2012年07月11日

épisode / 6oz.(オンス)の告白 -scene:5-






         :サンドリオンの店内 -----       


マスター 「事故だったんですね ... 」

女    「彼、焦ってたみたいで信号無視したらしいんです ...
      それで右折車のクルマと接触しちゃって ... ほんの一瞬の出来事なのに ... 」

マスター 「時として、一分一秒が ... その人の人生を大きく変えてしまうのですね ... 」

女    「人の命って呆気ないものだって、その時に感じたな ...
      だって ... ほんの数時間前まで、あんなに元気だったのに ... 」


         :女、カクテルをゆっくりと一口 -----

         :短い沈黙の中、静かに流れるジャズ -----


女    「(ポツリと)あの時、オーナーが言ってたんですよ ...
      彼が倒れてた周りには、アネモネの花びらが沢山散ってたって ... 」

マスター 「アネモネの花ですか ... 」

女    「そうです ... 赤いアネモネの花です ... 」

マスター 「それで ... そのカクテルを ...?」

女    「そういうことになりますね ... 」

マスター 「それでも ... いつもそのカクテルを口にされるわけではなく、今夜のような
      心持ちのような時にだけオーダーされるのは ... 」

女    「やっぱり ... 砂漠の中のオアシスのような存在だったんですよね ...
      私にとって、彼が ... 」

マスター 「それはつまり ... 彼以外の男性は、オアシスに成り得ないと ... 」

女    「あれから何人かの男性と出逢って、色んな話をし、ある程度の時間を一緒に
      過ごしたけれど、何かが違うんです ... 何かが ...
      受け入れられないんですよね、その中の誰一人としての男性を ... 」

マスター 「受け入れようと、されてないのでは ...?」

女    「 ... そうですね ... きっとそうですね ...
      彼のことを忘れようとする反面、実は彼のことを忠実に想ってたりして ...
      目の前の男性が彼と違うのは当たり前なのに、それでも彼の影を求めてる ... 」

マスター 「そして ... その時々の男性との時間の所有とともに、彼ではないことの事実に
      目覚め、その結果 ... 砂漠の中に彷徨いオアシスを求める ...
      届かない夜空の星に手を差し伸べるかのように ... 」

女    「届かない夜空の星、か ... 」

マスター 「それは紛れもない事実ではないでしょうか ... 」

女    「 確かにそうですね ... 彼はもう、私の手の届かない世界にいるんですから ... 」

マスター 「でも ... 」

女    「でも ...?」

マスター 「 ... その彼を想い慕う女性が今ここにいることも、事実だということです ... 」





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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