2012年08月06日

anecdote / 雨色のレシピ File-T -Page:4-








         :サンドリオンの店内 ---

         :グラスにバーボンが注がれる音 -----


ジ ン  「どこの何方かは知らないが ... 他人の素性をそれだけ調べられるんなら、
      わざわざ探偵なんぞに頼まなくたって、テメエで捜しゃいいじゃねえか」

マスター 「どうぞ ...(グラスを置く)」

ジ ン  「ありがとう、マスター」

佐 山  「失礼じゃないのかね、君」

ジ ン  「(一口飲み)どっちがだ ...?」

佐 山  「仕事を依頼する探偵の事を調べて、何が悪いんだ?」

ジ ン  「俺はそもそも、調べられることを好まない ... 調べることが好きでもな」

佐 山  「何だと ... 」

マリコ  「どうやら、あなたのご機嫌を損ねたようね ... 」

ジ ン  「充分にな ... 」

佐 山  「貴様 ... 」

ジ ン  「タバコ1本、いいかな?」

佐 山  「な、何だと?」

ジ ン  「ちょうど切らしたんだ ... 」

佐 山  「私は喫わん!」

マリコ  「これでよければ、どうぞ」

ジ ン  「 ... 悪いな」


         :ジン、マリコの差し出すタバコをくわえ、ジッポーで火を点ける -----


ジ ン  「(一口喫い) ... このタバコも、そう不味くはないんだな ... 」

佐 山  「なんて奴だ ... 人からタバコをもらっておきながら」

マリコ  「どう ...? 機嫌直して、引き受けてもらえないかいら」

ジ ン  「タバコ1本でも喫わせれば、気が変わるとでも思ったか?」

マリコ  「まさか ... 」

ジ ン  「そうだよな ... 」


         :ジン、グラスのバーボンを一気に飲み干し -----


ジ ン  「さて ... 帰るとするか ... 」

佐 山  「まだ話は終わってないぞ」

ジ ン  「それはそっちの都合だろ ... 俺には俺の都合があるんだよ」

佐 山  「何を ...!」

ジ ン  「あんた、自分で凄んでるつもりだろうが、全然迫力がねえな ...
      もっと勉強した方がいいぜ ... ドス効かせるならな」

佐 山  「貴様のような男に、兎や角云われる筋合いはない」

ジ ン  「それなら ... そんな男に仕事頼むのは筋違いってもんだよ」

佐 山  「クッ ...!」


         :ジン、ドアを開けて出ようとするが、立ち止まり -----


ジ ン  「そうだ、マスター ... 今度夢の中で逢った時は、もう少し優しくしてもらいたい
      もんだな ... 」

マスター 「 ... 夢の中だけで、よろしいんでしょうか?」

ジ ン  「(微かに笑い)フッ ... マスターには、適わんな ... 」


         :ジン、店を出て行く --- ドアの閉まる音


佐 山  「このままでいいんですか?」

マリコ  「大丈夫 ... 彼は必ずこの仕事を引き受ける ... いえ ... 引き受けたくなるのよ」

佐 山  「マリコ様 ... 」

マリコ  「マスターのこのカクテル、なかなかの逸品だわ ... お代わり頂けるかしら」

マスター 「お褒めに与り、光栄です ... しばらくお待ちください」

マリコ  「佐山さん ... 」

佐 山  「はい ...?」

マリコ  「マスターのこのカクテルのレシピのように ... 私のレシピも完璧なのよ。
      (微かな笑い)ウフフフフ ... 」





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月05日

anecdote / 雨色のレシピ File-T -Page:3-








         :サンドリオンの店内 ---

         :女(マリコ)と男(弁護士:佐山)がいる -----



マスター 「いらっしゃいませ」

佐 山  「(マリコに耳打ちする)... あのカウンターにいる男が、そうです」

マリコ  「そう ... 」

マスター 「ようこそ」

マリコ  「今晩は ...(ジンに)ここ、いいかしら?」

ジ ン  「断る理由が見当たらないんで、NOとは言えないだろう ... 」

マリコ  「それじゃ、失礼して ... 」


         :マリコ、ジンの隣りに座る -----


マスター 「(佐山に)お客様も、どうぞ」

佐 山  「いや、どうも」


         :佐山、カウンターの席に座る -----


マスター 「ご注文の方は、いかがいたしましょうか ...?」

マリコ  「そうね ... ブラッディマリーを頂こうかしら ... 」

マスター 「かしこまりました。...(佐山に)お客様は ...?」

