2012年06月11日

épisode / ジン来夢.part:V -final-






         :サンドリオンの店内 -----



マスター 「どうしてこのクローバークラブが、その女性とのラストカクテルに ...?」

ジ ン  「(微かに笑って)... 今から思えば、軽薄で気障なセリフだったと思いますね。
      でもその反面、真剣だったことも事実なんですから ...
      『このカクテルのレシピには、玉子の卵白を使って黄身は使わない ...
       オレにももう ... キミは必要じゃないんだ』って ... 」

マスター 「キミは必要ない、ですか ... 」

ジ ン  「結構酷い男だったんですよね ... ボクも ... 」


         :男、カクテルをゆっくりと一口 -----
         :腕時計に目をやる -----


ジ ン  「もうこんな時間か ...
      この調子だと、彼女来る雰囲気じゃないですね ... 」

マスター 「お約束は何時に?」

ジ ン  「別に詳しい時間は ...
      ただ日付が変わってすぐのサンドリオンにってことだけで ...
      やっぱり忙しいんじゃないかな ... 別の人とのデートでね ... 」

マスター 「それもやっぱり、以心伝心で伝わってくるものでしょうか ... 」

ジ ン  「 ... 経験から云えば、そうかもですね ... 」

マスター 「経験 ... ?」

ジ ン  「キミは必要じゃなかったから ... 」

マスター 「ケース・バイ・ケース ... キミが必要なカクテルもございますが ... 」

ジ ン  「なるほど ...
      でもこの場合、時間が物語ってます ... 彼女はもう来ないってね」

マスター 「... いいえ
      ここで過ごされる時間は、止まったままかと ... 」

ジ ン  「止まったまま?」

マスター 「ここサンドリオンのあの時計はまだ、12時を指したままです ... 」

ジ ン  「12時 ...?」

マスター 「それは ... 」


         SE:ドアの開く音 -----


マスター 「いらっしゃいませ、ようこそ ... 」

ジ ン  「 ... ?! 」





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2012年06月09日

épisode / ジン来夢.part:V -scene:4-







         :サンドリオンの店内 -----

         :男、グラスに残ったカクテルを飲み干し -----
         :腕時計を見て -----


ジ ン  「(つぶやくように)来ないな、あいつ ...」

マスター 「何か ...?」

ジ ン  「いいえ、何も ...
      それより同じものを下さい ... マスター」


         :グラスを置く -----


マスター 「かしこまりました ... 」


        SE:玉子が割られ -----
         :卵白だけがキューブアイスの入ったシェイカーに入れられる -----
         :ドライジン(1/2)とレモンジュース(1/2個分)そこへ
          グレナディンシロップ(4d)のそれぞれが入れられ -----
         :充分にシェークされる -----
         :カクテルグラス(丸型)が用意され --- 静かに注がれる -----


マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ」


         :男の前にグラスが置かれる -----


ジ ン  「いつ見ても鮮やかですね、マスターのシェーキングは」

マスター 「ありがとうございます ... 」


         :男、ゆっくりとカクテルを一口飲み-----


ジ ン  「 ... 味も一流だし ... 」

マスター 「お気に入りなんですね ... そのカクテルが」

ジ ン  「そう言われれば、そうですね ...
      確かカクテルで一番最初の飲んだのが、このクローバークラブだった ... 」

マスター 「記念すべきカクテルなんですね ... 」

ジ ン  「それに ...
      色んな思い出もありますからね、このカクテルには ... 」

マスター 「思い出ですか ... 」

ジ ン  「ええ ... 苦いのやら甘いのやら、色々とね ... 」

マスター 「そんなカクテルをおーだーされるのには、何か意味でも ...?」

ジ ン  「意味ですか ... そうですね。ないと言えば、嘘になるでしょうね ... 」


         :男、タバコをくわえ --- ジッポーで火を点ける -----
         :ゆっくりと一口喫い -----


ジ ン  「前に ... 本気で一緒に暮らそうとまで考えてた娘がいたんですよ ...
      学生の頃からの付き合いで、結構いい雰囲気だったんですけどね ...
      でも ... 結局その娘とはサヨナラしちゃいました ... ホント、ボクの
      身勝手な理由で ... 」

マスター 「身勝手な理由 ...?」

ジ ン  「そう ...
      ちょうど今の彼女のように、ボクが別の相手を好きになって ... それで ...
      このカクテルはちょうどその娘と別れる時に、ボクが飲ませたもの
      なんですよ ...

