2012年07月31日

épisode / シンデレラ イマージュ part-V -scene:final-






         :サンドリオンの店内 -----


イツカ  「涙3滴分のエッセンス ...
      このカクテルにそんなエピソードがあったなんて ... 素敵だな ... 」

マスター 「気に入って頂けましたでしょうか ... その『キール』を ... 」

イツカ  「そうですね ... 味も悪くなしい、エピソードも良かったし ...
      さすがですね、マスターは ... 」

マスター 「恐れ入ります ... 」

イツカ  「哀しい目をしてたんだね、私きっと ...
      自分こそがまさか、浮気だなんて思ってもみなかったから ...
      ユウにとって、いつも自分が一番だと思ってた ... そうだと信じてたから ... 」

マスター 「イツカさん ... 」

イツカ  「あ、マスター ... 今、名前で呼んでくれたね ... 」

マスター 「あ、はい ... 」

イツカ  「思わず呼んでしまったって感じかな ...
      今夜の私、そんなに哀しい女に見えるのかな ... 」

マスター 「 ... いいえ、そうではなく ... 」

イツカ  「いいのいいの、気にしないでください ... それよりマスター」

マスター 「はい ...?」

イツカ  「私 ... 残念ながら、涙3滴さえも流さなかったね ... 」

マスター 「エ ... ?」

イツカ  「私、今夜ここへ来て ... 今、思ったの ...
      私は彼が ... ユウが一番目 ... 他の誰よりも一番好きだって ...
      多分 ... 私が泣けなかった理由はこれかも ... 」

マスター 「泣けなかった理由、ですか ... 」

イツカ  「そう ... 泣かなかったんじゃなくて、泣けなかった ...
      だからマスター ...
      今夜のこのカクテル、私には少し似合わないのかも知れませんね ... 」


         :女、カクテルを一口飲み ---
         :ゆっくりとグラスを置く -----



マスター(Na) それから彼女はいつものように、午前零時をここで迎えることもなく
      ドアの向こうへ消えて行かれました ...
      灰皿に3本の吸い殻と、グラスに少しカクテルを残して .....

      たった今、生まれ変わったばかりのような笑顔と夢とを抱えて、この店を
      後にされました .....

      やはり彼女は、可憐なシンデレラのイメージを漂わせる女性でした ...
      何故なら ... 今夜彼女は、最後にこんなセリフを残したのですから ...

      「 ... 私はやっぱり ... 待つことしか出来ないみたいです ... 」と -----





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2012年07月30日

épisode / シンデレラ イマージュ part-V -scene:4-







         :サンドリオンの店内 -----

         :女、少し残ったグラスのカクテルを飲み干し -----



イツカ  「マスター、おかわり下さい ... 」

マスター 「かしこまりました」


        SE:フルート型のシャンパングラスが用意され ---
         :よく冷やされた白ワイン(4/5)が注がれる ---
         :そこへクレーム・ド・カシス(1/5)を入れ ---
         :バースプーンでステアされる -----

         :グラスが女の手元に置かれる -----


マスター 「 ... どうぞ」

イツカ  「ありがとう ... 」


         :女、カクテルをゆっくりと一口飲み -----
         :しばらくグラスを見つめている -----


マスター 「お取替えいたしましょうか?」

イツカ  「エッ ...?!」

マスター 「グラスをじっと見つめていらっしゃるので ... 」

イツカ  「ああ ... ごめんなさい ... そんなわけじゃないんです ... 」

マスター 「やはり今夜は少し、いつもと違うようですね ... 雰囲気が」

イツカ  「 ... そうかもしれない ...
      マスターのその発言、認めます ... 自分でもそう思うから ...
      おまけに ... 酔いたいと思って飲んでるのに、なかなか酔えないし ... 」

マスター 「そのカクテルはもともとワインベースのものですから、それほど酔えるような
      お酒ではございません ... 」

イツカ  「マスターったら ... 今夜は酔いたいからって最初に言ってたのに ... 」

マスター 「カクテルは本来、酔うためのものではございません ... 」

イツカ  「酔うためのものじゃない ... 」

マスター 「様々な種類のストレートなお酒に隠された幾つもの味わいを、独自のレシピで
      醸し出し、その美しい色合いや、それぞれのネーミングにまつわるエピソード
      を楽しむものと云われています ...
      ですので ...
      同じ酔い方でもカクテルの場合はアルコールに酔ってしまうのではなく、カク
      テルの魅力 ... すなわちレシピに酔ってしまうのです ... 」

