2012年09月12日

anecdote / 雨色のレシピ Last File -Page:5-









         :倉庫内の酒樽が並ぶ、とある一室 ---
         :手足を縛られたジンとアサミがいる -----


ジ ン(Na) 我が親愛なる、かつまた優秀なる助手の、勇気あるいつもながらの間の
      抜けた行動により、一転して拉致状態に陥った俺たち二人は、倉庫内の一室に
      手足の自由を奪われ、監禁された ---


アサミ  「ごめんなさい、先生 ... 私のせいでこんな事になってしまって ... 」

ジ ン  「何で言われた通り、外で待ってなかったんだ? お陰でこのザマだ ... 」

アサミ  「だって先生一人じゃ危ないと思ったから ... 」

ジ ン  「お前がついてくる方が、よっぽど危ないんだよ」

アサミ  「(泣きそうに)何もそんな言い方しなくても ... 先生の事、心配して来たのに
       ...(泣き出す)」

ジ ン  「(溜め息)フウ ... わかったから、泣くな ... それよりアサミ ...
      俺の方に背中向けて、ここへ寝転がれ ... 」

アサミ  「何するんですか? 一体 ... 」

ジ ン  「いいから黙って早くしろ ... 」


         :アサミ、ジンの目の前に転がる -----


ジ ン  「よし ...(寝転がり)」

アサミ  「先生まで寝転がってどうする気なんですか ...?」

ジ ン  「どうだ? これで俺の上着のポケットに手が入るだろう ... 」

アサミ  「エッ ...?」

ジ ン  「それで中にあるライターを取出せ... 」

アサミ  「は、はい ... 」


         :アサミ、ジンの上着のポケットから、何とかライターを取出す -----


ジ ン  「どうだ ...? 取り出せたか?」

アサミ  「はい ... 」

ジ ン  「じゃ今度は、それを俺の手に渡せ ... 」

アサミ  「はい ...(ジンに渡す)」

ジ ン  「(受け取り)よし ... 」

アサミ  「そのライターで、一体何するんですか?」

ジ ン  「決まってるだろ ... このロープを焼いて自由になるのさ」

アサミ  「エ ...?!」


         :ジン、ライター(ジッポー)のフタを開け、火を点ける ---
         :その火で、体を縛るロープを焼くジン ---
         :ロープの焼ける音 -----


ジ ン  「いつもの火遊びより熱いぜ ... この火はな ... 」


         :ジリジリと焼け焦げるロープ ---
         :その時、近づいてくる数人の足音 -----


アサミ  「先生、誰か来ます ...!」

ジ ン  「チッ ... そうらしいな ... 」


         :ジン、ライターのフタを閉め、目の前の酒樽を蹴る ---
         :酒樽からこぼれるバーボン -----


ジ ン  「ああ ... もったいねえ ... 」


         :やがてドアが開き、マリコと佐山が入ってくる -----


佐 山  「! ... 酒臭い ... 」

ジ ン  「ああ ... 酒が飲みたくてな ... 思わず樽を蹴っちまったよ ... 」

佐 山  「どこまでも馬鹿な奴だ ... 」

ジ ン  「フッ ... ありがとな ... 」

マリコ  「そろそろ今生のお別れね、探偵さん ... 」

ジ ン  「ひよっとして、これも契約にはいってるのか ...?」

佐 山  「君ィ ... 当然のことだろう ... 」

ジ ン  「それじゃ最初から ... 」

マリコ  「その通り ... これが私のレシピなのよ」

アサミ  「でも何故 ... ?」

マリコ  「お別れの挨拶代わりに、聞かせてあげるわ ... すべての事を」

ジ ン  「光栄だな ... 」

マリコ  「あのサンドリオンと言う店で、私と出会ってから ... 
      あなたの身の回りで起こった一連の事件は、全て私が仕組んだメニューよ ... 」

アサミ  「何ですって ...?!」

ジ ン  「時限爆弾から始まり、アサミを人質にフロッピーの交換までか ... 」

マリコ  「そう ... 色々と趣向を凝らしてみたのよ ... 楽しんで戴けたかしら?」

ジ ン  「充分だったよ ... だが何故、こんな手の込んだ芝居を演じたんだ ...?」

マリコ  「主人には、まとまった保険金が掛かってるのよ ... 」

アサミ  「保険金目当て ...?!」

ジ ン  「そこか ... 案外、安っぽいテーマだったんだな、この芝居は」

マリコ  「安っぽい ...?(軽く笑い)億単位の保険金が安っぽいかしら ...?
      会社の為にと、何十にも掛けた莫大な保険金なのよ ... あなた方には
      縁遠い額面だわ ... 」

