2012年09月20日

épisode / タクシー・バラード「北野 篇」 -final-








マスター(Na) 一生忘れられない坂道 ...
      あの女性がそう云われた言葉の意味を知る術は ...
      私共にはございませんでした -----

      これといって悲し気に、この店でカクテルを飲まれた訳でもなく ...
      かといって楽し気に、この店で時間を過ごされた訳でもございませんでした ---

      ただ私には ... たった一つだけ感じたことがありました ...

      それは -----

      あの女性がおもむろに ... そしてさり気なく ...
      遠くにある何かを愛おしげに想っておられたこと ...

      それだけが私に、感じられたことでした ---


        SE:走る車の車内 -----


      一生忘れられない坂道 ...
      彼女にとってそれは ... かけがえのない愛だったのかもしれません -----




女(Na)  私はそれからしばらくして、あの店を後にした ...
      ちょうど終電車もない時間だったので、色々と話してくれた
      あの源さんと呼ばれていた人のタクシーで、私は家路についた ...

      心地よく走るそのタクシーの中で、私はいつしか ...
      夜の帳に目映い想い出を映し出していた ...

      あの人と過ごしたあの日々を -----

      気がつくと私の頬には ...

      私は声を殺して、静かに泣いた -----



        SE:車が止まる -----



源次郎  「着きましたよ、お嬢さん ... 」

女    「(少し涙声で)あ、どうも ... 」

源次郎  「すっかり遅くなったね ... 」


女(Na)  私はその言葉に返事する余裕もなく、滲んで見えるメーターの料金を
      払おうとしていた -----


源次郎  「別に、あわてなくったっていいんだよ ... 」


女(Na)  そのドライバーは、ルームミラーを見ながらでもなく ...
      前を向いたまま、私にこう言ってくれた -----


源次郎  「それより先に、その涙 ... 乾かしてしまおうや ... 」





- Present  -
posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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