2012年06月05日

épisode / ジン来夢.part:V -scene:2-







         :サンドリオンの店内 -----

        SE:ジッポーのフタを開け閉めする音 ----


ジ ン  「あの時、確かにどうしていいのか分からなかった ...
      自分の知らないところで勝手に始まって、一人歩きしてる事柄に戸惑ってしまって ...
      彼女を信じるとか信じないとか ... そんな次元でしか自分の気持ちを推し量れなかった
      ... それで」

マスター 「あの賭けにゆだねてみた ... 」

ジ ン  「自分の心の居場所をね ...
      でも、無理でしたよ ... やっぱり」

マスター 「やっぱり ...?」

ジ ン  「素直に彼女のことを信じて待つことなんて出来なかった ... 」

マスター 「 ... どうしてでしょうか ...」

ジ ン  「今のボクには、彼女を信じる糧が何もないんですから ... 」

マスター 「糧、ですか ... 」

ジ ン  「そう思いませんか、マスター」

マスター 「難しい質問ですね、それは ...
      ご自分でしか理解出来ないことではないかと ... でも」

ジ ン  「 ... でも?」

マスター 「彼女とお二人で過ごされてきた時の流れが、今は何物にも代えられない糧では
      ないでしょうか ... 」

ジ ン  「それは単なる思い出にしか過ぎませんよ ... 」

マスター 「思い出 ... 」

ジ ン  「そう ... 思い出に心馳せることはジンに酔ってしまうようなもの ...
      酔いから醒めれば空しいものです ...
      そんな儚いものを抱えてても、彼女を信じる糧にはならないでしょ ... 」

マスター 「それは思い出ではなく、軌跡ではないでしょうか ... 」

ジ ン  「軌跡 ...?」

マスター 「思い出はセピア色 ... いつしか色褪せてしまうものかもしれませんが ...
      軌跡というものは、色褪せることはないのでは ... 」

ジ ン  「思い出と軌跡の違い ... 」

マスター 「軌跡には、それまでお二人が過ごされた時が刻まれている ...
      それは思い出というより、歴史ではないでしょうか ... かけがえのない
      お二人の歴史 ... 」

ジ ン  「彼女との歴史 ... 」

マスター 「その歴史を携えることが、本当に儚いことなんでしょうか ... 」


         :男、グラスを見つめている -----
         :やがておもむろに -----


ジ ン  「 ... その歴史の結果の一つが、今の彼女の有様であり、こんなボクの状態
      なんですよ ... 」


マスター 「それは結果ではなく、途中ではないでしょうか ... 今はまだ」

ジ ン  「ここで終わらなければね ... 彼女との歴史が」


         :男、カクテルをゆっくりと一口 -----
         :沈黙 -----


ジ ン  「すみません、マスター ... 」
      今夜どうかしてますね ... 変にマスターに楯突いたりしちゃって ... 」

マスター 「いいえ ... 決してそのようなことは ... 」

ジ ン  「色々とアドバイスしてもらってるのに、肝心の二人がチグハグなことばかり
      やってて ... 」

マスター 「チグハグとは ...?」

ジ ン  「実はこの間、電話があったんですよ ... 彼女から。
      それで今夜、ここへ来てほしいと ... そう云われて ... 」

マスター 「それがどうしてチグハグなんでしょうか ... 」

ジ ン  「彼女とは ...
      もう二度と会わないつもりつもりだったから ... 」

マスター 「 ...!」




 
posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
blogramで人気ブログを分析 にほんブログ村 小説ブログ 脚本・シナリオへ
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。