2012年07月19日

épisode / シンデレラ イマージュ part-T -scene:final-






         :サンドリオンの店内 -----       


マスター 「どうしていらっしゃらないとわかるんでしょうか ... ?」

イツカ  「何となくそんな気がするの ... 今。
      今夜だってそう ...
      いつも不意にそんな予感がした時は、決まって彼は来ない ...
      来たためしがないの ... 」

マスター 「予感 ...?」

イツカ  「あーあ ...
      せっかくこんなにいい雰囲気のお店で、ユウと会えると思ってたのに ...
      残念だなぁ ... 」

マスター 「本当にいらっしゃらないんでしょうか ... 今夜、彼氏は」

イツカ  「うーん ... しゃくだけど来ないと思う ... ユウは」

マスター 「しゃく?」

イツカ  「多分、他の子とデートしてるんだと思う ... 」

マスター 「他の子と ...? どうしてそうだと?」

イツカ  「いつもそうなんですよ ... 彼は。
      時々というか ... 近頃、まともに会ってはくれないし ... 」

マスター 「何故そうなんでしょうか ... 」

イツカ  「それは私にもわからない ... わからないけど、仕方ないとも思う ... 」

マスター 「仕方ない ...?」

イツカ  「だって ... 人の心って、鎖でつなげられるようなものじゃないと思うから ...」

マスター 「鎖でつなぐ ... 」

イツカ  「それに ... ここへ来るまでのいつものヒール占いも、今夜は中途半端だったし
      ... 今夜は仕方ないと思う ... 私」

マスター 「満足されてるんでしょうか ... 今のままで」

イツカ  「満足なんてしてませんよ ... 私。
      でも ... 」

マスター 「でも ...?」

イツカ  「それでも私、好きなんですよ ... ユウのことが。
      (あどけない微かな笑い)うふ ...
      マスター ... おかしいですかね、私って」


         :グラスの氷が揺れる音 -----


マスター(Na)屈託のない笑顔とグラスに氷だけを残して、その女性はこの店をあとに
      されました ... 
      その夜、彼氏とは会えないままに ...

      それでも彼女には ... 淋しさや悲しみの彩りを漂わせる雰囲気のかけらも
      ありませんでした ...
      あるのはただ ... 午前零時までに帰ってしまわれるという、シンデレラの
      ような可憐なイメージが漂っていただけ ...

      ちなみに、彼女は最後に ...
      こんなセリフを残して、ドアの向こうへ消えて行きました ...

      「マスター ... また来ますね」... と -----





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2012年07月18日

épisode / シンデレラ イマージュ part-T -scene:4-






         :サンドリオンの店内 -----       


イツカ  「彼の友達がここを教えてくれたの。
      すごくいい店だから、今度ユウと二人で行けって」

マスター 「ユウ ... ?」

イツカ  「ああ、ごめんなさい ... 彼の名前なんですよ、ユウって。
      優秀の優、優雅の優の一文字書いて、ユウなんですよ」

マスター 「きっと、優しい方なんでしょうね」

イツカ  「そうだと思うんだけど ... 実際どうなのかなぁ ... 」

マスター 「意外なお返事ですね、それは」

イツカ  「ウン ... わたしもそう思う ...
      だけどホントのところ、私にもよくわからない ... ユウのことは」

マスター 「この世で一番好きな人のことなのに、ですか?」

イツカ  「そう ... この世で一番好きな人だから ... わからない」

マスター 「それでも好きなんですか ... 彼のことが」

イツカ  「それだから好きなんですよ、ユウのことが ... (照れ笑い)えへへへへ ... 」


         :女、カクテルをゆっくりと一口飲む ---
         :グラスに揺れる氷の音 -----


イツカ  「私、前に友達から聞いた方法で、彼に手紙を送ったことがあって ... 」

マスター 「友達から聞いた方法 ...?」

イツカ  「宛先は何も書かずに、手紙の差出人のところに送りたい人の住所を書く ...
      それだと切手を貼らなくても返送されるから、ちゃんと送りたい人の所に
      届く ... 学生の頃だったかな、あれは ...
      私、そんなラブレターが好きだった ...
      ユウはその手紙の差出人を私だとわかってくれた ...
      私には、それがすべて ...
      それだけで私はユウのことが、この世で一番好きになった ... 」

マスター 「宛先のないラブレター ... 彼はよくイツカさんだとわかりましたね ... 」

イツカ  「そう思った ... 私も。でもその、宛先のないラヴレターが私だとわかって
      くれたことで、満足なの。
      ねえ 、マスター ... 私っておかしいかなぁ ... 」