ジ ン  「フン ... 」

マリコ  「その保険金を手にする為に ... 近い将来、主人を殺すはずだったけど ...
      下手に手を下せば、まず疑われる。そこで思いついたのが、事故死よ ... 」

アサミ  「事故死 ... 」

ジ ン  「とは言え ... 下手な偽装は却ってアシがつく ... 」

佐 山  「そこで登場してもらったのが、君じゃないか」

ジ ン  「何だと ...?」

マリコ  「主人を捜していたあなたは、途中で何度も襲った男と主人を勘違いをし
      誤って二人とも相打ちになって死んでしまう ... どう? こんなレシピは」

佐 山  「今までの一連の出来事は ... 君が間違いなく立原氏を捜していたという事を
      証明するための、いわゆる私たちにとってのアリバイ工作にすぎんのだよ」

アサミ  「ひっどい ... 一体どういう神経してんのよ、アンタたち!」

マリコ  「そこで ... 売られたケンカを絶対に買うというあなたの性格を、フルに利用
      させてもらったのよ」

ジ ン  「なるほどな ... それじゃ亭主が失踪したってのは ... 」

マリコ  「最初から監禁していた ... 」

ジ ン  「それなら、俺がいつかマンションで見かけたのは ... 」

マリコ  「主人の存在にあなたが不信感を抱かないよう、一度だけ主人を自由のにした時 ...
      つまりあれもお芝居のワンシーンだったわけね」

アサミ  「なら、あのフロッピーの存在はなんだったわけ ...? 」

佐 山  「ああ、あれね ...(軽く笑い)今回の一連の芝居に必要な、単なる小道具って
      ところかな、お嬢さん」

アサミ  「ウソ ... じゃ、あの童話の1フレーズの意味って ... 」

マリコ  「後ろの正面、だーあれ ... この私よ ... アハハハハ ... 」

アサミ  「もう! 人を馬鹿にして!」

佐 山  「しかし、あのフロッピーの存在で、それなりにスリルが味わえただろう?」

ジ ン  「それで ... 何かと小細工が必要なんで、お前の手を借りたって訳か ... 」

マリコ  「そう ... 彼はマフィアに顔が利く存在なの。今度の件が上手くいけば、主人の
      代わりに会社を任せて、それを基盤にシェアを広げる段取りなのよ」

ジ ン  「どおりで ... いくら考えても解けないパズルだった訳だ ... 」

マリコ  「パズルじゃなくてレシピなのよ、これは ... 」

ジ ン  「そっか ... 保険金を手に入れるための秘訣ってことか ... 」

マリコ  「そうね ... そういう事ね ...(高笑い)アハハハ ... 」

ジ ン  「なるほど ... ブラッディー・メリーだな ... まさに血の女王だ ... 」

マリコ  「ありがとう ... そのセリフは褒め言葉として聞いておくわ ... 」

ジ ン  「チッ ... 」

マリコ  「それじゃそろそろ、お別れの時間ね ... 残りの報酬を、今差し上げるわ ... 」


        SE:拳銃のセット音 -----


マリコ  「お疲れさまでした ... 」





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2012年09月11日

anecdote / 雨色のレシピ Last File -Page:4-









         :とある倉庫前 ---



ジ ン  「いいか ... お前はここで待ってるんだ」

マスミ  「でも、先生一人じゃ危険ですよ!」

ジ ン  「危険はハードボイルドの、一つの演出効果にすぎないさ ... 」

アサミ  「先生 ... 」

ジ ン  「それより、もし20分経っても俺が出て来なかったら、インテリに連絡しろ」

アサミ  「インテリって ...?」

ジ ン  「俺の鑑札を取り上げた、あの時のデカだ ... 村岡って名だ ... 」

アサミ  「村岡刑事 ... 」

ジ ン  「そうなった時は、ついでに奴に言っといてくれ ... 百年の恨みを晴らす時が
      来たってな」

アサミ  「あ、先生!」


         :ジン、単身で倉庫に入って行く --- ゆっくりと開けられる扉
         :注意深く忍び込むジン --- 微かに辺りに響く靴音
         :やがてジンの耳に届く男の呻き声 ---
         :立ち止まり、耳をそば立てるジン -----