イツカ  「レシピの魅力 ...
      それじゃ、マスター ... 今夜、私にこのカクテルを選んだのは一体 ... 」

マスター 「そのカクテルは『キール』と呼ばれ、白ワインをベースにしてクレーム・ド・
      カシスというリキュールを入れたものです ...
      ですが、このカクテルの故郷であるフランスではキールを作る場合、このクレ
      ーム・ド・カシスは入れ過ぎるとワインの風味が薄れるために、色合いを見な
      がら控えめに入れられます ...
      そこで薄赤い色をしたちょうど良い色のカクテルに仕上げるために、フランス
      では”three tears”が良いと云われているのです ... 」

イツカ  「three tears ...?」

マスター 「そう ... 涙3滴分ということです ... 」

イツカ  「涙3滴分、か ... 」

マスター 「今夜、お客様に似合う涙の数も ...
      ちょうど3滴程がお似合いではないかと ... 」





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2012年07月29日

épisode / シンデレラ イマージュ part-V -scene:3-







         :サンドリオンの店内 -----



イツカ  「あれは6月の終わりだった ...
      それまで何度かすっぽかされてたけど、久しぶりにユウとゆっくり会えた日の
      ことだった ...
      午前中に海洋博物館の前で待ち合わせ ... その日は生憎の梅雨空だったけど
      遠くにユウらしき姿を見つけ、顔を見た瞬間から気分はもうハイテンション。
       ... 久しぶりの真面なデートだったから、私何かとはしゃいじゃって、海洋
      博物館の、どこをどう回って何を見たのか、全然覚えてなかった ...
      ただ ... 以前マスターに、今度は彼を連れて来るって言ったから、その事が
      少し気になってたんだけど、何しろお昼間のことだったんで、ここへは寄れな
      かった ...
      覚えてました? マスター、そのこと」

マスター 「そうですね ... 確かにそうおっしゃられてましたね ... 」

イツカ  「ごめんなさいね、マスター」

マスター 「いいえ ... どんでもございません」

イツカ  「 ... それから南京町で食事して、三宮まで街ブラ ... その頃に少し雨が降り
      出したけど、私は全然気にならなかった ...
      三宮からポートライナーでポートピアランドまで足を延ばして、後はお決まり
      のデートコース ...
      ワーワーキャーキャーで、久しぶりに無邪気な子供の頃に戻ったように、無心
      になって遊んでた ...
      ホント、楽しかったなぁ ... あの時は。
      ... でも、夕暮れ時にはそれまでの小雨が本降りの雨に変わりだし、帰りの
      ポートライナーの窓越しの水滴が、流れるようにガラスの上を伝うのを見て、
      私 ... 妙な淋しさを感じてた ...
      今から思えばあの時の雨が、私の心、そのものだったのかも ... 」


         :女、カクテルをゆっくりと一口 -----


マスター 「心の雨 ... 」

イツカ  「いつもだったら ...
      軽く飲んで食事するのに、その日はそこで別れようなんて言われて ...
      私は納得出来なかったんだけど、どうしても行かなきゃならないからって
      さっさとユウは帰っちゃった ...
      私、いきなり行く宛がなくなっちゃって途方に暮れてたら、突然目の前に女性
      が現れて、一言 ... 「いつまで人の男といちゃついてるつもりなの」って ...
      それで次の瞬間、彼女の右手が私の頬を打った ... 」


         :雨の音 -----


イツカ  「 ... 彼にとっての浮気相手は ... 私自身だったんです ... 」





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2012年07月28日

épisode / シンデレラ イマージュ part-V -scene:2-







         :サンドリオンの店内 -----

        SE:フルート型のシャンパングラスが用意され ---
         :よく冷やされた白ワイン(4/5)が注がれる ---
         :そこへクレーム・ド・カシス(1/5)を入れ ---
         :バースプーンでステアされる -----

