2012年05月05日

épisode / パール来人.part:U -scene:4-






         :サンドリオンの店内 -----


マスミ  「ごめんなさい、マスター。変なことばかり言って ... 今夜は少し酔ってる
      のかな、私 ... 」

マスター 「いつもより少しペースが早いぐらいで、いつもと同じかと ... 」

マスミ  「そう言われればそう ... 私、今日はこれで二杯目なんだ」

マスター 「今夜ご注文されたカクテルはワインべースのものですから、そういう意味では
      いつもと雰囲気が違いますが ... 」

マスミ  「ああ、これね ... 実はこれ、今日初めて飲むカクテルなんです」

マスター 「そうでしたか ... 」

マスミ  「スッキリした口あたりがイイって聞いてたけど、結構ドライなんですね ...
      このカクテルは」

マスター 「そうですね。
      シェリー風味の白ワインと、ドライヴェルモットの組み合わせが、シャープな
      口あたりを演出していますので ... 」

マスミ  「今までに味わったことのない不思議な味がする ... 気に入っちゃったな ... 」


         :女、カクテルをゆっくりと一口 -----


マスター 「味もさることながら、バリエーションの多いカクテルなんです、このカクテルは」

マスミ  「バリエーション?」

マスター 「はい ...
      例えば、このカクテルからレモンピールを省けば、『バンブー』と呼ばれる
      まさにその名の通り、竹を割ったような味わいのカクテルに変わってしまい
      ドライヴェルモットの代わりにスィートベルモットを使えば『アドニス』と
      いうカクテルにその姿を変えてしまう ... 本当に不思議なカクテルなんです」

マスミ  「私も変われるかな ... ちょっとしたエッセンスがあれば。
      ねえ、どう思います? マスター」

マスター 「カクテルの場合、本質的なことは変わりませんが ...
      どうでしょうか、その場合は ... 」

マスミ  「アムール ... 愛、か ... 少しキザな名前ですね、このカクテルは」

マスター 「だから移ろいやすく ... その姿を変えるのかも知れませんね、このカクテルは」

マスミ  「移ろいやすく ... か」


         :女、カクテルグラスを見つめている -----

         :つかの間の沈黙 -----


マスター 「どうかされましたか ...?」

マスミ  「いえ、何でもないです ... 」

マスター 「グラスに何か?」

マスミ  「いいえ、そんな意味でグラスを見つめてた訳じゃないんです ...
      ただこのカクテルは ... 」

マスター 「カクテルが ...?」

マスミ  「今夜あの人が、口にしてたカクテルなんです ... 」





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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