ジ ン  「ン ...?!」

男(立原)「(呻き声)ウウウウーッ ... ウウウ ... 」


         :再び、呻き声のする方向へ歩き出すジン ---
         :やがてドアの前に -----


男(立原)「(呻き声)ウウウウーッ ... ウウウ ... 」

ジ ン  「このドアの向こうか ...?」


        SE:ジン、ドアのノブをゆっくりと回す --- ドアの開く音

         :すばやく中へ入り込むジン --- そこに人の気配


ジ ン  「(低く押し殺した声で)誰だ ...?!」

男(立原)「(呻き声)ウウウウーッ ... ウウウ ... 」


         :そこには手足を縛られ、猿轡をされた立原がいた -----


ジ ン  「あんたは ...?!」


         :ジン、立原の猿轡を外し、ロープを解こうとする -----


ジ ン  「一体誰にやられたんだ?!」

佐 山  「そこまでだ ... 」

ジ ン  「! ... 」


         :ジンの後頭部に銃口が突きつけられる --- 拳銃のセット音


佐 山  「君はロシアンルーレットは、お好きかな?」

ジ ン  「この間も、同じような質問をされて返事したんだがな ...
      流行なのか? あんたらの間でそのゲームは」

佐 山  「ちょっとしたブームとでも言っておこうか ... 」

ジ ン  「ミスター・ルーと名乗ることもか ...?」

佐 山  「なかなかやるじゃないか ... 君も。素直に褒めさせて戴くよ。だが ...
      それもここまでだな」

ジ ン  「そうかな ...? あれを見てみな ...!」

佐 山  「なに ...?!」


         :佐山の一瞬の隙をついて拳銃を奪うジン -----


ジ ン  「結構な悪のくせして、意外に騙されやすいんだな、あんたは」

佐 山  「貴様ーッ ...!」

ジ ン  「だから言っただろうが ... 全然迫力がねえから、もっと勉強しておけってな」

佐 山  「フン ...!」

ジ ン  「さあ ... どういう事なのか説明してもらおうか ... 弁護士さんよ」


         :その時、背後から女の声が -----


マリコ  「勝利を確信するには、まだ早くてよ ... 探偵さん」


         :振り向いたそこには ---
         :アサミに拳銃を突きつけたマリコがいた -----


ジ ン  「あんたは ... ?!」

マリコ  「その拳銃を捨てるのよ ... さもないとこの可愛いあなたの助手が、若い身空で
      命を落とすことになるわ」

ジ ン  「テメエって女は ... 」

アサミ  「ごめん、先生 ... 私またドジったみたいで ... 」

ジ ン  「馬鹿野郎 ...! 今度こそ当分、給料ナシだ!」


         :ジン、拳銃を床に投げ捨てる -----


マリコ  「フフフフ ... さあ、これからが本番よ ... 」





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2012年09月10日

anecdote / 雨色のレシピ Last File -Page:3-









         :遠くに聞こえる船の汽笛 ---
         :カモメの鳴き声 ---
         :ここはとある波止場 ---
         :そこへジンたちを乗せたタクシーが止まる -----


ドライバー「この辺で降りた方がいいと思うね ... あまり近づくと、気付かれるから ...
      折角、苦労してここまで追っかけて来たんだからね」

ジ ン  「感謝の極みだぜ、青い目の運ちゃんよ。奴の車は見失ったがな ... 」

ドライバー「 Okay, okay. Do not worry.(大丈夫、大丈夫 ... 心配ないよ)」

アサミ  「先生、とにかく降りて捜しましょう ... 」

ジ ン  「そうだな ...(ドライバーに)それじゃな青い目の運ちゃんよ ... 達者でな」

ドライバー「こちらこそ、楽しかったです ... I wish you good luck(幸運を祈ります)」


         :タクシーのドアが開く ---
         :アサミとジンが降りる ---


ドライバー「ア、お客さん!」

ジ ン  「何だ ...?」

ドライバー「結局、お客さんのビジネスは ...?」

ジ ン  「(微かに笑い)フッ ... フィリップ・マーロウってところかな ... 」

ドライバー「オーッ! フィリップ・マーロウ! 
      Amazing! It is cool! Please do your best! Goodbye.
     (素晴らしい! カッコいいですね。頑張ってください! さよなら。)」