佐 山  「私は、ダイキリを」

マスター 「承知いたしました」


         :コリンズグラスにキューブアイスが4〜5個入れられ、ウオッカが
          1/8(45ml)程注がれる -----


マリコ  「あなた ... 探偵さんよね ... 」


         :そこへトマトジュースがグラスに4/5程注がれ、軽くステアされ ---


マリコ  「名前は、加納 仁 ... 」

ジ ン  「だったらどうなんだ ... 」


         :シャトレーレモンがグラスの縁にデコレートされ ---
         :マドラーが添えられる -----


マスター 「どうぞ ... 」

マリコ  「 ... ありがとう。(一口飲み)... 実はあなたに、仕事をお願いしたいの」

ジ ン  「仕事? ... 何で俺なんだ?」

佐 山  「元インターポール在籍、腕利きの麻薬捜査官 ... 」


         :キューブアイス入りのシェーカーにホワイトラム3/4と
          ライムジュース1/4、シュガー1tspが入れられる -----


佐 山  「しかし2年前 ... 密売逮捕の銃撃戦の際、弾の切れた犯人が逃亡しようと
      したところを背後から射殺 ...
      その行為を問われ、インターポールをクビになる ... 」


         :シェーカーの音 ---

         :やがてシェイクされたカクテルがグラスに注がれる -----


マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ」

佐 山  「 ... どうも」

マリコ  「そんなあなただからこそ、仕事を依頼したいの」

ジ ン  「 ... マスター ... お代わりくれるかな」

マスター 「かしこまりました」

マリコ  「 ... 3日前から失踪した、私の主人を見つけ出してくれればいいの ... 」


         :グラスにキューブアイスが2〜3個入れられる音 -----


マリコ  「もし見つけ出せれば、報酬は思いのまま ... どうかしら?」

ジ ン  「 ... 満更、悪い話でもなさそうだ ... が、お断りだ」

マリコ  「何ですって ...?」





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月04日

anecdote / 雨色のレシピ File-T -Page:2-








ジ ン(Na) そんな訳で、俺は命を奪われた ---
      と言うより、殺されたと言うべきか ... サンドリオンのマスターに。
      とは言ってみても ...
      ここでこうしてグラスから伝わる氷の冷たさを指先に感じてるんだから
      どうやら俺は生きてるらしい ...

      さっき確かに撃たれたはずなのに ---

      そう言えば微かな雨の気配と、仄かにいい女の匂いが漂う ...
      間違いなくこの俺は生きている ... 何故か?

      フフフフ ... アッハハハハ ... 夢か ... 夢だったんだよな ----

      ... 申し訳ない。こんな俺は、加納 仁。通称、ジンと呼ばれるバッド・
      ミドル・エイジ ...?

      売られたケンカは必ず買う ... この性格の成れの果てが、しがない場末の
      探偵だが、そんな俺の境遇を、俺自身は決して悲観してない ----

      その俺が、ゆっくり腰を据えて夢見れる居場所 ...
      それがここ、バール・サンドリオン ----

      もっとも、イイ女の匂いがするここのマスターだからこそ ... 俺は夢で
      殺されたのかも? -----


         :サンドリオンの店内 -----


マスター 「お目覚めですか?」

ジ ン  「どうやらそうらしい ... 」

マスター 「お疲れなんですね」

ジ ン  「そうかもな ... 逃げ回るのも大変だからな」

マスター 「逃げ回る?」

ジ ン  「そう ... 借金取からな ... 」

マスター 「コウノトリじゃないんですね」

ジ ン  「そういう類のやつには、どうも縁がないらしい ...
      現に今だって、マスターに殺されたんだからな」

マスター 「私に、殺された?」

ジ ン  「そう ... それもマグナムでこの左胸を ... この距離から撃ち抜かれた」

マスター 「マグナムで、ここから?
      ...(微かな笑い)ウフフ ... 大層な夢をご覧になってたんですね」

ジ ン  「何せ、マスターにマグナムだもんな。ホントに大層な夢だったよ。
      けど ... マスターに殺されるなんてのは、ちょっとしたフランス映画の
      ラストシーンより乙だと思うな、俺は」

