2012年06月29日

épisode / ジン来夢.part:W -final-






         :サンドリオンの店内 -----



ジ ン  「確かにそうかも知れませんね ...
      二ヶ月前 ... ここへ来る途中でケンカ別れさえしなければ、今頃この指輪は
      彼女の薬指に収まってたものなんですよね ...
      でも ... あれから時間は流れて、二人の状況も変わった ...
      今更、この指輪は ... 」

マスター 「それでもそのシルバーリングは、あの時のまま、彼女の薬指のサイズである
      お客様の小指で輝いている ...
      それは紛れもない、心の表れではないでしょうか ... 」

ジ ン  「あの時のまま ... 」


         :男、ゆっくりとカクテルを飲み干し -----


ジ ン  「マスター、同じものを ... 」

マスター 「 ... かしこまりました」


         SE:シェーカーにキューブアイスが入れられる -----
          :そこへドライ・ジン(1/2)、クレーム・ド・バイオレット(1/4)
           レモンジュース(1/4)が入れられ --- シェイクされる
          :カクテルグラスが用意され ---
          :静かに注がれる -----


マスター 「どうぞ」

ジ ン  「どうも ... 」

マスター 「いかがでしょう ...
      やはり先程と同じく、ブルーな彩りをしたカクテルでしょうか ... 」

ジ ン  「 ... いや 気のせいか、少しだけ違った色合いに見えますね ... 」

マスター 「それは何色でしょうか ...?」

ジ ン  「とても綺麗で透き通った ... 薄い紫ですね ... 」

マスター 「変わりましたね ... 心の色が ... 」

ジ ン  「 ... ボクも彼女も所詮、身勝手な者同士なんですよね ... 」

マスター 「時として ... 人は皆、身勝手なもの ... 以前、何方かがそんなセリフを
      おっしゃってたのを聞いたことがあります ... 」

ジ ン  「人は皆、身勝手なもの ... 」


         :波の音 -----


ジ ン(Na) そんなマスターの言葉を最後に、サンドリオンを後にした ...
      ふと見上げると ... 青かったはずの月の色が、金色に輝いて見えた ...
      真夜中の月の色は心の色のバロメーターなんだろうか ...?
      そんなことを思いながら気がつくと、オレは携帯電話を手にしてた ....


         :アドレスから検索をし、コールオン -----
         :しばらく続く呼び出し音 -----

         :やがて -----


ジ ン  「----- あ、オレ ... ジンだ。
      ----- 遅くにすまない ....
      ----- それより ... 来週の金曜日、あの店に来てくれ ... 待ってるから。
      ----- そう、あの店だよ ... バール・サンドリオンだ ...」





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2012年06月28日

épisode / ジン来夢.part:W -scene:4-






         :サンドリオンの店内 -----


ジ ン  「以前、マスターに話したと思うんですが ...
      マスミと知り合って間もない頃、ボクには他に付き合ってる彼女がいた ...
      その子とは本気で一緒に暮らそうとまで考えてたのに ...
      でも、日増しにマスミに惹かれていく自分に歯止めが効かずに、結局
      その子とは別れてしまった ... 身勝手な理由で ... 」

マスター 「確か ... キミはいらない ... クローバークラブのお話でしたね ... 」

ジ ン  「そんな経緯を、彼女がボクの友達から聞いて知った時 ... プレゼントして
      くれたのが、このジッポーだったんですよ ...
      確かクリスマスの夜だったっけ ...
      『私がジンの心に火を点けたのなら ... これからその火が消えかけた時には
       このライターで火を点けてほしい』と ... 」

マスター 「そうでしたか ... 」

ジ ン  「だから以前に、マスターとのジッポーの賭けにもチャレンジしてみた ... 」

マスター 「でも、あの時は火が点かなければならない賭けでしたが ... 」

ジ ン  「あの場合 ... 肝心だったのは、火が点くことよりも、このジッポーのライター
      そのものがすべてだったんですよ ... 」

マスター 「ライターそのもの、ですか ... 」


        SE:男、ジッポーのフタを開け -----


ジ ン  「そんな、このジッポーのライターの火が点かないんだから ...
      駄目ですよ、僕たちはもう ... 」


        SE:フタを閉める音 -----


マスター 「そうでしょうか ... 」

ジ ン  「エ ... ?」

マスター 「おっしゃるように、そのジッポーがもし、あくまでも彼女の気持ちの表れだと
      したら、ご自分の気持ちは一体何で表現されるのでしょうか ... 」