         :走り去るタクシー -----


ジ ン  「変わった奴だぜ ... 」

アサミ  「これからが大変ですね、先生 ... 」

ジ ン  「とにかく、この波止場のどこかに奴がいることは確かだ ... 
      捜しださなきゃならんな」

アサミ  「でもどうやって、このだだっ広い倉庫街からあの男を見つけ出すんですか ...?
      考えただけでも気が遠くなりますよ、私 ... 」

ジ ン  「実を言うと ... 俺もその意見に同感なんだな ... 」


         :遠くに聞こえる船の汽笛 ---
         :カモメの鳴き声 ---
         :倉庫街を歩き出す二人 ---


アサミ  「駄目ですよ、先生 ... 人一人捜しだすには広すぎますよ、ここは ... 」

ジ ン  「ごもっともな意見だな ... 」

アサミ  「何か目印でもつけててくれればよかったんですけどね、あの男 ... 」

ジ ン  「いっそのこと、大声で名前でもよんでやるか ...? 案外、返事して出て来たり
      してな」

アサミ  「先生 ... この期に及んで、まだ心に余裕があるんですね」

ジ ン  「俺の心は昔から、どんな時にでも余裕を持て余してる ... 」

アサミ  「それってひょっとして、単に鈍感なだけじゃないんですか ...?」

ジ ン  「たまに、そういう指摘をされるな ... 」

アサミ  「(深いため息)ハァ ... この先思いやられるわ ... 」


         :やがてある倉庫の前で、一台の車を見つけるジン -----


ジ ン  「ン ...?」

アサミ  「どうかしたんですか?」

ジ ン  「あの車、確か見覚えがある ... 」

アサミ  「見覚えがあるって?」

ジ ン  「あれは確か ... 」

アサミ  「先生 ... 」

ジ ン  「そうか ...! あの時か ... 」

アサミ  「思い出したんですね、先生!」

ジ ン  「あの車は ... あの晩、俺を襲った車だ ...!」





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2012年09月09日

anecdote / 雨色のレシピ Last File -Page:2-









アサミ(Na) その翌日から先生と私は、ミスター・ルーこと佐山弁護士のマンションを
      張ることにした ...

      現在、唯一の重要参考人となる彼を張り込むことが、今度の仕事を一気に
      片付けるために残された手立てなのだ ---

      そして張り込むこと数時間 ... 彼は動き出した ---


         :車の中で佐山を張り込むジンとアサミ ---

         :ジンは居眠り、アサミだけが見張っている ---


アサミ  「先生、先生ったら ...! 起きてくださいよ、先生!」

ジ ン  「(寝起きの様子)ウーン ... 何だよ ... 」

アサミ  「佐山が動き出しました ... どこかへ出かけるんですよ!」

ジ ン  「なに ...?!(完全に目が覚めた)」

アサミ  「ほら ... ねっ」

ジ ン  「奴は車で出かけねえのか ...?」

アサミ  「どうやらそのようですね ... マンションのガレージは反対方向ですから」

ジ ン  「仕方ない ... 歩くか」

アサミ  「この車、どうするんですか?」

ジ ン  「ここへ置いてくしかないな ... 」

アサミ  「駐禁でやられますよ?!」

ジ ン  「歩いてる奴を尾行するのに、車じゃ目立ち過ぎる ... 何ならお前、乗って
      帰れ」

アサミ  「いやですよ、そんなの。私も行きます!

ジ ン  「ならこれで決まりだ」


         :ジンとアサミ、車を降りる --- ドアの音

         :歩き出すジンとアサミ ---
         :やがて前を歩く佐山を尾行するジンとアサミ、3人の靴音 -----


アサミ  「こんなに離れてて大丈夫ですか ...?」

ジ ン  「奴の場合はただの弁護士と違って、くだらないセカンドネームを持った
      男だからな ... それに満更知らない顔でもないし ... 並みの距離だと
      勘付かれる可能性がある ... 」

アサミ  「なるほど ... 」


         :やがて繁華街に出る3人 --- 街の雑踏


アサミ  「ア、先生 ... 」

ジ ン  「喫茶店で何方かと、お待ち合わせかな ...?」

アサミ  「千世、どうします? 私たちも ... 」

ジ ン  「いいや、ここで様子をうかがおう ... 見晴らしの利く茶店だから、大丈夫だ
      ろう」


アサミ(Na) それからの佐山は、別に怪しい動きは見られなかった ---
      単にコーヒーを飲みながら新聞を読み、合間にタバコを2、3本喫ったぐらい
      だった...

