2012年09月24日

épisode / V.S.O.P 第一夜 「再 会」 -scene:2-








        :サンドリオンの店内 -----

       SE:ミキシング・グラスに氷(3〜4個)が入れられる ---
        :そこへカナディアン・ウイスキー(2/3)と
         スィート・ベルモット(1/3)、アロマチック・ビターズ(1d)が
         それぞれ入れられ、バースプーンで軽くステアされる ---
        :ミキシング・グラスにストレーナーがかぶせ、グラスに注ぎ ---
        :仕上げにレッド・チェリーがカクテルピックに刺されてグラスに
         沈められる -----


マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ」


        :グラスが置かれる -----


レイコ  「どうも ... 」


        :レイコ、ゆっくりと一口 -----


レイコ  「 ... さすがマスターのカクテル ... やっぱり美味しい ... 」

マスター 「そうおっしゃって頂けると、光栄です ... 」

レイコ  「あの頃のままの味がするわ ... 」

マスター 「それは ... 少し複雑なご感想ですね ... 」

レイコ  「エ ...?」

マスター 「懐かしんでおられるのか ... それともお褒め頂いているのか ... 」

レイコ  「いやだな、マスターったら ... 当然でしょ ... 両方に決まってるわ」

マスター 「(少し笑い声で)変わっておられませんね ... レイコさんはあの頃のまま」

レイコ  「マスターだってそうよ ... あの頃のまま ...
      それにこのお店だって ... 何も変わってない ...
      街の景色や人の服装に、時の流れみたいなものをまともに感じさせられたけど
      ここだけはあの頃のまま ... 時間が止まってたみたいで ... 」

マスター 「確か ... 」

レイコ  「5年 ... あれから5年経ったの ... 」

マスター 「そうですね ... それぐらい経ちましたでしょうか ... 」

レイコ  「今更ながら、長いようで短かった気もする ... この5年間は」

マスター 「それほどに ... 充実されてた年月だと、言えるのではないでしょうか」

レイコ  「充実した年月か ... 」

マスター 「で、いかがでしたか? 海外での生活は」

レイコ  「そう ... アメリカ、ヨーロッパを転々として、まるで音楽の武者修行みたいな
      感じの毎日だったから ... うん、そうね ... なんて気取った返事をできる程
      余裕はなかった ... けれどその反面、辛くとも苦しくとも何ともなかった ...
      ただ夢中で、いろんなものを見たり聞いたりしてたから ...
      毎日がいつも発見であり、感動だった ... その繰り返し ... 」

マスター 「素敵じゃないでしょうか ... そんな日々を過ごされて ... 」

レイコ  「そう ... 確かに素敵な毎日だったと言えるでしょうね ... 」


         :レイコ、グラスのカクテルをゆっくりと一口 -----


レイコ  「(ポツリと)でも ... 」

マスター 「 ... でも?」

レイコ  「何かが足りなかった ... 」

マスター 「何かが足りない ...?」

レイコ  「そう ... 何かが足りなかった ...
      自分でもよくわからないんだけど、何かがね ...
      (少し笑い)別に大したことじゃないとも思うんだけどね ... 」

マスター 「そうですか ...
      (話題を変える風に)... それで、しばらくは神戸にいらっしゃるんですか?」

レイコ  「ええ ... そのつもりです」

マスター 「それでしたら、精々ご利用くださいませ ... このお店を」

レイコ  「そうよね ... 」


         :ドアの開く音 -----


マサヤ  「こんばんは、マスター ... お久しぶり!」

レイコ  「!... マサヤ ... 」





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2012年09月23日

épisode / V.S.O.P 第一夜 「再 会」 -scene:1-




バーテン(Na)それは ...
       この店がまだ、海岸通りにある頃の出来事だったと
       マスターから聞かされました -----






ナレーション  過去という時の流れの中に
        同じ時間の所有がある ---

        男にとってそれは一瞬であり ...
        女にとってそれはつかの間であった ---

        そう ...
        それはちょうど一夜限りの
        微熱のようなエピソード ---

        ときめきはすでに心の欠片となり
        切なさはもう仄かな憧れ ---
        ... すべてがセピア色に染められた
        男と女の情景 ---


        SE:飛行機の着陸音 -----


        そして今 ...
        そのセピア色に姿を変えた二つのハートが
        ここに再会する ...
        真新しい恋の予感を告げるかのように ---


