優しい罠よね、これは」

マスター 「優しい罠 ... 」

レイコ  「そう ... 優しい罠よ ... 」


         :レイコ、グラスのカクテルを空け -----


レイコ  「マスター、ごちそうさまでした ... 今夜はこれで ... 」

マスター 「 ... ありがとうございました ... 」

レイコ  「一応、この名刺 ... いただいておくわ ... 」

マスター 「レイコさん ... 」

レイコ  「それじゃ、マスター ... おやすみなさい ... 」


         :レイコ、店を出る --- ドアの閉まる音

         :ヒールの音にまぎれて -----


レイコ(Na) 私は ... セピア色した想い出に浸るために、ここへ帰って来たんじゃ
      ない ...
      足りない何かを ... 何かを見つけるために帰ってきたの ...

      それなのに ...

      それなのに時間を5年前に戻して一体どうするつもりなの ... マサヤ ...
      私たちは今 ... お互いに別々の色を持った男と女でなきゃならないのよ ...

      あの頃のようにお互いがお互いの色に染め合うことなんて ...
      今はもう出来ないのよ ...


         :レイコ、公衆電話の前で立ち止まり -----


      そう ... 出来ない相談なのよ、あの時も ... そして今も ...


         :受話器を取り ---
         :名刺を見ながら、電話をかけるレイコ -----


      彼が、優しい罠をかけるなら ...


         :受話器の向こうの、コール -----


      私は甘い罪で、応えてあげる ...


         :やがてつながり -----


レイコ  「もしもし ... 私 ... 遅くにごめん ...
      --- 実はあなたに、言っておきたいことがあって ...
      --- ううん ... そんなことじゃなくて ...
      --- 今度こっちに帰ってきたのは ...
      .....

      実は私 ... 結婚するためだったの ...



ナレーション  こうして今 ...
        セピア色に姿を変えた二つのハートが ...
        ここに色付き始めた ...

        男の優しい罠と、女の甘い罪をたずさえて -----





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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