マスター 「光栄なことですと、この場合、私は喜んでいいのでしょうか ...?」

ジ ン  「もちろんさ ... この俺の左胸を仕留める奴なんて、今の今までお目に
      かかった事はないからな」

マスター 「重みのあるお言葉ですね。
      それに ... 私にマグナムを撃たせるところなんか、ジンさんらしいと
      思いますね」

ジ ン  「俺が昔、愛してたヤツさ ... 」

マスター 「インターポール時代に、ですね ... 」

ジ ン  「 ... マスター」

マスター 「はい?」

ジ ン  「マスターなら ... いいデカに、なったと思うよ」

マスター 「これはまた、含蓄のあるお言葉ですね」

ジ ン  「ちなみに ... 俺がホシなら、逃げるどことろか ... 」


        SE:ドアの開く音 -----





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月03日

anecdote / 雨色のレシピ File-T -Page:1-








        SE:微かな雨音 ---

          :やがて ...
           電話で誰かと話す女の声が聞こえてくる -----


マリコ  --- そう ... わかったわ。
       それじゃ、その店の前で落ち合うことにしましょう。

     --- そうね ... どうやら雨も降り出したようだし、30分後ぐらいで
       どうかしら?

     --- それじゃ ... あ、待って。それでその店の名前は?
     --- サンドリオン ... わかったわ .....


        SE:女、受話器を置く -----


マリコ  「バール・サンドリオン、か ... 」



 --- ナレーション それは静かに始まった .....
          今日一日の喧騒に少し疲れ気味の街が
          雨色に染まり行く中で ---

          それは静かに始まった .....
          この季節に少しセンチな空の涙が
          ガラスを伝う雫のように ---

          それは静かに始まった .....
          人知らずしてプロローグを告げるかのような
          微かな雨音にまぎれて -----



マスター 「いつ頃の事なの?」

ジ ン  「2年ほど前かな」

マスター 「どこで ...?」

ジ ン  「港の倉庫街 ... そう、ここから近いな、すぐの所だ」

マスター 「誰かいたの ... 」

ジ ン  「ああ、相棒がいたね ... 生真面目な奴が一人いた」

マスター 「それで?」

ジ ン  「それでって?」

マスター 「それでどうしたの? あなたとその相方の二人で、追い詰めた犯人を一体
      どうしたの ...?」

ジ ン  「(微かな笑い)フッ ... なんか尋問されてるみたいだな、今夜は。
      そういえば ... あの時とよく似てるな、この雰囲気 ... 」

マスター 「あの時 ...?」

ジ ン  「そう、あの時。... 俺が査問会でお偉方に、ゴタゴタ尋問されてたあの時に
      そっくりだな ... フフフフフ ... 」

マスター 「ごまかさないで ... 」

ジ ン  「 ... 何をだ?」

マスター 「あなたは無抵抗の犯人を撃ったのよ ... それも背中から ... 」

ジ ン  「逃げようとする奴に銃口向けりゃ、誰だって背中から撃つことになるさ」

マスター 「罪の意識はないの ...?」

ジ ン  「犯罪者は、奴らだ」

マスター 「 ... そう ... そういう考え方なの ... 」

ジ ン  「そう。そういう考え方なんだ」

マスター 「 ... それじゃ私もその考え方にちなんで、態度を取るわ ... 」

ジ ン  「 それは ... どういう意味かな? マスター」

マスター 「こういう意味よ ... 」


        SE:銃声 -----






タグ: 雨音 雨色
posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
blogramで人気ブログを分析 にほんブログ村 小説ブログ 脚本・シナリオへ
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。