2012年09月30日

épisode / V.S.O.P 第二夜 「追 憶」 -scene:2-








        :回 想 -----



マサヤ  「しかし参ったな ... まさか彼女と会うなんて ... しかもここで。
      彼女が視界に入ってきた時、自分の目を疑ったね ... ホント」

マスター 「それも5年ぶりに、偶然にですからね ... さぞかし驚かれたことでしょう ... 」

マサヤ  「 ... 変わってなかったな ... 彼女。昔のままだ ... 」

マスター 「そうでしょうか ... 随分と女らしくなられて、一段と綺麗になられたように
      思いますが ... 」

マサヤ  「いいや ... そうかな ...
      昔っからあの程度のものだったように思うんだけどな ... 」

マスター 「かなりシビアなご意見なんですね」

マサヤ  「そんなつもりはないんだけどね。ただ ... 途切れてた何かを辿ると、こういう
      見解になっちゃう ... 」


マスター 「途切れていた何か ...?」

マサヤ  「それが ... 想い出なのか単なる記憶なのか、それとも ... 」

マスター 「それとも ...?」

マサヤ  「未練なのか ... 」

マスター 「未練、ですか ... 」

マサヤ  「なんか、純日本風の演歌のフレーズだね、これって。
      少し粘っこいかな ...(おどけて少し笑う)」


         :マサヤ、グラスに少し残ったカクテルを飲み干し -----


マサヤ  「マスター、もう一杯いいかな」

マスター 「同じものでよろしいんでしょうか?」

マサヤ  「ウーン、そうだな ... じゃ久しぶりにブルームーンを ... 」

マスター 「かしこまりました ... 」

          
        SE:キューブ・アイスを入れたシェーカーが用意され ---
         :そこへドライ・ジン(1/2)、クレームド・バイオレット(1/4)
          レモン・ジュース(1/4)が入れられ、シェークされる ---
         :やがてグラスにカクテルが注がれ ---


マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ(グラスが置かれる)」

マサヤ  「やっぱり ... 相変わらずの腕前だな、マスターは」

マスター 「恐れ入ります ... 」

マサヤ  「それにこのカクテルの微妙な色合い ... さすがだ ... 」

マスター 「このカクテルは、その微妙な色合いがすべてだといわれております ... 」

マサヤ  「確か昔、そんなきいたことがあったっけな ...
      このブルームーンというカクテルの名前にちなんだ謂れを ... 」

マスター 「そのカクテルを口にされる方の心のバロメーターによって、グラスに透き
      通って見える色合いが、それぞれに微妙にちがうと ... 」

マサヤ  「恋人のいない時に見た月は青かったけれど、恋人のいる今は金色に輝いて
      見えるって ... あのブルームーンは確かそんな内容の歌詞だったっけ ...
      そこからきてるんだな、このカクテルの由来も ... 」

マスター 「よくご存知なんですね」

マサヤ  「あの頃はカクテルが、よく青っぽく見えてたっけ ... 」

マスター 「青色ですか ... 」

マサヤ  「(ポツリと)淋しい色合いだな、ブルーは ... 」


         :マサヤ、ゆっくりとカクテルを一口 -----


マサヤ  「でもマスター ...
      このカクテルの名前のもう一つの意味って知ってるかな ... 」

マスター 「もう一つの意味?」

マサヤ  「そう ... もう一つの意味」

マスター 「いいえ ... 残念ながら存じませんが ... 」

マサヤ  「それは ... 出来ない相談って意味なんだ ... 」

マスター 「出来ない相談 ... 」





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2012年09月29日

épisode / V.S.O.P 第二夜 「追 憶」 -scene:1-








ナレーション  囁かれる言葉が心をその心を酔わせ ...
        何気ない仕草がその唇を奪う ---

        甘い嘘が、そのまま喜びとなり ...
        優しい罠が、そのまま悲しみとなる ---

        時に男は繊細な悪魔のように ...
        そして女は大胆な天使のように ---

        そう ...
        それはちょうど一晩限りの
        微熱のような短いアバンチュール ---

        心の欠片に綴られた想い出たちが
        消えそうなときめきに火をつける ---

        ... すべてが生まれ変わるような
        男と女の情景 ---

        そして今 ...
        セピア色にその姿を変えた二つのハートが
        ここに再会した ...
        真新しい恋の予感を告げるかのように ---