マスター 「そんなカクテルを、今夜はご自分で飲まれている ... 」

ジ ン  「自業自得ってやつですかね ...
      今の彼女 ... マスミと知り合って、その娘と別れたんですから ... 」





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2012年06月07日

épisode / ジン来夢.part:V -scene:3-







         :サンドリオンの店内 -----


ジ ン  「実は明日 ... と言っても正確にはもう今日になるけど ...
      ボクの誕生日なんですよ ... 」

マスター 「2月29日、ですね ... 」

ジ ン  「そう ... やっかいな日に生まれたもので、閏年なんですよね、これが。
      だからまともな誕生日が4年に一度しかこない ...
      そんな理由もあって、今の彼女と付き合いだしてから今年が始めて、ボクの
      本当の誕生日を迎える年だったんです」

マスター 「確かに、そのようにお話されてました ... 」

ジ ン  「そんな事言ってたんですか、マスターに」

マスター 「お祝いしてあげたいとも、おっしゃられてましたが ... 」

ジ ン  「あいつ ... それで誕生日になってすぐのサンドリオンに来て欲しいって
      ことだったんでしょうかね ... 」

マスター 「きっとそうでしょうね ... 」

ジ ン  「でも正直なところ ... 何を今更って心境なんですよ ... 」

マスター 「どうしてそう ... ?」

ジ ン  「ボクに連絡してきたその数日後に彼女はまた、男と会ってたんですよ ...

マスター 「何方かがまた、見かけられたのでしょうか?」

ジ ン  「そうですね ... 今度はかなり衝撃的でしたね ... 」

マスター 「衝撃的?」

ジ ン  「そう ... それもかなり強烈でしたね ... 」


          :男、ジッポーのライターのフタを開け -----


ジ ン  「何せボク自身が見たんですからね ... 」


          :男、荒々しくフタを閉める音 -----

          :沈黙 -----


マスター 「それで、もう彼女とはお会いにならないと ... 」


ジ ン  「普通じゃないでしょうか、それが」

マスター 「それでもここの店へいらっしゃった ... 」

ジ ン  「例の以心伝心ってやつでしょうね」

マスター 「以心伝心 ...?」

ジ ン  「ボクも彼女も ... 今夜が最後だと感じてるんですよ ... だから ...
      サヨナラの挨拶をするために、今夜ここへ来たんです ... 」

マスター 「そういうものでしょうか ... 」

ジ ン  「エ ...?」

マスター 「以心伝心のお二人なら ... 言葉以上の何かがあるのではないでしょうか ... 」

ジ ン  「言葉以上の何か ... 」





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2012年06月05日

épisode / ジン来夢.part:V -scene:2-







         :サンドリオンの店内 -----

        SE:ジッポーのフタを開け閉めする音 ----


ジ ン  「あの時、確かにどうしていいのか分からなかった ...
      自分の知らないところで勝手に始まって、一人歩きしてる事柄に戸惑ってしまって ...
      彼女を信じるとか信じないとか ... そんな次元でしか自分の気持ちを推し量れなかった
      ... それで」

マスター 「あの賭けにゆだねてみた ... 」

ジ ン  「自分の心の居場所をね ...
      でも、無理でしたよ ... やっぱり」

マスター 「やっぱり ...?」

ジ ン  「素直に彼女のことを信じて待つことなんて出来なかった ... 」

マスター 「 ... どうしてでしょうか ...」

ジ ン  「今のボクには、彼女を信じる糧が何もないんですから ... 」

マスター 「糧、ですか ... 」

ジ ン  「そう思いませんか、マスター」

マスター 「難しい質問ですね、それは ...
      ご自分でしか理解出来ないことではないかと ... でも」

ジ ン  「 ... でも?」

マスター 「彼女とお二人で過ごされてきた時の流れが、今は何物にも代えられない糧では
      ないでしょうか ... 」

ジ ン  「それは単なる思い出にしか過ぎませんよ ... 」

マスター 「思い出 ... 」

ジ ン  「そう ... 思い出に心馳せることはジンに酔ってしまうようなもの ...
      酔いから醒めれば空しいものです ...
      そんな儚いものを抱えてても、彼女を信じる糧にはならないでしょ ... 」