ジ ン  「あの野郎 ... タバコは喫わんとかほざいてたくせに ... 」


アサミ(Na)しかし --- 30分程経った頃だろうか ... 佐山に電話が入ったようだった -----


ジ ン  「一体、誰からだ ...?」

アサミ  「会話まで聞こえない ... 」

ジ ン  「 ... 感づかれたのかもな」

アサミ  「エッ?! どうして?」

ジ ン  「最初の予定じゃ、あの店で誰かと落ち合う段取りだったんだろう ...
      しかし、何らかの形で俺たちの尾行に気付いた相手が、何かを伝えるために
      佐山と連絡を取ったんだろう ... 」

アサミ  「もし、その推理が的中なら ... 」

ジ ン  「奴は俺たちを撒こうとする ... 」

アサミ  「アッ、先生! 佐山が!」

ジ ン  「野郎、いきなり期待に応えてくれるぜ!」


         :逃げる佐山 --- 後を追うジンたち
         :やがて大通りへ抜け、タクシーに乗り込む佐山 -----


アサミ  「先生! 佐山がタクシーに!」


        SE:車の停車音 --- ドアの開く音

         :次の瞬間、車が走り出す -----


ジ ン  「チッ! あの野郎 ... アサミ! タクシーを止めろ!」


        SE:車の停車音 --- ドアの開く音

         :すかさず乗り込むジンとアサミ -----


ドライバー「 Always, Thank you for your ride!
      (毎度、ご乗車ありがとうございます!) 」

アサミ  「何なのこの運転手?!」

ジ ン  「毛唐のドライバーか ...?!」

ドライバー「ワタシは健全なる、タクシードライバーで〜す!」

アサミ  「日本語通じるんだ ... 」

ドライバー「ハイ、ワタシ日系人ですから ... 父はアメリカの ... 」

ジ ン  「どうでもいいから、前のあの黄色のタクシーを追ってくれ!」

ドライバー「 Yes, sir!(かしこまりました!)」


         :ドアが閉まり --- 急発進するタクシー


アサミ  「だ、大丈夫ですか、このタクシー ... 」

ジ ン  「何とも言えんな ... この様子じゃ」

ドライバー「お客さんたちは、ポリスですか?」

アサミ  「そんなんじゃないわよ ...!」

ドライバー「それじゃ、借金取りですか?」

アサミ  「それも違う ...!」

ドライバー「それじゃ何故、あのイエロー・キャブ、追いかけるのですか?」

ジ ン  「興味があるのかい? 青い目の運ちゃんよ」

ドライバー「ハ〜イ、そのものズバリ! 興味津々ですね、ワタシ!」

ジ ン  「だったらまず、前の車を見失わないように、しっかり前見て運転するんだ。
      話はそれでも出来るからな」

ドライバー「 Oh! This, I'm sorry 」

アサミ  「私、このままじゃ寿命が縮まりそう ... 先生降りましょう、このタクシー」

ジ ン  「今から途中下車は無理だな ... 奴を見失う」

アサミ  「でも先生 ... 」

ドライバー「ダイジョブですよ、お嬢さん ... ワタシのドライビングテクニックは、最高
      ですから ... 安心してください」

ジ ン  「だから、前を見ろって!」

ドライバー「 I'm sorry!」

アサミ  「アッー! 踏切が!」


        SE:踏切の警報音が聞こえてくる -----


ジ ン  「しまった!」

ドライバー「 What a pity!(残念!)」

ジ ン  「チッ! くそーっ ... 」

ドライバー「どうしますか? このままじゃ、あのイエロー・キャブ、見失いますよ?」

ジ ン  「何とか行けるか?! 青い目の運ちゃんよ!」

アサミ  「でも電車が!」

ドライバー「 All right!(了解しました!)」


       SE:踏切の遮断機が降りだす -----


アサミ  「やめて!」

ドライバー「Go!」

アサミ  「キャーッ!」


        SE:やがて通過する電車 -----




タグ:尾行 逃亡 追跡
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2012年09月08日

anecdote / 雨色のレシピ Last File -Page:1-






ジ ン(Na) ... その夜、俺は珍しくアサミを連れ、サンドリオンのカウンターでグラスを
      傾けていた ...
      いよいよクライマックスを向かえたであろうこの仕事の、最後のプランを練る
      ために ---
      俺はいつものようにバーボンのロックをダブルでオーダーしたのだが、アサミ
      は生意気にも、ギムレットなんぞをオーダーしやがった -----