        SE:静かに響くヒールの音 ---


        今宵その第二夜は ...
        虚ろな瞳の奥でたどる追憶の日々までもが見えそうな ...
        そんな星の夜に始まった -----


        SE:ドアの開く音 -----


レイコ  「この間はどうもでした ... マスター」

マスター 「いいえ、とんでもございません ... 」

レイコ  「まさかあの人がここへ来るなんて ... 思ってもみなかった ... 」

マスター 「本当に奇遇でしたね ...
      お二人とも申し合わせたようにお出でになられたのですから ...
      それも5年ぶりに ... 」

レイコ  「 ... でも、ホントに変わってなかったな ... あの人」

マスター 「そのようでしたね、マサヤさんは」

レイコ  「カメラの方も、相変わらず続けてるみたいだし ...
      (思い出して)そうそう、マスター ...
      あの時、あの人が言ってた件はどうなったの?」

マスター 「雑誌の掲載のことでしょうか ...?」

レイコ  「それそれ。私、途中で帰っちゃったから、気になってたんだけど ...
      えらく張り切ってるようだったから、あの人 ... 」

マスター 「そのことでしたら ... 丁重にお断り致しました」

レイコ  「エッ ... ? どうしてなの、マスター」

マスター 「とても光栄で、ありがたいお話しでしたが ...
      このサンドリオンはいつも ... 来て頂ける方にとって静かな場所でありたいと
      そう思っておりますので ... 」

レイコ  「静かな場所 ...?」

マスター 「それは ... 
      BGMもなく、物音一つたてないというような物理的なものではなく...
      メンタルな部分での静けさということで ... 」

レイコ  「メンタルな静けさ ... 」

マスター 「例えば ... お客様一人一人の心の呟きまでもが聞こえてくるような ...
      そんな静かな場所でありたいと ... 」

レイコ  「心の呟き、か ... なるほど ... そうよね。
      ここはそんなお店でなくっちゃ駄目よね ...
      考えてみれば私も、こんな雰囲気のお店だからこそ、こうしてのこのこやって
      くるんだもの ... いつまでもこのままであって欲しいわね、このお店だけは」

マスター 「ありがとうございます ... 」

レイコ  「それで ... あの人の反応はどうでした?」

マスター 「最初は説得なされたましたが、しばらくしてご理解して頂けたようで ... 」

レイコ  「そうなの ... 」

マスター 「それからしばらくしてグラスを傾けながら ... 色んなお話しをされてましたね
      ... 例えばこんな ... 」





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2012年09月27日

épisode / V.S.O.P 第一夜 「再 会」 -scene:final-








        :サンドリオンの店内 -----



レイコ  「ところで ...
      今夜どうして、ここへ来たの ...? しかも5年ぶりに」

マサヤ  「同じ質問をキミにしたいんだが ...?」

レイコ  「先に答えて ... どうして?」

マサヤ  「運命の悪戯かも ...?」

レイコ  「冗談はそれくらいにして ... 真面目に答えてほしいな ... 」

マサヤ  「ビジネスさ ... 」

レイコ  「ビジネスって ... 」

マサヤ  「長いこと海外にいたんだから、これぐらいの英単語わかるだろ?
      business ... つまり ... 」

レイコ  「仕事でここへ?」

マサヤ  「そう ... 今度、ある専門雑誌の企画でバーの特集をやるんで、それに
      ここを載せようと思って、それで来たって訳 ... 」

レイコ  「フーン ... 」

マサヤ  「くだらない雑誌のグラビア飾る写真なんて興味ないけど、そこそこ
      名の通った雑誌の企画だから、それならここをと思いついて、それで
      足を運んだんだ ... 5年ぶりにね」

レイコ  「そうだったの ...
      相変わらずやってるのね、カメラの方は ... 」

マサヤ  「今のところ、なんとかね ... 」


         :マサヤ、おもむろにタバコを取り出しデュポンで火を点ける ---
         :そしてゆっくりと一口喫う ---
         :ライターをカウンターに置く音 ---


マサヤ  「さて、今度はこっちの質問に答えてもらおうか ...
      どうして今夜、ここへ来たんだ ...? 」


         :レイコ、カウンターに置かれたライターを見つめている -----


マサヤ  「言っとくけど、タクシーでよ ... なんて答えは、この際なしだよ」

レイコ  「 ..... 」

マサヤ  「人の話、ちゃんと聞いてるのか? レイコ ... 」

レイコ  「 ..... 」 

マサヤ  「レイコ ...!」

レイコ  「あ、ごめん .... 私はただ ... 」

マサヤ  「ただ、何となくふらりと ... 」

マサヤ  「ふらりと想い出の場所へ来たのか ... わざわざ飛行機に乗って ... 」

レイコ  「そんなつもりじゃ ... 」

マサヤ  「キミはここへ来るために ... 遥々、日本へ帰って来たというのか ... 」

レイコ  「だからそれは ... 」

マサヤ  「別に責めてるつもりじゃない ... ただキミとこうしていると、あの時
      キミが言ったセリフを思い出して ... 」

レイコ  「マサヤ ... 」

マサヤ  「 ... よそう ... こんな話しは。
      それより、とにかく今夜は再会なんだ ... マスターの言うように5年ぶりの
      再会 ... 改めて祝杯を ... ねえ、マスター」

