2012年09月18日

épisode / タクシー・バラード「北野 篇」 -scene:3-








         :サンドリオンの店内 -----



女    「それじゃ ... いろんな人と出会い、いろんな所へ行くんですね」

源次郎  「まあ、そうだね ... 確かにいろんな人間乗っけて、いろんな所に向かって
      走るねェ ... 疲れた人や元気な人、それにたまには怪しい奴なんかもな」

マスター 「そうでしょうね ... 喜びに胸躍らせる人や、悲しみに肩震わせる人 ...
      様々な人がそれぞれの思いを秘め、つかの間の道行きに通り過ぎて行く ...
      タクシーは、そんな空間でもあるんですね ... 」

源次郎  「でもマスター ... 現実は意外に滑稽だよ ... 味気ないもんだ。
      特に夜なんかに乗ってくる人間のほとんどは、少し疲れたサラリーマンや
      酔っぱらいだ ... そこにはみんなが思うような、色気やほだされるものは
      残念ながら何もないね」

マスター 「そうなんですか ... 」

女    「でも、いろんな所へ行かれるのは事実ですよね」

源次郎  「それはそうだね ... いろんな場所へ走らされるからなァ」

女    「特にこの街は海と山に囲まれた、素敵な港街ですものね ... 」

源次郎  「俺はその中でも、この辺りが一番好きだね ... 」

女    「この辺りが ...?」

源次郎  「そうだよ ... 特に異人館界隈なんか最高だよ」

女    「異人館 ... 」

源次郎  「いやなに、異人館にはちょっとした思い入れがあってね ...
      ここは俺にすれば、心休まる場所でもあるんだよ ... 」

女    「心休まる場所、ですか ... 」

源次郎  「だからこの店にも、ちょくちょく寄せてもらってるんだ」

バーテン 「それは初耳ですね、源さん」

源次郎  「そうだったかな ...? いや、そうかもしれんな ... まあどっちにしろ、この
      店からなら、異人館は母屋みたいなもんだからな」

バーテン 「異人館が、この店の母屋ですか?」

源次郎  「にしては、ちょっと雰囲気が違うかな ...?」

バーテン 「かなり違うとおもいますが ... 」

源次郎  「まあいずれにせよ、俺にとってはどっちも大事なものには変わりないってこと
      だよ、バーテンさん」

バーテン 「ありがとうございます、源さん」

女    「(ポツリと)ここからだと ... ホント近いですよね、異人館は ... 」

源次郎  「お嬢さんも好きなんだね、この辺りが」

女    「エッ?」

源次郎  「顔にそう書いてあるよ」

女    「まさか ... 」

源次郎  「いやいや、なかなかどうして ... これでも仕事柄、乗ってくるいろんな人の
      顔見てるから、結構わかるんだよ、その胸の内が ... 」

女    「 ..... 」

バーテン 「源さん、失礼ですよ ... 」

源次郎  「おっと、悪気はないんだ ... 気に障ったならごめんなさいよ ... 」

女    「いいえ、そんなことは ... 」

源次郎  「そうかい ... それならお詫びの印ってわけでもないが、この店からの異人館
      ルートってのを、お嬢さんに教えてあげるよ」

マスター 「サンドリオンからの ...?」

女    「異人館ルート ...?」





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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