ジ ン  「自分の気持ち ... 」

マスター 「それでもやはりそのライターが、お客様ご自身のすべてなんでしょうか ... 」

ジ ン  「自分のすべて ... 」


         :男、ジッポーのフタ開け --- そして閉める


ジ ン  「自分には何もないかもしれませんね ... 気持ちの表れなんて ... 」

マスター 「失礼ながら、私には見えるのですが ... 今も変わらない彼女に対するお客様の
      気持ちが ... 」

ジ ン  「それって ... 」

マスター 「まだその小指にある ... リングの輝きの中に ... 」





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2012年06月27日

épisode / ジン来夢.part:W -scene:3-






         :サンドリオンの店内 -----

        SE:シェーカーにキューブアイスが入れられる -----
         :そこへドライ・ジン(1/2)、クレーム・ド・バイオレット(1/4)
          レモンジュース(1/4)が入れられ --- シェイクされる
         :カクテルグラスが用意され ---
         :静かに注がれる -----


マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ」


         :グラスが置かれる -----


ジ ン  「どうも。
      ... 微かにスミレの香りがするんですね、このカクテルは」

マスター 「クレーム・ド・バイオレットという、リキュールが醸し出す香りです」

ジ ン  「バイオレット・リキュールか ...
      それで名前のわりには紫色したカクテルなんだ」

マスター 「そうですね ...
      確かに『ブルームーン』と言う名前でありながらも、透明感のある薄い
      紫色したカクテルですね ...
      しかしその神秘的な透明感のある薄い紫色が、時には何色に見えるかで
      心の色がわかるとも言われています ... 」

ジ ン  「さすがマスター ... 博学ですね」


         :ジン、カクテルを見つめながら -----


ジ ン  「そうか ... 心の色か ... 」

マスター 「いかがですか ...? 今、その目の前にあるカクテルは、クリアな薄い
      紫色に見えるでしょうか ...? それとも ... 」

ジ ン  「そう言われると ... 満更、ブルーに見えないこともないかな ... 」

マスター 「それこそが今のご自分の、心の色と言うわけです ... 」

ジ ン  「ブルー ... か」


         :男、カクテルをゆっくりと一口 -----

         :沈黙 -----


ジ ン  「(ポツリと)彼女来ました? あれから ... 」

マスター 「しばらくお見えには ... 」

ジ ン  「しばらくって ... じゃ、あれから来なかったんだ、マスミ ... 」

マスター 「そういうことになりますね ... 」

ジ ン  「そうか ... そうなんだ ... 」

マスター 「でもついこの間、ふらりとお見えになりました ... お久しぶりに。
      ... ちょうど、今夜のお客様のように ... 」

ジ ン  「エッ ...?」

マスター 「やはりブルーな雰囲気を漂わせて ... 」

ジ ン  「 ... そうですか」


         :男、タバコを取り出し ---
         :ジッポーで火をつける --- が、火が点かない ---
         :何度か試すが、やはり火が点かない ---
         :マスター、ライターの火を差し出す -----


マスター 「どうぞ」

ジ ン  「どうも ... 」

マスター 「今夜はジッポーの調子が良くないようですね ... 」

ジ ン  「マスターとのあの賭け以来、二度目かな ... 火が点かなかったのは」

マスター 「そうなんですか ... 」

ジ ン  「でも ... いよいよこれで終わりですね、やっぱり ... 」

マスター 「やっぱり ...?」

ジ ン  「このジッポー ... 実は彼女 ... マスミからもらったものなんですよ ... 」





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2012年06月26日

épisode / ジン来夢.part:W -scene:2-






          長針短針 ... 彼と彼女 -----
          長針がそこから動かなくなれば
          短針もそこから動けなくなる -----
          気まぐれなのか諦めなのか
          それぞれがそれぞれのスタンスで時を見送る -----
          どちらかが少しでも進まなければ
          時の歴史はストップモーション -----
          彼と彼女の二人の時計は
          今はまだほんの少し -----


         :サンドリオン --- ドアの開く音


マスター 「いらっしゃいませ ... 」


ジ ン  「こんばんは、マスター ... 」


マスター 「お久しぶりですね ... ようこそ」

ジ ン  「ホント、ご無沙汰してましたね ... かれこれひと月近くなるかな ... 」

マスター 「確かそのように ... またお仕事の関係で、どこかへ行かれてたんですか?」

ジ ン  「いいえ ... 今度はそんなんじゃなかったんです ... マスターには申し訳ないん
      ですが、単にここへ足が向かなかっただけなんですよ ... ただそれだけ ... 」

マスター 「そうでしたか ... 」

ジ ン  「すみません ... 」

マスター 「いいえ、とんでもない ... お気にならさず。
      それでもちゃんとこうして、またお見えになってくださったのですから ... 」

ジ ン  「そう言ってもらえると、救われます ... 久しぶりに来た甲斐があったってもん
      です」

マスター 「では、そのお久しぶりのご注文は、何になさいますか ...?」

ジ ン  「そうだな ... 今夜の雰囲気にぴったりなカクテルがいいな ... 」

マスター 「今夜の雰囲気、ですか ... 」

ジ ン  「そう ...
      実はここへ来る道すがら、何気に今夜の月の色がやけに青く見えたんですよ ...
      やけにね ... 今まであんなに青くて淋しい色した月なんて見たことなかった ...

