2012年09月16日

épisode / タクシー・バラード「北野 篇」 -scene:1-



バーテン(Na)それは ...
     この店が北野にオープンして、ちょうど一年ほど経った頃の出来事でした -----









         SE:辺りに響くヒールの音 -----


女(Na) 辺りは静かだった ...
     一定のリズムで歩く私の、ヒールの音だけが囁くだけで
     この辺りは静かだった ...

     誰も話しかけてこないし、誰にも話しかけない ...
     私は一人でただあてもなく、彷徨うように歩いてる ...

     淋しくはないけれど、少し切なくて ...
     悲しくはないけど、少しやるせなくて ...

     それは ... たとえばため息が出るような ... うつむき加減になうような
     そんな気分のものじゃなく ...
     ちょうどそれは、瞬きを忘れた様な ... そんな気分のものだった ...

     私は今、歩いてる ...
     いつか来たこの道を ... この街を ... あの時と同じ景色の中を歩いてる ...
     でも、一つだけ違う事が ...

     それは -----



        SE:ドアの開く音 -----


バーテン 「いらっしゃいませ」

マスター 「いらっしゃいませ ... ようこそ」

女    「 ... あのう ... このお店はいつからここに ...?」

マスター 「はい ... かれこれ一年ほど前に、こちらでオープンさせて頂きました ... 」

女    「一年前から ... そうですか ... 」

マスター 「それが何か ...?」

女    「いえ、別に ... ただ前にこの辺りへ来た時には、こんな感じのお店、見かけた
      記憶がなかったもので ... それで」

バーテン 「ということは ... 一年以上、ご無沙汰されてたんですね、この街とは」

女    「正確に言えば ... 三年になりますね」

バーテン 「では、その三年ぶりの北野でのお飲物は、何にいたしましょうか?」

女    「そうですね ... じゃ、サラトガ・クーラーを ... 」

バーテン 「はい? サラトガ・クーラーですか ... かしこまりました ... 」


         :グラスにクラッシュド・アイスが入れられ ---
         :そこへライムジュース(20ml)とシュガー・シロップ(1tsp)が
          注がれる ---
         :最後に、適量のジンジャーエールが入れられ、ステアされる -----


マスター 「サラトガ・クーラー ... 珍しいカクテルを、ご存じなんですね」

女    「そうでもないんですよ ... これって実は受け売りなんです ... ある人のね」

マスター 「受け売り ...?」

女    「実は私、もともとはお酒飲めない人で、それじゃサマにならないからって
      その人がこれを教えてくれたんです」

マスター 「そうでしたか ... 」

バーテン 「お待たせいたしました ... どうぞ(グラスを置く)」

女    「どうもありがとう ...(一口飲む)」

バーテン 「いえ、私の方こそ ... 」

女    「エッ ...?」

バーテン 「お客様のおかげで、久しぶりにそのカクテルを作らせてもらえましたので ...
      お礼を申し上げたいのは、私の方です ... 」

女    「それには及びません ... 
      私もこんなに美味しいカクテルを頂いてるんですから ... 」

バーテン 「恐縮です ... 」

マスター 「いずれにしましても ... その類のカクテルをオーダーされる方は稀で、種類も
      そう多くはございません ... この店でもごくわずかな方が、あえてオーダー
      されるぐらいでして ... 」

女    「中でもそのカクテルは、この店では特に珍しいオーダーですね ... 」

源次郎  「そうだろうなァ ... 俺だって久しぶりだな、サラトガ・クーラーなんて名前
      耳にしたのは」

バーテン 「そうでしょうね ... 源さんでもオーダーされたことがないんですからね」

女    「源さん ...?」





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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