2012年07月07日

épisode / 6oz.(オンス)の告白 -scene:1-



バーテン(Na)それは ...
       この店がまだ、海岸通りにある頃の話しだったと
       マスターから聞かされました -----







         :サンドリオンの店内 -----       

        SE:ミキシング・グラスにキューブアイスが入れられ ---
         :そこへドライシェリー(2/3)とスィートベルモット(1/3)が
          注がれる ---
         :静かにステアされ ---
         :カクテルグラスに注がれる ---


マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ」


         :グラスが置かれる -----


女    「 ... どうも」


         :ゆっくりとカクテルを一口 -----
         :女、深くて微かなため息をつき -----
         :グラスを置く -----

         :つかの間の沈黙 -----


マスター 「少し、意味あり気でしたね ... 」

女    「エッ...?」

マスター 「今のため息です ... 」

女    「そうでした ...?」

マスター 「失礼ながら ... 私にはそう感じられました ... 」

女    「そっか ...
      やっぱり、ちょっとしたところで出ちゃうもんなんだな ... 心の模様って」

マスター 「心の模様 ... 」

女    「ねえ、マスター ... 今夜の私の心の模様って、どんな風に感じます?」

マスター 「唐突なご質問ですね ... 」

女    「例えば ... 情熱に燃える太陽だとか ... 逆に淋しさを秘めたつきのようだ
      とか ... 感じたままでいいですから」

マスター 「そうですね ...
      満点の星をきらめかせた、夜の砂漠という感じでしょうか ... 」

女    「夜の砂漠? ... 随分、荒涼としたとしたイメージなんだ ...
      どうしてまたそんな風に?」

マスター 「言葉ではうまく説明出来ないんですが ...
      今夜お客様がこの店へいらっしゃって、先程グラスを傾けられるまでを
      イメージしますと、ただ何となくそんな風に感じまして ... 」

女    「なるほどね ... 」

マスター 「それに ... 」

女    「それに?」

マスター 「今夜はお久しぶりに、そのカクテルをご注文なさいましたので ... 」


         :女、しばらくグラスを見つめる -----


女    「(ポツリと)そうだよね ... 私、いつもこうなんだよね ...
      気がつくとこのカクテルを口にしてる ... 」

マスター 「差し詰め ...
      お客様にとっては、砂漠の中のオアシスなんですね ... そのカクテルが ... 」





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2012年07月05日

épisode / 来夢来人 [ジン来夢/パール来人.part:X] -final-






         :サンドリオンの店内 -----


マスミ  「あなたこそ、今夜どうして私をここへ誘ったの ...?
      何か言うつもりじゃなかったわけ...?」

ジ ン  「そう ... それもある」

マスミ  「それもって ... 他にもなにかあるの ...?」

ジ ン  「それよりどうするつもりなんだ .... オレとのことは」


         :沈黙 -----


マスミ  「 ... どうしていいのか、わからないの ... 今」

ジ ン  「わからない、か ... 」

マスミ  「 ... どうしたいの ... あなたは」

ジ ン  「 ... 正直に言えば、自分でもよくわからない ... でも ...
      わからないなりにも、どうしようもないたった一つだけの事実がある」

マスミ  「たった一つだけの事実 ...?」


         :男、小指の指輪を外して -----


ジ ン  「この指輪のサイズは、お前の左手の薬指にピッタリだってこと ... 」

マスミ  「 ... そんな ... 」

ジ ン  「ホントなら二ヶ月前のあの日に、これは渡せてたはずだった ...
      あんなケンカさえしなけりゃ ... 」

マスミ  「ジン ... 」


ジ ン  「とにかくこの指輪は渡すよ ...
      そもそも、お前のために買ったものなんだからな ... 」


         :男、指輪をカウンターに置く -----


マスミ  「 ... 少し飲みたくなってきた ... 私」

ジ ン  「なら ... マスターに何か作ってもらえよ」

マスミ  「マスター ... 」

マスター 「はい ... 」

マスミ  「私に ... いつか飲めなかったあのカクテルを ... 」

ジ ン  「飲めなかったカクテル ...?」

マスター 「 ... ジンに包まれて光り輝く、パールオニオンのあのカクテルですね ...
      かしこまりました ... 」

ジ ン  「ギブソンか ... 」


        :女、バッグから封筒に入った切符を取り出し -----
        :ゆっくりと破りだす -----


ジ ン  「どうしたんだ? 急に ... 」

マスミ  「ううん ... それより ... ライター貸りるね」


         :女、男の手元にあるジッポーを手に取り ---
         :火を点ける ---
         :灰皿の中で燃える封筒 -----


ジ ン  「何かあったのか ...?」

マスミ  「何でもない ... 行き先を間違って買った、切符なの ... もう意味もないし ... 」

ジ ン  「相変わらずだな、お前 ...」

マスミ  「そうね ... そうかもね ... それより ... 」

ジ ン  「ン?」

マスミ  「今頃なんだけど ... Happy Birthday ... ジン」


 
 