マスター 「いいえ、とんでもない ... むしろ素敵ですよ、とても」

イツカ  「マスターにそう言われると、嬉しくなっちゃうな、私。
      (無邪気に)うふふふふ ... 」

マスター 「それで ... 何時にお待ち合わせされたんでしょうか、その彼氏とは」

イツカ  「確か ... 11時だったかな ... 」

マスター 「11時 ... それだとかなりの遅刻ですね、彼氏は」 

イツカ  「そうだよね ... もうこんな時間だものね ... 」

マスター 「よろしいんですか、このままで」

イツカ  「 ... いいんです、このままで ... いつものことですから ... 」

マスター 「いつものこと ...?」

イツカ  「そう ... いつものこと。
      きっと今夜は ... もう来ないと思うんですよね ... 」

マスター 「エ ...?」




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2012年07月17日

épisode / シンデレラ イマージュ part-T -scene:3-






         :サンドリオンの店内 -----       


イツカ  「カクテルって、すごくお洒落な飲み物なんですね」

マスター 「お洒落な飲み物、ですか ... 」

イツカ  「少なくとも、私は今夜ここへ来て、そう思った ...
      生まれて初めてカクテルを飲みながら、マスターとさりげなく会話をしてたら
      そう感じたの ...
      今までに飲んだお酒の中で、一番お洒落な気分になれたみたい ... 」

マスター 「余程気に入って頂けたようですね、そのカクテルを ... 」

イツカ  「そうですね ...
      けれど ... 感覚的に言えば、このお店とマスターのせいかもしれない」

マスター 「この店と私の ...?」

イツカ  「そう ... きっとそうだと思う ...
      このお店もお酒も ... そしてマスターも、全部が私にとってお洒落で最高な
      気分にさせてくれる ... ラッキーな夜かもね ... 今夜は」


         :女、カクテルを一口飲み -----


イツカ  「(少し笑い)ウフフフフ ... 」

マスター 「楽しそうですね ... 」

イツカ  「ううん ... 少し違う」

マスター 「違う?」

イツカ  「私、今 ... 嬉しいの」

マスター 「嬉しい?」

イツカ  「こんな素敵な雰囲気とお洒落な気分で、彼を待てることが ... 」

マスター 「お待ち合わせでしたか ... 」

イツカ  「そう ...
      この世で一番好きな人と、ここで待ち合わせてるんです」

マスター 「この世で一番好きな人、ですか ... 」

イツカ  「(明るく)そう ... そうなんです」

マスター 「可愛い人なんですね ... イツカさんは」

イツカ  「あ、マスター ... 私を名前で呼んでくれた ... 」





タグ:カクテル
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2012年07月16日

épisode / シンデレラ イマージュ part-T -scene:2-






         :サンドリオンの店内 -----       


マスター 「イツカ ... めずらしいお名前ですね ... 」

イツカ  「みんなそう言う ... 変わった名前だって。
      でも私は結構気に入ってるの、このイツカって響きが ... 」

マスター 「そう言われれば ... 何気ない優しさを感じさせる響きですね」

イツカ  「マスターって、素敵な女性ですね ... 」

マスター 「どうしてでしょうか ...?」

イツカ  「今まで私の名前をそんな風に言ってくれた人なんていなかったもの ...
      何だか嬉しいな ...
      あ、やだー、私 ... まだ何もオーダーしてなかったんだ ...
      ごめんなさい、マスター」

マスター 「いいえ、お気になさらないでください」

イツカ  「それがね、マスター ... 私、今夜は絶対にカクテルを飲みたいと思ってるの」

マスター 「カクテルを、ですか?」

イツカ  「そう、カクテルを。
      でも私、カクテルってものを生まれてから今日まで、ただの一度も飲んだこと
      がないの ... だから ... 」

マスター 「だから ... ?」

イツカ  「だから私、いったい何を注文していいのかわからないんです ... 」

マスター 「そうでしたか ... 」

イツカ  「普段はビールかワインを飲むぐらいで、それ以外のものなんて口にしたことが
      なくて ...
      それに、今夜はせっかくこんな素敵なお店に来たんだから、絶対にカクテルを
      と思うんだけど ... 」

