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SE:サンドリオン --- ドアの開く音
マスター 「いらっしゃいませ」
ジ ン 「こんばんは ... マスター ... 」
:男、店内を見回し -----
ジ ン 「(独り言のように)まだ、来ずか ... 」
マスター 「どうかなさいましたか?」
ジ ン 「いいや、何でもないんですよ ... 何でも。
... それよりマスター、今夜はジン・ライムをお願いします」
マスター 「ジン・ライム ...
お久しぶりにご注文されましたね、そのカクテルを」
ジ ン 「そう言われればそうかな ... ご無沙汰かも」
マスター 「以前はよく、オーダーされてましましたので」
ジ ン 「そうか ... 随分と久しぶりなんだ ... 」
マスター 「しばらくお待ちくださいませ ... 」
SE:オールド・ファッション・グラスが用意され ---
:2、3個のクラッシュドアイスが入れられる ---
:そこへドライ・ジン(3/4)、ライムジュース(1/4)が注がれ
軽くステア ---
:スライスしたライムがグラスの縁にデコレートされる -----
マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ」
:グラスが置かれる -----
ジ ン 「 ... どうも」
:男、グラスを少し揺らす --- 微かな氷の音 -----
ジ ン 「確か ... 前に言ってましたよね、マスター」
マスター 「どういうことでしょうか?」
ジ ン 「ジンは心の熱まで冷やしてしまうお酒だって ... 」
マスター 「そうですね ...
そんなことをお話したこともございましたね、確かに ... 」
ジ ン 「(ポツリと)やっぱりオレには、このジンがお似合いなのかもな ... 」
:男、カクテルをゆっくりと一口 -----
マスター 「今夜もいつもとはまた少し ... 違ったご様子ですね ... 」
ジ ン 「ですね ... 今夜は違いますね ... かなり。
きっと ... 今までここへ来た中で、こんな気持ちでいたことなんて一度も
なかったような ...
マスター 「それは ... 」
ジ ン 「多分、最初で最後でしょうね ... こんな気持ちでここにいるのは」
マスター 「最初で最後の気持ち ... 」
ジ ン 「今夜はこのカクテルが、ボクの全てなんですよね ... 」
マスター 「ジン ... ライム ...が? 」
ジ ン 「そう ... だから今夜は、じっくりと飲んでいたいんです ...
このカクテルの名前のように ... ボクの夢がやって来るまで ... 」