          長針短針 ... 彼と彼女 -----
          長針だけでは時を知る術もなく
          短針だけでは時を刻めるはずもない -----
          気まぐれなのか諦めなのか
          それぞれがそれぞれの存在に気がついて
          はじめてかけがえのないものだと知らされる -----

          今 ... 彼と彼女の二人の時計は
          真新しい時の歴史を刻み始めた -----





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2012年07月04日

épisode / 来夢来人 [ジン来夢/パール来人.part:X] -scene:4-






         :サンドリオンの店内 -----


ジ ン  「久しぶり ... 元気だったか ...?」

マスミ  「ウン ... いつも通り ... 相変わらずって感じかな ... 」

ジ ン  「この間は一体どうしたんだよ ...
      人の誕生日にわざわざ呼び出しておきながら ... 」

マスミ  「ごめんなさい ... そんなつもりじゃなかったんだけど ... 」

ジ ン  「じゃあ、どんなつもりだったんだよ ... 」

マスミ  「それは ... 」


         :男、タバコをゆっくりと一口 -----

         :二人の間を静かに流れるジャズ -----


ジ ン  「ま、いいか ...
      今更済んだこと、とやかく言ったところで何も始まらないもんな ...」

マスミ  「 ... ごめん ...」

ジ ン  「もういいよ ... 」


         :男、カクテルを一口飲み -----


ジ ン  「何も飲まないのか ...?」

マスミ  「私、今は ... 」

ジ ン  「マスターに悪いだろ ... 何か頼めよ」

マスター 「... いいえ、よろしいんです ... ご無理なさらないでください。
      何か口にされたくなられましたら、お申し付けくださいませ ... 」

マスミ  「ごめんなさい ... マスター」

ジ ン  「今日はやけに素直だな ... 」

マスミ  「いつもそうだったわ ... 」

ジ ン  「そうかな ... 」

マスミ  「あなたこそ、全然素直じゃないくせに ... 」

ジ ン  「どういう意味だよ、それは」

マスミ  「だってあの時でも ... あなたが素直に自分の気持ちを話してくれたら
      こんなことにはならなかった ... 」

ジ ン  「こんなことって、どんなことだよ」

マスミ  「ジン ... 」

マスター 「失礼ながら ... お二人とももう少し、ご自分に素直になられてはいかがで
      しょうか ... 」

ジ ン  「自分に ... 」

マスミ  「素直 ... 」


         :つかの間の沈黙 -----


ジ ン  「 ... 誕生日にここへオレを呼びだしたのは、どういうつもりだったんだ ...?」

マスミ  「 ... それは ...」

ジ ン  「それは?」

マスミ  「 ... マスター、預かって頂いてたもの ... いいですか」

ジ ン  「預けてたもの ...?」

マスター 「かしこまりました ... 」


         :マスター、サイドボードから箱を取り出し --- カウンターへ


マスター 「どうぞ ... 」

マスミ  「ありがとうございます ... 」

ジ ン  「それは ...?」

マスミ  「あの日は ... これをあなたに渡そうと思って、逢うつもりだった ... 」


         :女、男に箱を差し出す ----


ジ ン  「これを、オレに ...? 」


         :男、箱の中からグラスを取り出し -----


ジ ン  「 ... バカラのカクテルグラス ... 」

マスミ  「前から言ってから ...
      一度そのグラスでジンのカクテルを飲みたいって ... 」

ジ ン  「マスミ、お前 ... 」





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2012年07月03日

épisode / 来夢来人 [ジン来夢/パール来人.part:X] -scene:3-






        SE:タクシーから女が降り --- ドアが閉まる
         :走り去るタクシー ---
         :ゆっくりと歩き出す、女 --- あたりに響くヒールの音


マスミ(Na) あの人が別れ際に言った言葉は ---

      「もしも返事がOKなら、僕に会いに来てほしい ...」
      
      そう言ってあの人は私から離れていった ...
      切符を入れた真新しい白い封筒を残して ...

      --- 一体どうする気なの、マスミ ---

      もう一人の自分が、私に問いかけてくる ...