         :グラスが女の手元に置かれる -----


マスター 「 ... どうぞ」

イツカ  「どうもです ... 」


         :女、カクテルをゆっくりと一口 -----


イツカ  「 ... やっぱりマスターに任せると安心だな」

マスター 「それは ... どういうことでしょう ...?」

イツカ  「いつも私の気分にピッタリの、カクテルを飲ませてくれるんだもの」

マスター 「そう言っていただければ幸いです ... 」

イツカ  「ホント、すごいと思う ... 感心させられてますよ、いつも。
      差し詰め、カクテルのソムリエって感じで」

マスター 「カクテルのソムリエですか ... 」

イツカ  「(ポツリと)私にもそんな才能があればいいのになぁ ... 」

マスター 「ソムリエの才能がですか?」

イツカ  「 ... ウウン、少し違ったやつで ... ハートの」

マスター 「ハート ...?」

イツカ  「そう ... ハート ... つまりハートのソムリエってところかな」

マスター 「心のソムリエ ... 」

イツカ  「(少し悲しげに)ウフッ ... 何言ってるんだろう、私。馬鹿みたい ... 」


         :女、バッグからタバコを取り出し、口元へ ---
         :ライターで火を点け ---
         :ゆっくりと一口喫う -----


マスター 「初めてですね ... 」

イツカ  「エッ?」

マスター 「ここへいらっしゃるようになって、タバコを口にされたのは ... 」

イツカ  「ああ ... そうかもですね ...
      ついこの間から、また口にするようになったんですよ ... 」

マスター 「やはりそれは、このひと月の間にでしょうか ...?」

イツカ  「そうですね ... このひと月の間にですね ...
      ... もう喫わないって、約束してたんですけど ... 」

マスター 「彼氏と ... ですか?」

イツカ  「 ...エエ」

マスター 「約束を破られたわけですね ... 」

イツカ  「いいえ、違います ... 約束が消えたんです ... 」

マスター 「約束が消えた ...?」

イツカ  「約束した相手が消えたから ... 結局、その約束も一緒に消えちゃったんです。
      ... だから、別に約束を破ったわけじゃないんですよ ...
      そう思いませんか? マスター ... 」

マスター 「彼氏は一体、どうなさったんですか ... 」

イツカ  「単純に ... 私のそばから離れていったんですよ ... 」

マスター 「離れていった ...?」

イツカ  「 ... ウウン、違うな ...
      正確に言えば ... 初めっからユウは、私のそばにいなかった ... 」

マスター 「初めから ...?」





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2012年07月27日

épisode / シンデレラ イマージュ part-V -scene:1-






マスター(Na) 皆様は覚えていらっしゃるでしょうか ... 彼女のことを ...
      その笑顔は、夜空に浮かぶ月のように優しく ...
      その瞳は、夜空にきらめく星のように輝いている ...
      そんな可憐で清楚な可愛いい女性のことを ...

      そう ... 彼女です ...

      午前零時の時の移ろいを、いつもここサンドリオンで迎えることもなく
      今日という名の時の使者と共に、ドアの向こうへ消えて行かれる女性 ...
      白いドレスに身を包んだ ... 例えればそれはちょうど、シンデレラの
      ような女性 ...

      今夜は ... お久しぶりにいらっしゃった、そんな彼女のお話を、皆様に
      ご紹介したいと思います ...

      ... それは、いつもの時間に ...
      その夜、彼女は ...
      いつもとは少し違う雰囲気で、このドアを開けられました -----


         :ドアの開く音 -----      


イツカ  「ご無沙汰してました、マスター」

マスター 「いらっしゃいませ、ようこそ ... 本当に、お久しぶりですね ...」

イツカ  「そう ... かれこれ一か月ぶりぐらいになるかなぁ、ここへ来るのは ... 」

マスター 「そうですね、ちょうどそれくらいになるかと ... 」

イツカ  「そうなると、結構早かったんだな ... 私にとってのこの一か月は。
      (カウンターのイスに腰掛け)よいしょっと」

マスター 「何かとお忙しかったんでしょうか、このひと月は」

イツカ  「そうですね ...
      忙しかったと言うのか ... 忙しくしてたと言うのか ... 複雑な状態だった
      かな ... 身の心も ... 」

マスター 「身も心もって ... お仕事の方、そんなにハードだったんですか?」

イツカ  「ウウン、違う ... 仕事のせいじゃなくて、別のことなんです ... 別の ... 」

マスター 「別のこと、ですか ... 」

イツカ  「 ... ねえ、マスター。
      私、今夜は思いっきり飲みたい気分なんですよ ... 」

マスター 「酔うために、飲まれるんですか?」

イツカ  「そうね ... 酔いたいのかもしれないな ... 」

マスター 「今夜は少しテンションが、いつもと違うようですね ... 」

イツカ  「エッ ...?」

マスター 「お久しぶりにいらっしゃったせいでしょうか ... それとも」

イツカ  「久しぶりだからじゃないでしょうか ...
      だってひと月も経ったんですよ ... ひと月も。
      色んなことがありますよ、それだけの時間が経てば ... 」

マスター 「色んなこと ... 」

イツカ  「まあ、とにかくそんな気分だから、いつもの調子でマスターにお任せで
      お願いしたいんです ... カクテルのオーダーは」

マスター 「かしこまりました ...
      今夜は、酔いたい気分でいらっしゃるんですね ... 」





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