マスター 「そうですね ... 今夜はそれに尽きると思いますが ... 」

マサヤ  「それじゃマスター、同じやつをもう一杯 ... 」

マスター 「レイコさんはどうなさいますか?」

レイコ  「 ... じゃ私も、同じものを」

マスター 「かしこまりました ... 」


        SE:それぞれのカクテルを作る音にまぎれて -----



レイコ(Na) ここサンドリオンを訪れて ...
      久しぶりにオーダーしたマンハッタン ...
      そのカクテルを口にした瞬間から ... この胸の片隅に閉じ込められていた
      色褪せたはずの想いでたちが目を覚まし ---

      彼と再会した瞬間から ...
      このセピア色したハートが仄かに色付き始めたことを、私は感じた ---

      どうして ...? もう過去のものなのに ... このときめきは -----



マサヤ(Na) ここサンドリオンへ訪れて ...
      何気なくオーダーしたドライ・マンハッタン ...
      ここでこのカクテルを口にした瞬間 ... 過去という時間の彼方に身を潜めた
      沈黙の想い出たちが微かに騒ぎ始め ---

      彼女と再会した瞬間から ...
      このセピア色したハートが仄かに色付き始めたことを、オレは感じた ---

      どうしたんだ? もう過去のものなのに ... この切なさは -----



ナレーション  こうして今 ...
        セピア色にその姿を変えた二つのハートが
        ここに再会した ...

        それはまるで ... 真新しい恋の予感を、告げるかのように -----








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2012年09月26日

épisode / V.S.O.P 第一夜 「再 会」 -scene:4-








        :サンドリオンの店内 -----

       SE:グラスの重なる音 ---


マサヤ  「キミだって変ってないな ... あの頃のままだ」

レイコ  「何故そう?」

マサヤ  「手元のそのカクテル ... あの頃と同じだ」

レイコ  「そう言われれば、そうね ...
      でもこれを飲みたくなったのは、ここへ来たから ...
      久しぶりにここへ来たからオーダーをした ... ただそれだけのことなの」

マサヤ  「久しぶりにここへ来たから ... か。
      相変わらずだな、そういう言い回しのセリフも ...」

レイコ  「そういうあなたは ... カクテルの好みだけは、少し変わったようね。
      その類を口にするなんて ... 」

マサヤ  「いくらなんでも、人間少しぐらいは変わるよ ... 5年もあればね」

レイコ  「 ... そうよね ... 」

マサヤ  「そうさ ... 」


         :マサヤ、カクテルをゆっくりと一口 -----


レイコ  「彼女の好みなの? そのカクテル ... 」

マサヤ  「いいや ... 」

レイコ  「じゃ、ひょっとして ... 奥さんの?」

マサヤ  「(微かに笑って)まさか ...
      指輪もケジメもない、相変わらずの独身貴族さ ... 」

レイコ  「そういうことだけは誇らしげに言うのね」

マサヤ  「悪かったね ...
      生憎と他に誇れるものが、今のところ何もないもんでね」

レイコ  「(笑っている)... 」

マサヤ  「何だよ、クスクス笑って ...
      キミこそどうなんだ? あっちで、堀が深くて鼻の高い、習慣の違う、米を
      食べない、やたら目の色が派手で髪の毛が縮れたイイ男でも見つけたか?」

レイコ  「これはこれは ... 随分なご心配を、ありがとうございます」

マサヤ  「いえいえ、どういたしまして」

レイコ  「少なくとも ... あなたのような人種の男性とは、お近づきにならなかったわ」

マサヤ  「そりゃそうだろうな ...
      ボクみたいなタイプの男は、そうざらにいるもんじゃないから ... 」

レイコ  「安心なさい ... 恐らくこの世であなただけよ、そういうタイプの人は」

マサヤ  「今夜だけは ... 褒め言葉として聞いておくよ、今のセリフを」

レイコ  「今夜だけ ...?」

マサヤ  「そう ... 今夜だけはね」

レイコ  「どうして?」

マサヤ  「言わせるなよ、そんなこと」

レイコ  「どうしてよ」

マサヤ  「ねえ、マスター ... そう思いませんか」

マスター 「そうですね ... 真意の程は、私には判りかねますが ...
      ご本人がそうおっしゃるのですから ... 多分、聞かれない方がよろしいのでは
      ないかと ... 」