        SE:空港のロビーの雑踏 ---

         :その中に紛れて聞こえてくるヒールの音 ---


        そのプロローグは ...
        心の中にある情景までもが見えそうな ...
        そんな月の夜に始まった -----
 


レイコ(Na) 私は帰ってきた ... 5年ぶりに日本へと。
      久しぶりに目に映るこの街の光景は、私に懐かしさと驚きを与え、少し複雑な
      心境にさせた ...
      でもその傍ら ... 
      やはりどことなく安堵感がこの身を包むのは、この街の香りのせいだろうか ...
      それとも ---

      音大生の頃に通ったあの店のマスターや学友達はどうしているのか ...
      大半のこ娘は結婚したと、風の便りで聞いたけど ...
      そうね ... もうおかしくない年齢なんだ、彼女達も。

      少し会ってみたい気もするな ...

      今更会って何をどう話すのか見当もつかないけれど、その場の雰囲気はきっと
      すぐ、あの頃に戻るんだろうな ...

      ウフフフ ... みんなどんな顔をして主婦業をこなしてるんだろうか ...


        SE:微かな波の音 -----


      ウーン ... 懐かしい潮の香り ...
      あの頃はよくここで、いろんなことがあったっけ ...

      コンパ帰りに酔いつぶれたリツコが告白をしたのも ... 
      失恋してヤケ酒あおって思いっきりみんなで騒いだのも ... 
      そして ---
      彼との関係のはじまりと終わりも ... みんなここが舞台だった ---

      心の片隅で、忘れかけてたセピア色した想い出達が ... 今、微かに私の中で
      色付きはじめた ---

      この海岸通りが、あの頃の私のすべて -----


        SE:歩き出すレイコ --- ヒールの音


      そしてこの店も -----


        SE:ドアの開く音 -----


レイコ  「 ... こんばんは、マスター 」





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2012年09月21日

épisode / タクシー・バラード「北野 篇」 -recipe-








バーテン  今宵も「バール サンドリオン」へお越し頂き、誠にありがとうございました。 
     
      ではここで ...
      今回登場いたしましたカクテルを改めてご紹介させて頂きます。

      まず始めに『 サラトガ・クーラー / Saratoga Cooler 』-----
      そもそもこの『 サラトガ 』とは、ニューヨーク州はハドソン河畔の街の名で
      独立戦争時に英軍が降伏し、米軍が勝利を告げた地として知られておりますが
      その一方では ... 鉱泉の沸く保養地としても有名な所で、ライムとジンジャ
      エールが醸し出す鉱泉水のような味わいが、気分をリフレッシュさせてくれる
      とことから、このネーミングがつけられたと聞いております。

      さて次にご紹介いたしますのが『 フロリダ / Florida 』-----
      こちらも同じく、アメリカ南部に位置するフロリダ州という土地の名がつけら
      れたカクテルで、文字通りフロリダ・オレンジを思わせる色合いの、さっぱり
      とした柑橘系のカクテルです .....

      さてそのレシピは ...
      『 サラトガ・クーラー 』の場合、グラスにクラッシュド・アイスを入れ
      そこへライム・ジュース(20ml)と適量のジンジャエールを注ぎ、最後に
      シュガー・シロップ(1tsp)を入れ、ステアすれば出来上がりです。

      次に『 フロリダ 』は、シェーカーに、オレンジ・ジュース(2/3)mと
      レモン・ジュース(1/3)、それにシューガー・シロップ(1tsp)と
      アンゴチェラ・ベターズ(2das)を入れシェイクし、グラスに注げばOKです。

      さて今回のカクテル ...
      実はいずれもお酒を入れずに作られたノン・アルコール・カクテルでして
      こうしたものは一般的にはソフト・ドリンクと呼ばれております ...

      「お酒じゃないのにカクテル?」と思われるかも知れませんが、基本的には
      お酒が飲めない方のための、酒場用ドリンクとご理解頂ければ良いかと思い
      ます ...

      それでは ...
      また皆様にお会いできる日を、楽しみにしております ...

      ありがとうございました -----





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2012年09月20日

épisode / タクシー・バラード「北野 篇」 -final-








マスター(Na) 一生忘れられない坂道 ...
      あの女性がそう云われた言葉の意味を知る術は ...
      私共にはございませんでした -----

      これといって悲し気に、この店でカクテルを飲まれた訳でもなく ...
      かといって楽し気に、この店で時間を過ごされた訳でもございませんでした ---

      ただ私には ... たった一つだけ感じたことがありました ...

      それは -----

      あの女性がおもむろに ... そしてさり気なく ...
      遠くにある何かを愛おしげに想っておられたこと ...

