2012年05月07日

épisode / パール来人.part:U -final-






         :サンドリオンの店内 -----

         :静かに流れるジャズ -----


マスミ  「ジンとは全然違うタイプの人なんですよ、彼は ... 」

マスター 「だから魅かれていった ... 」

マスミ  「新鮮だった ...
      ジンで満たされない心の隙間を、彼が満たしてくれるようで ... 」

マスター 「それは願望でしょうか ... それとも ... 希望?」

マスミ  「微妙なニュアンアスね ... でも多分、今の私にとっては、願望なのかも
      知れません ...
      所詮、都合のいいように解釈してるんですね、私は ...
      自分勝手に、相手のことを ... 」

マスター 「そういういセリフを口にされると、本当に孤独(ひとり)になってしまいます」

マスミ  「... いつもの私らしくないですね、なんか今 ... 」

マスター 「少なくとも今は ... 酔っていらっしゃるかと ... 」

マスミ  「酔ってる ... そう、確かに今はジンよりあの人のことが ... 」

マスター 「本当にそうなんでしょうか ... 」

マスミ  「 ... 」

マスター 「本当に ... ?」

マスミ  「 ... 自分でもよくわからない ... 」

マスター 「それは戸惑い ... それとも ... 」

マスミ  「 ... それとも?」

マスター 「手探りでしょうか」

マスミ  「手探り ...?」

マスター 「ご自分の居場所がわからなくなった ... そのための心の揺らぎ ... 」

マスミ  「 ... そうかも知れませんね ... 」


         :女、ゆっくりとグラスのカクテルを一口 -----


マスミ  「もしかしたら ... 」

マスター 「 ... はい?」

マスミ  「私の口には少し、辛すぎるかのな、このカクテル ... 」

マスター 「今夜は特に、そうかも知れませんね ... 少し、ドライですから ... 」

マスミ  「(軽く笑って)マスターにはかないません ... 」


         :女、何気なく店の時計を目にして ...


マスミ  「マスター ... あの時計、遅れてませんか ... ?」

マスター 「はい、確かに ... 」

マスミ  「エッ?」

マスター 「正確にはあの時計は、いつもこの時間を差したままなんです ... 」

マスミ  「12時のまま ...?」

マスター 「はい ... 昨日と今日が、生まれ変わる時間に ... 」

マスミ  「生まれ変わる時間 ... 」

マスター 「ちょうどそれは ... 時計の長針と短針が、ピッタリと重なる瞬間ですね ... 」

マスミ  「そうなると ... 私の心の時計も、今は少し進んでいるのかな ... 」

マスター 「 ... 時を刻むことが全ての時計でさえ、リズムを狂わすことがあるのですから
      人の心のリズムなんて、もろいのだと思います ... 」

マスミ  「心のリズム、か ... 」





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2012年05月05日

épisode / パール来人.part:U -scene:4-






         :サンドリオンの店内 -----


マスミ  「ごめんなさい、マスター。変なことばかり言って ... 今夜は少し酔ってる
      のかな、私 ... 」

マスター 「いつもより少しペースが早いぐらいで、いつもと同じかと ... 」

マスミ  「そう言われればそう ... 私、今日はこれで二杯目なんだ」

マスター 「今夜ご注文されたカクテルはワインべースのものですから、そういう意味では
      いつもと雰囲気が違いますが ... 」

マスミ  「ああ、これね ... 実はこれ、今日初めて飲むカクテルなんです」

マスター 「そうでしたか ... 」

マスミ  「スッキリした口あたりがイイって聞いてたけど、結構ドライなんですね ...
      このカクテルは」

マスター 「そうですね。
      シェリー風味の白ワインと、ドライヴェルモットの組み合わせが、シャープな
      口あたりを演出していますので ... 」

マスミ  「今までに味わったことのない不思議な味がする ... 気に入っちゃったな ... 」


         :女、カクテルをゆっくりと一口 -----


マスター 「味もさることながら、バリエーションの多いカクテルなんです、このカクテルは」

マスミ  「バリエーション?」

マスター 「はい ...
      例えば、このカクテルからレモンピールを省けば、『バンブー』と呼ばれる
      まさにその名の通り、竹を割ったような味わいのカクテルに変わってしまい
      ドライヴェルモットの代わりにスィートベルモットを使えば『アドニス』と
      いうカクテルにその姿を変えてしまう ... 本当に不思議なカクテルなんです」

マスミ  「私も変われるかな ... ちょっとしたエッセンスがあれば。
      ねえ、どう思います? マスター」

マスター 「カクテルの場合、本質的なことは変わりませんが ...
      どうでしょうか、その場合は ... 」

マスミ  「アムール ... 愛、か ... 少しキザな名前ですね、このカクテルは」

マスター 「だから移ろいやすく ... その姿を変えるのかも知れませんね、このカクテルは」

マスミ  「移ろいやすく ... か」


         :女、カクテルグラスを見つめている -----

         :つかの間の沈黙 -----


マスター 「どうかされましたか ...?」

マスミ  「いえ、何でもないです ... 」

マスター 「グラスに何か?」

マスミ  「いいえ、そんな意味でグラスを見つめてた訳じゃないんです ...
      ただこのカクテルは ... 」

マスター 「カクテルが ...?」

マスミ  「今夜あの人が、口にしてたカクテルなんです ... 」





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2012年05月03日

épisode / パール来人.part:U -scene:3-






         :サンドリオンの店内 -----


マスミ  「飲酒運転ですか ... 鋭い比喩ですね、マスター」


         :女、少し残ったカクテルをゆっくりと飲み干し -----


マスミ  「同じもの、いただけますか」

マスター 「かしこまりました ... 」


         :ミキシンググラスに同じカクテルベースが注がれ、ステアされる ---


マスミ  「 ... 以前、仲のいい友達が結婚するって言ってたんですよ。
      もう3年ほど付き合ってたかな、あの二人 ... 」


         :グラスにカクテルが注がれる -----


マスミ  「周りの誰もが二人は絶対にゴールインすると思ってたし、彼は当然のこと
      ながら、彼女もいつからか、多分自分はこの人と一緒になるんだろうって
      そう思ってたらしんです ...」