マスター 「それではご注文の方は、私にお任せ願えますでしょうか」

イツカ  「そうえ願えればありがたいです ... !」

マスター 「かしこまりました ... それではしばらくお待ちください」


        SE:ゴブレットグラスに3、4個のキューブアイスが入れられ ---
         :そこへ赤ワイン(1/2)が入れられる ---
         :ジンジャエール(1/2)が注がれて ---
         :軽くステアされる -----


マスター  「おまたせいたしました ... どうぞ」


         :グラスが置かれる -----


イツカ  「どうも ... ありがとうございます ...
      ワインの赤がとても綺麗な色してる ...
      マスター ... これ、なんてカクテルなんですか?」

マスター 「はい。それは『キティ』と呼ばれるカクテルです」

イツカ  「キティ ...?」

マスター 「先程、普段飲まれるのが、ビールかワインぐらいとおっしゃられてたので
      ワインの赤をベースにしたカクテルをお作りいたしました ... 」

イツカ  「なるほど ... 」


         :女、カクテルをゆっくりと一口 -----


マスター 「いかがでしょうか ... お気に召されましたでしょうか」

イツカ  「ウン ... 軽い口当たりですごく飲みやすい ...
      赤ワインの香味と色が、ジンジャエールで優しくソフトになってる ... 」

マスター 「お客様にぴったりなカクテルではないかと ... 」

イツカ  「私にぴったりって ...?」

マスター 「キティという、このカクテルの語源の一つが ...
      可愛い子猫という意味なんです ... 」

イツカ  「可愛い、子猫 ... 」





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2012年07月15日

épisode / シンデレラ イマージュ part-T -scene:1-



バーテン(Na)今宵もまた皆様に ...
       マスターから聞かされました
       海岸通りの頃のお話を
       ご紹介したいと思います -----

       それはちょうど ...
       この店の名と同じようなイメージを持つ
       ある一人の女性のお話でした -----






マスター(Na) 午前零時のここサンドリオンには、夜ごと様々な方がグラスを傾けて
      いらっしゃいます ...

      その日の出来事にため息まじりのOLの方や、アバンチュールに浸るミセス
      の方 ... そして甘く危険な香り漂う、静かなる紳士 ...
      それぞれのグラスの中に、様々な想いを浮かべながら、ここカウンター越しに
      ひと時の夜を過ごされています ...

      そんなお客様の中に、たったお一人だけ ...
      いつも同じ時間にお見えになられは、決まってこの時間 ... 
      つまり、午前零時にはお帰りになれらる女性がいらっしゃいます ...
      つい最近、お見えになられるようになったお客様で ...


         :微かな波の音 -----


      白いレスに身を包み、可憐で清楚なイメージを漂わせる、可愛い女性 ...
      そう ... たとえばそれはちょうどシンデレラのような .....


        SE:波の音にまぎれて ---
         :ゆっくりとしたヒールの音 ---
         :その足音に合わせながら -----


女    「来る ... 来ない ... 来る ... 来ない ... 来る ... 来ない ... 」


         :ヒールの音が止まり -----

女    「ン ... ? サ・ン・ド・リ・オ・ン ... ここだ ...
      ということは、ここまでね ...
      中途半端なところで終わっちゃったな ... ま、いいか。
      えーっと(腕時計を見て)... 時間はちょうどいい頃かも。
      よーし ... 」


         :店のドアを開ける -----


女    「こんばんは ... 」

マスター 「いらっしゃいませ、ようこそ ... 」

女    「わぁ ... 感じのいいお店 ...それに色んなお酒が ... すごーい ... 」

マスター 「ありがとうございます ...
      初めていらっしゃったご様子ですね ... こちらへは」

女    「はい ... 今夜が初めてなんです」

マスター 「ようこそいらっしゃいました ... 光栄です」

女    「いいえ、とんでもありません ... こちらこそ光栄です。
      こんな素敵なお店に出会えて」

マスター 「さあどうぞ ... こちらの方へお掛け下さい ... お客様」

女    「お客様って ... ? ああ、わたしのことですか... 」

マスター 「はい ... 」

女    「何だかそんな風に呼ばれるとピンとこないもんですね ... 」

マスター 「そうでしょうか ... 」

女    「私の場合、特にそうなんですよ。お客様だなんて、似合わない ... 」

マスター 「それでは ... どうお呼よびすればよろしいでしょうか ...? お客様場合は」

女    「そうだな ... 単純に名前で呼んでください、名前で」

マスター 「お名前?」

女    「そう、名前で」

マスター 「では失礼ながら ... そのお名前は何と ... ?」

女    「私の名前は ... アキモト、イツカ ... イツカっていうんです」






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