マサヤ  「ほら ... マスターだって意味不明の、答えになってない返事するほど、奥深い
      男の気配りってやつなんだから、黙ってそれに甘えてりゃいいの」

レイコ  「意味不明なのは、あなたじゃなくて?」

マサヤ  「 ... 相変わらず、鈍感なやつだな ... 」

レイコ  「じゃ、どういう意味なの? 今夜だけって」

マサヤ  「だから今夜は ... 今夜だけは ...
      キミのすべてを受け止めようと ... 」

レイコ  「受け止める?」

マサヤ  「そう ... 何せ、5年ぶりの再会なんだから ... 」

レイコ  「(ため息をつき)相変わらず ... 思い込みが激しいのね」

マサヤ  「だから言いたく ... なかったんだ ... 」





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2012年09月25日

épisode / V.S.O.P 第一夜 「再 会」 -scene:3-








        :サンドリオンの店内 -----

       SE:ミキシング・グラスに氷(3〜4個)が入れられる ---
        :そこへカナディアン・ウイスキー(2/3)と
         ドライ・ベルモット(1/3)、アロマチック・ビターズ(1d)が
         それぞれ入れられ、バースプーンで軽くステアされる ---
        :ミキシング・グラスにストレーナーがかぶせ、グラスに注ぎ ---
        :仕上げにレッド・チェリーがカクテルピックに刺されてグラスに
         沈められる -----


マスター 「失礼いたします ... どうぞ」


        :グラスが置かれる -----


マサヤ  「どうも ...
      それにしても奇遇だな ... いや、奇跡かもしれないな、こんなのは。
      自分の作品でノーベル文化賞でも貰ったような気分だね ... 最高だよ」

レイコ  「あなたがそんなもの貰える訳ないでしょ ... あり得ないわ ... 」

マサヤ  「そうだよ ... その通り、あり得ないね。
      でもこの世の中で、そのあり得ないことの一つや二つが現実にあり得る事
      だってたまにはある ... 今夜のようにな」


         :レイコ、グラスのカクテルを一口 -----


レイコ  「 ... ここへはよく来るの? あれからも」

マサヤ  「いいや ... 今夜、久しぶりさ ... あれから5年ぶりぐらいかな ...
      ねえ、マスター」

マスター 「そうですね ... 同じ頃にお二人とも、お見えにならなくなりましたので ... 」

レイコ  「そう ... あれ以来なの ... 」

マサヤ  「いつ日本へ?」

レイコ  「今朝方 ... 」

マサヤ  「ますます奇遇だな ... 帰国して早速、こうして顔を合わせられるなんて。
      千載一遇ってのは、まさにこのことなのかな」

レイコ  「あなたも変わってないみたいね ... 」

マサヤ  「あなたもって?」

レイコ  「さっきマスターと話してたの。
      世の中は変わったけど、マスターとこのお店はあの頃のままだってね」

マサヤ  「それでボクも、その変わってない仲間のメンバーだと?」

レイコ  「そうね ... 」

マサヤ  「そりゃないよ ... それじゃまるで博物館の標本じゃない」

レイコ  「そんな意味じゃないって ...
      第一あなた、そんな言い方マスターに失礼じゃなくて? ねえ、マスター」

マスター 「いいえ、とんでもございません」

マサヤ  「それじゃそれは、どんな意味なんだ? 一体」

レイコ  「だから ... 
      時間の隔たりなんか関係なくて、いいものはいつまでたってもいいし
      悪いものはいつまでたっても悪いってことを言いたかったの」

マサヤ  「それって、問題発言だな ... 」

レイコ  「どうして」

マサヤ  「今の口ぶりだと ... どういいように解釈しても、ボクはいい例えじゃなくて
      むしろ後の悪い方に値するような気がするんだけどな ... 」

レイコ  「そう思うなら、そう思ってなさいよ ... 」

マスター 「お二人とも、お久しぶりに会われたのですから、話題を少し変えられてみては
      いかがでしょうか ...?」

マサヤ  「話題を ... 」

レイコ  「変える?」

マスター 「それにはまず ... お二人のグラスで乾杯されるべきかと思いますが ... 」

マサヤ  「乾杯って ... ?」

レイコ  「どうして ... ?」

マスター 「今宵はお二人にとって ... 再会の宴なのですから ... 」





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