         :レモンピールが加えられ -----


マスター 「他人事のような気持ちだったんですね、そのお友達は」

マスミ  「そうですね ... そうだったかもしれません」

マスター 「失礼致します ... どうぞ ... 」


         :グラスが置かれる -----


マスミ  「どうも ...(軽く一口飲み)
      ... でも、彼女はそれまでの成り行きで、そう感じてたようなんです」

マスター 「成り行き?」

マスミ  「結婚に至るまでのプロセス ... 雰囲気が彼女の気持ちにそう感じさせてた ...
      この人と一緒になるんだろうなって」

マスター 「惰性とは違うものですね ... それは」

マスミ  「そうだと思います ...
      だから、彼との結婚を真面目に考えだして、悩んだんだと思う ... 」

マスター 「どうしてでしょうか ... 」

マスミ  「彼自身のことよりも、結婚という雰囲気に酔ってる自分に気がついたんですよ
      彼女は ... 」

マスター 「酔っている自分 ... 」

マスミ  「彼と過ごす時間より、結婚を意識したその瞬間から始まったプロセスを過ごす
      時間の方が、彼女の心を捉えたんですよね ...
      結局彼女は、その甘い時間に酔ってしまったみたいで ... 」

マスター 「その彼女にとって憧れだったんでしょうか、そんな時間の流れが ... 」

マスミ  「かもしれません ...
      彼女はそのことに気がついてから、もう一度彼の存在を自分自身に問い
      かけたんです ... 」

マスター 「その答えは ... 」

マスミ  「 ... ええ ... それは、彼の一言で答えが決まったようでした」

マスター 「彼の一言?」

マスミ  「成り行きなんだよ、オレとお前は ... そう言われて彼女は決心した
      らしいんです」

マスター 「それで、お二人は ... 」

マスミ  「結局、一緒にはなりませんでした ... 」

マスター 「そうですか ... 」

マスミ  「マスター ... 」

マスター 「はい?」

マスミ  「それって ... 彼女もやっぱり、飲酒運転だったんでしょうか ... 」





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2012年05月01日

épisode / パール来人.part:U -scene:2-






         :サンドリオンの店内 ---

         :ミキシンググラスにカクテルベースが注がれる -----
         :ドライシェリー(2/3)とドライベルモット(1/3)がステアされ
          そこへオレンジビタース(1ds)一振りされる -----
         :レモンピールが加えられ --- グラスが置かれる


マスター 「お待たせ致しました ... どうぞ」

マスミ  「どうも ... 」


         :女、カクテルをゆっくりと一口 -----


マスミ  「その後、連絡ありました ... ? 彼から」

マスター 「いいえ、ございませんが ... 」

マスミ  「それじゃ、ここへも?」

マスター 「そうですね。ここしばらくはお見えになってませんね」

マスミ  「そうですか ... 」

マスター 「そのご様子だと ... まだお会いになられてないのですね ... 」

マスミ  「最近は、連絡もこなくなって ... 」

マスター 「気がかりなんですね ... 」

マスミ  「別に、そういう訳じゃないんですよ ... ただ、どうしてるのかなって
      そう思っただけで ... 」

マスター 「いずれにしましても、一度ご連絡されてみては ...?」

マスミ  「とんでもない。私から連絡なんて、考えられない ...
      いいんですよ、ほっとけば。... どうせ強気でいるんだから」

マスター 「よくわかりませんが ... 」

マスミ  「エッ?」

マスター 「どちらが強気なんでしょうか、本当は ... 」

マスミ  「 ... もう ... マスターったら ... 」


         :女、再びカクテルをゆっくりと一口 -----


マスミ  「 ... マスター ... 実は私 ... 」

マスター 「 ... どうかなさいましたか?」

マスミ  「さっきまで一緒だったんです ... 」

マスター 「 ... エ?」

マスミ  「 ... ある男性と ... 」

マスター 「それは ... 別の男性ということ ... 」

マスミ  「そうですね ... この間、話してた人です ...
      軽く飲みに行ってから食事をして、六甲の方へドライブ ...
      そこからここまでその人に送ってもらったんです ... 」

マスター 「そうでしたか ... 」

マスミ  「彼は話題が洒落てて、さらりと会話の中にいろんな話を盛り込んで
      それでいて全然おしゃべりって感じもしないし ... それに ... 」

マスター 「それに ...?」

マスミ  「いつも私を見てくれてて、さりげなく気配りしてくれる ...
      大人なんだなって ... そう思うんです ... 」

マスター 「大人 ...?」

マスミ  「だって、ホントに優しいんですよ、彼は」

マスター 「優しいから、大人なんでしょうか ...?」

マスミ  「エッ?」

マスター 「 ... 飲酒運転ですね」

マスミ  「マスター ... 堅いこと言わないでくださいよ ... 彼、そんなに飲んで
      運転してたわけじゃないんですから。ほんの少しだけ」

マスター 「その方ではなくて ... 」

マスミ  「私は運転なんかしてませんよ、マスター」

マスミ  「いいえ ... 心の飲酒運転です」





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