      --- 明日の朝、10時2分 ... 東京行きの新幹線 ---

      あの人と過ごしたほんの少しの時間のスナップが、私の目の前を覆う ...

      --- ホントに好きなの? マスミ、あの人が ---

      わからない ... 今の私には、わからない .....


        SE:ヒールの音にまぎれて --- 微かな波の音
         :女、ふと立ち止まる ----


マスミ  「 ... 確かこの辺だったな ... あの日ジンとケンカ別れしたのは ... 」


        SE:ウミネコの鳴き声 ---
         :女、しばらく夜の海を見つめている -----


マスミ   私が行きたいのはあの人の許なのか、それともジンなのか ...


         :波の音 -----


         :サンドリオンの店内 -----

         :男、ふと店内の時計に目をやる -----


マスター 「時間が気になるご様子ですね ... 」

ジ ン  「そうですね ...
      でもよく考えたら、この店の時計は止まったままなんですよね、いつも」

マスター 「はい ... 」
      ここへいらっしゃる方の心のリズムによって、この店の時間は刻まれて
      いますので ... 」

ジ ン  「心のリズムか ... 」


         :男、タバコを取り出してくわえる -----
         :ジッポーのふたを開け、火を点けようとするが -----
         :しばらくジッポーを見つめている -----


マスター 「どうかなさいましたか ...?」

ジ ン  「いや ... 実はここで点かなくなって以来、全然火が点かないんですよ、
      このジッポー ... だから今、何となくこれで火をつけるのが少し ... 」

マスター 「試されてみてはいかがでしょうか ... 彼女を信じて」

ジ ン  「彼女を信じて ... ですか ... 」


         :男、ジッポーを擦る -----
         :火が点く -----


ジ ン  「点いた ... 」


        SE:ドアの開く音 -----


マスター 「いらっしゃいませ ... 」

マスミ  「 ... 遅くなって、ごめん ... 」

ジ ン  「マスミ ... 」

マスター 「 ... 夢がやってきましたね、そのカクテルの名前通りに ... 」





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2012年07月02日

épisode / 来夢来人 [ジン来夢/パール来人.part:X] -scene:2-






        SE:サンドリオン --- ドアの開く音


マスター 「いらっしゃいませ」

ジ ン  「こんばんは ... マスター ... 」


         :男、店内を見回し -----


ジ ン  「(独り言のように)まだ、来ずか ... 」

マスター 「どうかなさいましたか?」

ジ ン  「いいや、何でもないんですよ ... 何でも。
      ... それよりマスター、今夜はジン・ライムをお願いします」

マスター 「ジン・ライム ...
      お久しぶりにご注文されましたね、そのカクテルを」

ジ ン  「そう言われればそうかな ... ご無沙汰かも」

マスター 「以前はよく、オーダーされてましましたので」

ジ ン  「そうか ... 随分と久しぶりなんだ ... 」

マスター 「しばらくお待ちくださいませ ... 」


        SE:オールド・ファッション・グラスが用意され ---
         :2、3個のクラッシュドアイスが入れられる ---
         :そこへドライ・ジン(3/4)、ライムジュース(1/4)が注がれ
          軽くステア ---
         :スライスしたライムがグラスの縁にデコレートされる -----


マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ」


         :グラスが置かれる -----


ジ ン  「 ... どうも」


         :男、グラスを少し揺らす --- 微かな氷の音 -----


ジ ン  「確か ... 前に言ってましたよね、マスター」 

マスター 「どういうことでしょうか?」

ジ ン  「ジンは心の熱まで冷やしてしまうお酒だって ... 」

マスター 「そうですね ...
      そんなことをお話したこともございましたね、確かに ... 」

ジ ン  「(ポツリと)やっぱりオレには、このジンがお似合いなのかもな ... 」


         :男、カクテルをゆっくりと一口 -----


マスター 「今夜もいつもとはまた少し ... 違ったご様子ですね ... 」

ジ ン  「ですね ... 今夜は違いますね ... かなり。
      きっと ... 今までここへ来た中で、こんな気持ちでいたことなんて一度も
      なかったような ...

マスター 「それは ... 」

ジ ン  「多分、最初で最後でしょうね ... こんな気持ちでここにいるのは」

マスター 「最初で最後の気持ち ... 」

ジ ン  「今夜はこのカクテルが、ボクの全てなんですよね ... 」

マスター 「ジン ... ライム ...が? 」

ジ ン  「そう ... だから今夜は、じっくりと飲んでいたいんです ...
      このカクテルの名前のように ... ボクの夢がやって来るまで ... 」





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