マスター 「青くて淋しい色の月 ... 」

ジ ン  「妙に印象に残ってるんですよ、その月の色が ...
      だから、そんな雰囲気にぴったりのやつがいいかなと ... 」

マスター 「かしこまりました ... それでは、ブルームーンがよろしいかと ... 」

ジ ン  「ブルームーン ... 」

マスター 「確か ... キミはいらない ... クローバークラブのお話でしたね ... 」

ジ ン  「そんな経緯を、彼女がボクの友達から聞いて知った時 ... プレゼントして
      くれたのが、このジッポーだったんですよ ...
      確かクリスマスの夜だったっけ ...
      『私がジンの心に火を点けたのなら ... これからその火が消えかけた時には
      このライターで火を点けてほしい』と ... 」

マスター 「そうでしたか ... 」

ジ ン  「だから以前に、マスターとのジッポーの賭けにもチャレンジしてみた ... 」

マスター 「でも、あの時は火が点かなければならない賭けでしたが ... 」

ジ ン  「あの場合 ... 肝心だったのは、火が点くことよりも、このジッポーのライター
      そのものがすべてだったんですよ ... 」

マスター 「ライターそのもの、ですか ... 」


        SE:男、ジッポーのフタを開け -----


ジ ン  「そんな、このジッポーのライターの火が点かないんだから ...
      駄目ですよ、僕たちはもう ... 」


        SE:フタを閉める音 -----


マスター 「そうでしょうか ... 」

ジ ン  「エ ... ?」

マスター 「おっしゃるように、そのジッポーがもし、あくまでも彼女の気持ちの表れだと
      したら、ご自分の気持ちは一体何で表現されるのでしょうか ... 」

ジ ン  「自分の気持ち ... 」

マスター 「それでもやはりそのライターが、お客様ご自身のすべてなんでしょうか ... 」

ジ ン  「自分のすべて ... 」


         :男、ジッポーのフタ開け --- そして閉める


ジ ン  「自分には何もないかもしれませんね ... 気持ちの表れなんて ... 」

マスター 「失礼ながら、私には見えるのですが ... 今も変わらない彼女に対するお客様の
      気持ちが ... 」

ジ ン  「それって ... 」

マスター 「まだその小指にある ... リングの輝きの中に ... 」





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2012年06月25日

épisode / ジン来夢.part:W -scene:1-






        SE:微かな波の音 --- 海岸通りをゆっくりと歩く男
         :缶ビールのプルリングを開ける音 ---
         :ドアの開く音 ---
         :ビールを脱ぎ一気に半分ほど飲み干す ---


ジ ン  「(深いため息)フゥーッ ... 」


         :タバコを取り出し、ジッポーで火をつける -----
         :ゆっくりとタバコを一口喫う -----


ジ ン  (Na)今年になってから3度目のデートでマスミと喧嘩別れをした ...
       ささいなことが原因で、呆気ない出来事って感じだった ...
       でもその事がキッカケで、自分の気持ちの中で占める彼女の
       ウェイトの大きさに気付かされた ...


         :男、ゆっくりとタバコを一口 -----


       最初の頃は、他愛もないことと高を括り ...
       --- オレが悪かったんだから ... 素直に謝りさえすれば何とかなるだろうと
       そう思ってた。
       でも今回は、いつものようにそうあっさりとは戻れなくなっていた ...

       ... 何故ならそれは ... 彼女の心が、別の男を捕らえてたから ...

       あの時に渡すはずだったこの小指のリングも、今はその行き先を
       見失ったようで、今はただ淋しく光るだけ ...


         :ウミネコの鳴き声 -----


       彼女への想いは、あの店のマスターとのジッポーの賭けにゆだねるほど
       彷徨っていた ...

       そんな最中、マスミから連絡があった ---

       今週の金曜日 ... あの店で会いたいと ... その日は4年に一度の
       オレの誕生日 ... 2月29日 ...


         :男、残ったビールをゆっくりと飲み干す -----


       でも ... その連絡があった数日後 ... オレは見てしまった ...
       彼女が別の男といるところを ....


         :男、空になったビールの缶を握りつぶす -----


       様々な思いをめぐらせたまま迎えた約束の日 ...
       約束の店サンドリオンのカウンターにいたオレの心には、彼女に
       伝えるための、たった一言のセリフしか浮かばなかった ...
       それは ...


         :遠くで響く、汽船の音 -----  


       あの日 ...
       カクテルを二杯飲み、タバコを5本喫って待った、12時を差したままの
       時計があるサンドリオンというあの店に ...
       彼女は来なかった ...


         :ジッポーで火をつける音 -----


       マスミと会わなくなって、もう二ヶ月 -----






    
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