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:サンドリオンの店内 -----
:静かに流れるジャズ -----
マスミ 「ジンとは全然違うタイプの人なんですよ、彼は ... 」
マスター 「だから魅かれていった ... 」
マスミ 「新鮮だった ...
ジンで満たされない心の隙間を、彼が満たしてくれるようで ... 」
マスター 「それは願望でしょうか ... それとも ... 希望?」
マスミ 「微妙なニュアンアスね ... でも多分、今の私にとっては、願望なのかも
知れません ...
所詮、都合のいいように解釈してるんですね、私は ...
自分勝手に、相手のことを ... 」
マスター 「そういういセリフを口にされると、本当に孤独(ひとり)になってしまいます」
マスミ 「... いつもの私らしくないですね、なんか今 ... 」
マスター 「少なくとも今は ... 酔っていらっしゃるかと ... 」
マスミ 「酔ってる ... そう、確かに今はジンよりあの人のことが ... 」
マスター 「本当にそうなんでしょうか ... 」
マスミ 「 ... 」
マスター 「本当に ... ?」
マスミ 「 ... 自分でもよくわからない ... 」
マスター 「それは戸惑い ... それとも ... 」
マスミ 「 ... それとも?」
マスター 「手探りでしょうか」
マスミ 「手探り ...?」
マスター 「ご自分の居場所がわからなくなった ... そのための心の揺らぎ ... 」
マスミ 「 ... そうかも知れませんね ... 」
:女、ゆっくりとグラスのカクテルを一口 -----
マスミ 「もしかしたら ... 」
マスター 「 ... はい?」
マスミ 「私の口には少し、辛すぎるかのな、このカクテル ... 」
マスター 「今夜は特に、そうかも知れませんね ... 少し、ドライですから ... 」
マスミ 「(軽く笑って)マスターにはかないません ... 」
:女、何気なく店の時計を目にして ...
マスミ 「マスター ... あの時計、遅れてませんか ... ?」
マスター 「はい、確かに ... 」
マスミ 「エッ?」
マスター 「正確にはあの時計は、いつもこの時間を差したままなんです ... 」
マスミ 「12時のまま ...?」
マスター 「はい ... 昨日と今日が、生まれ変わる時間に ... 」
マスミ 「生まれ変わる時間 ... 」
マスター 「ちょうどそれは ... 時計の長針と短針が、ピッタリと重なる瞬間ですね ... 」
マスミ 「そうなると ... 私の心の時計も、今は少し進んでいるのかな ... 」
マスター 「 ... 時を刻むことが全ての時計でさえ、リズムを狂わすことがあるのですから
人の心のリズムなんて、もろいのだと思います ... 」
マスミ 「心のリズム、か ... 」