マスター 「それは思い出ではなく、軌跡ではないでしょうか ... 」

ジ ン  「軌跡 ...?」

マスター 「思い出はセピア色 ... いつしか色褪せてしまうものかもしれませんが ...
      軌跡というものは、色褪せることはないのでは ... 」

ジ ン  「思い出と軌跡の違い ... 」

マスター 「軌跡には、それまでお二人が過ごされた時が刻まれている ...
      それは思い出というより、歴史ではないでしょうか ... かけがえのない
      お二人の歴史 ... 」

ジ ン  「彼女との歴史 ... 」

マスター 「その歴史を携えることが、本当に儚いことなんでしょうか ... 」


         :男、グラスを見つめている -----
         :やがておもむろに -----


ジ ン  「 ... その歴史の結果の一つが、今の彼女の有様であり、こんなボクの状態
      なんですよ ... 」


マスター 「それは結果ではなく、途中ではないでしょうか ... 今はまだ」

ジ ン  「ここで終わらなければね ... 彼女との歴史が」


         :男、カクテルをゆっくりと一口 -----
         :沈黙 -----


ジ ン  「すみません、マスター ... 」
      今夜どうかしてますね ... 変にマスターに楯突いたりしちゃって ... 」

マスター 「いいえ ... 決してそのようなことは ... 」

ジ ン  「色々とアドバイスしてもらってるのに、肝心の二人がチグハグなことばかり
      やってて ... 」

マスター 「チグハグとは ...?」

ジ ン  「実はこの間、電話があったんですよ ... 彼女から。
      それで今夜、ここへ来てほしいと ... そう云われて ... 」

マスター 「それがどうしてチグハグなんでしょうか ... 」

ジ ン  「彼女とは ...
      もう二度と会わないつもりつもりだったから ... 」

マスター 「 ...!」




 
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2012年06月03日

épisode / ジン来夢.part:V -scene:1-






      長針短針 ... 彼と彼女 ---
      長針の刻む時の調べは
      短針が織りなす時間の模様 ---

      1秒 ... 1分 ... 1時間と
      過ぎては消えゆく時の運命 -----
      戻らない時間の流れを見送るよりも
      刹那に過ぎ行く瞬間を見つめている ----

      彼と彼女の二人の時間は
      今はまだほんの少し .....


         :サンドリオンの店内 -----

        SE:シェーカーで ---- シェークされる音
         :少し大きめのカクテルグラスが用意され
         :静かに注がれる -----


マスター 「お待たせ致しました ... どうぞ」

ジ ン  「どうも ... (軽く一口飲み)久しぶりのジンベースだな ... 」

マスター 「そうでしたか ... 」

ジ ン  「あの日、マスターに奨めてもらったマルガリータ以来、しばらくジンを口に
      してなかったもので ... 」

マスター 「それは ... 私の責任ですね ... 」

ジ ン  「とんでもない、と言いたいところだけど ... 実際、マスターのお蔭でジン以外の
      ベースでカクテルを口にするようになった ... でも感謝してますよ、ボクは」

マスター 「感謝 ... ?」

ジ ン  「そう ... ジンにこだわらくなったことで、今までとは少し違う意味でジンを
      味わえるようになった ... お酒にも、そして自分自身にも ...

マスター 「スピリッツとスピリットですか ... 」

ジ ン  「そういうことですね ... 」


         :男、カクテルをゆっくりと一口 -----


マスター 「いかがでしょうか ... お久しぶりのジンベースのカクテルのお味は」

ジ ン  「いいですね、やっぱりジンは」

マスター 「でも、クラブスタイルのカクテルをご注文されたのは、確か初めてでは ...?」

ジ ン  「そうです ...
      もともとこのカクテルは、食前のオードブルやスープの代わりに出されるもの
      ... それを出し抜けにオーダーするなんて ... センスないですね、ボクも」

マスター 「いいえ、決してそんなことは ... お好きな時に、ご自分で飲みたいカクテルを
      チョイスできる方は、素敵だと思いますが ... 」

ジ ン  「飲みたいカクテルをチョイスか ...
      マスターにそう云ってもらえると、救われますね ... 」


         :男、タバコを取り出し、ジッポーで火をつける -----
         :ゆっくりとタバコを喫いながら -----


ジ ン  「ところでマスター ...
      この間の、このジッポーでの賭けのことなんだけど ... 」

マスター 「もう一度、試されるおつもりだとか ... 」

ジ ン  「いいえ ...
      それより、なかったことにしたいんですよ ... あの賭けを」

マスター 「なかったことに?」





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