        SE:シェーカーにキューブアイスが入れられる音 -----


ジ ン  「仄かな香りを漂わせたライムジュースがシェーカーに1/3 ... 」


        SE:ライムジュースが1/3、シェーカーに注がれる -----


ジ ン  「そこへビフィーターのドライジンが2/3、注がれ ... 」


        SE:ドライジンが2/3、注がれる ---- 


ジ ン  「手際よくシェークされる ... 」


        SE:シェークされる音 -----


ジ ン  「やがて用意された、ドライ向きの逆三角型のカクテルグラスにゆっくりと
      注がれて ... 」


        SE:カクテルグラスに注がれ -----


ジ ン  「ギムレットの出来上がりだ ... 」

マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ(グラスを置く)」

アサミ  「どうもです ... いつ見ても、マスターのカクテリングは鮮やかですね ... 」

マスター 「ありがとうございます ... 」

ジ ン  「お前でもわかるんだな ... マスターの腕前が」

アサミ  「失礼ね ... 先生、私こう見えてもカクテルには少しうるさいんですからね」

ジ ン  「ほぉ、そうかい ... そりゃ初耳だな」

アサミ  「特にこのギムレットには、こだわりがあるの(一口飲む)」

マスター 「 ... お味の方はいかがでしょうか?」

アサミ  「 ... ウン、最高 ...! 
      今まで飲んだギムレットの中で一番だわ、マスターのが」

マスター 「 ... お褒めに預かり ... 光栄です」

ジ ン  「だがな、アサミ ... 」

アサミ  「何ですか?」

ジ ン  「お前はまだ ... ギムレットには早すぎる ... 」







 - ナレーション それは静かに終わろうとしていた ...
          疑惑の香りを漂わせた紅色のカクテルが
          その真実を語るかのように、グラスから消え去る中で ---

          それは静かに終わろうとしていた ...
          微睡みの中で途切れ途切れに垣間見る
          泡沫の夢から目覚めるように ---

          そしてそれは、静かに終わろうとしていた ...
          人知らずしてエピローグを告げるかのような ...
          霧雨の静寂な雨音にまぎれて -----



        SE:グラスにクラッドアイスが入れられる音 -----

         :そこへバーボンがボトルから注がれ ---
         :やがてグラスが置かれる -----


マスター 「どうぞ ... 」

ジ ン  「どうも ...(ゆっくりと、一口) ... マスター、この酒は ...? 」

マスター 「オールド・フォレスターですが ... お口に合いませんでしょうか?」

ジ ン  「いいや、とんでもない ... むしろ光栄なぐらいだ ... こんなバーボンを
      口に出来るなんて ... だが何故今夜はこの酒を俺に ...?」

マスター 「別にこれといって意味はないのですが ... 強いて言えば ...
      今夜の雰囲気にピッタリではないかと、そう思いましたので ... 」

ジ ン  「今夜の俺に ...?」

マスター 「今度のお仕事も、そろそろクライマックスを迎えたと、先程お伺いしました
      ので、それで ... 」

アサミ  「前祝のお酒ってところですね、マスター」

マスター 「そうですね ... そういうことですね」

ジ ン  「何やら意味ありげなようだが ... ひとまずよしとするか」


         :ジン、再びバーボンをゆっくりと一口 -----


アサミ  「それにしても ... 考えてみれば矛盾が多いですね、この事件」

ジ ン  「 ... だが、はっきりしていることが一つだけあるさ」

アサミ  「ミスター・ルーの正体が、あの依頼人の弁護士である佐山だってことです
      よね」

ジ ン  「そしてその佐山が ... 俺を拉致し、フロッピーを奪おうとしたあの謎の男を
      操る依頼主ということだ ... 」

アサミ  「そうですね ... 」

ジ ン  「そしてまた... 断言は出来ないが、声の感じから多分 ... あの謎の男こそが
      初めに女に関わるなと、電話でわざわざこの俺に、愛のメッセージをくれた男
      だろう ... 」

アサミ  「でもそうなると ... ミスター・ルーである佐山って男は、フロッピーは
      欲しいが、あの女性のご主人は見つけ出してほしくないことになる ... 」

ジ ン  「誰が考えても、答えはそうなるな」

アサミ  「それじゃ、あの佐山って弁護士は、依頼人であるあの女性を裏切ってることに
      なりますよ、先生 ... 」

ジ ン  「その公式も成り立つな ... 」

アサミ  「じゃ、一体どうなってるんですか? あの依頼人と弁護士の関係は ...?」

ジ ン  「 ... その答えは、奴が教えてくれるさ」

アサミ  「奴って ...?」

ジ ン  「ミスター・ルー、ご本人さ」





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