      それだけが私に、感じられたことでした ---


        SE:走る車の車内 -----


      一生忘れられない坂道 ...
      彼女にとってそれは ... かけがえのない愛だったのかもしれません -----




女(Na)  私はそれからしばらくして、あの店を後にした ...
      ちょうど終電車もない時間だったので、色々と話してくれた
      あの源さんと呼ばれていた人のタクシーで、私は家路についた ...

      心地よく走るそのタクシーの中で、私はいつしか ...
      夜の帳に目映い想い出を映し出していた ...

      あの人と過ごしたあの日々を -----

      気がつくと私の頬には ...

      私は声を殺して、静かに泣いた -----



        SE:車が止まる -----



源次郎  「着きましたよ、お嬢さん ... 」

女    「(少し涙声で)あ、どうも ... 」

源次郎  「すっかり遅くなったね ... 」


女(Na)  私はその言葉に返事する余裕もなく、滲んで見えるメーターの料金を
      払おうとしていた -----


源次郎  「別に、あわてなくったっていいんだよ ... 」


女(Na)  そのドライバーは、ルームミラーを見ながらでもなく ...
      前を向いたまま、私にこう言ってくれた -----


源次郎  「それより先に、その涙 ... 乾かしてしまおうや ... 」





- Present  -
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2012年09月19日

épisode / タクシー・バラード「北野 篇」 -scene:4-








         :サンドリオンの店内 -----



源次郎  「さて、ここからだと ... 山手に向かって歩き出し、通りに続く綺麗な並木を
      抜けると、まず左手に現れるのがジュノーの館だ ... 
      これは一種、時計台を思わせる造りの建物で、なかなか雰囲気のあるもんだ」

マスター 「そうですね ... あれは素敵な面持ちの建物ですね」

源次郎  「そこから左に折れて、すぐ右手の一筋目には裏通り感覚の小径があるから
      そこを抜ければ萌黄の館だ」

バーテン 「萌黄の館 ... 」

源次郎  「ここはその昔 ... アメリカ総領事館ハンター・シャープの旧邸で、建築当時の
      ままの状態で、違う色で塗り分けられた部屋や、凝った絵柄のタイルを使った
      暖炉なんかが見逃せないところだな」

バーテン 「確か ...
      淡いうぐいす色をした壁で、開放型したベランダがある建物でしたよね」

源次郎  「その通り ... それからすぐ左に曲がれば、広場と風見鶏の館がある」

女    「風見鶏の館 ... 」

マスター 「この界隈で今では唯一のレンガ造りであり、小塔の上の風見鶏はこの街のシン
      ボルとして知られている異人館 ... 」

源次郎  「明治の末期 ... ドイツの貿易商だったG・トーマス低として建てられ
      ドイツのゴシック様式が取り入れられた室内には、重厚な雰囲気が漂っとる
      よ」

女    「その上、1階の各部屋の天井がすべて違うデザインになってるんですよね」

マスター 「よくご存じなんですね ... 」

女    「いいえ ... そんなことはないんですが ... 」

源次郎  「そこから石畳の続く道を歩き、三筋目を左に折れてしばらくすれば ...
      古城の洋館うろこの家だ ...
      元々は外国人の高級借家とし慰留地にて建てられたものらしいんだが、明治
      以降に今の場所に移築されたんだそうだ」

バーテン 「その名の通り ... うろこのような形をした天然石のスレートが飾られた外観が
      ユニークな建物ですよね」

マスター 「他にも、トロワイヨン、ルオー、キスリングといった西洋の名画が展示されて
      いる、うろこ美術館がありますね ... 」

源次郎  「この辺りは他にも、世界の彫塑や彫刻を展示した山手八番館や本家オランダ館
      それに旧中国領事館やアンデルセンの書斎を再現したデンマーク館なんかが
      あって、なかなか盛り沢山な場所だな」

女    「そう ... モーツァルトをテーマにしたウィーン・オーストリアの家なんかも
      ありますよね」

マスター 「確かにそうですね ... 」

源次郎  「ここからサッスーン邸を回って北野美術館へ行き、北野通りへ出るのもいいん
      だが、あえてレンガと石段の小径を通ってラインの館へ行くのも乙なもんだ」

女    「私は ... その道が好きですね ... レンガと石段のその小径が ... 」

源次郎  「オッ ... 気が合いそうだね ... お嬢さんとは」

女    「だって私には ... 一生忘れられない坂道ですから ... 」

源次郎  「忘れられない坂道 ...?」




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