2012年05月19日

épisode / ジン来夢.part:U -final-






         :サンドリオンの店内 -----


ジ ン  「久しぶりにここへ来たのに、すっかり湿った話ばかりで ... 申し訳ないです」

マスター 「いいえ ... お気になさらないでください」

ジ ン  「 ... 正直なところ、彼女のことがよく見えないんです、今は ...
      最低な女だと ... そう思ったりもして ... 」

マスター 「本気なんでしょうか? そのセリフは ... 」

ジ ン  「そうですね ...
      何もかもが知らないところで、勝手に起こってるんですから ...
      そう思うのも、当然でしょう ... 」

マスター 「そういうものでしょうか ... 」

ジ ン  「いいんですよ、もう ... 」

マスター 「そんな時は、ご自分から結論を出されない方が、いいのでは ... 」

ジ ン  「結論を出さない ...?」

マスター 「まだ、何もかも結果が出たわけではないいのですから ... 」

ジ ン  「でもこのままじゃ、自分の居場所さえ見失いそうで ... 」


        :静かに流れるジャズ -----
        :男、おもむろに手元のジッポーでタバコに火を点ける -----


マスター 「どうでしょう ... それならその手元のライターで決めてみては ... 」

ジ ン  「これで?」

マスター 「昔、何かの小説で読んだのですが ...
      ちょうどそのジッポーが、7回連続で火が点くかどうかということで
      賭けをする場面があったんです ... 」

ジ ン  「でも、マスター ... それって可能性が低い賭けだと思うけど ... 」

マスター 「そうでしょうか ... 」

ジ ン  「7回連続だなんて ... このライターの場合は無理だと ... 」

マスター 「いかがなさいますか ...?」

ジ ン  「ちなみにその小説の結末は?」

マスター 「... 最後の7回目は、火を点けませんでした ... 」

ジ ン  「なんだ ... それじゃ賭けにならない ... 」

マスター 「いかがなさいますか ... 」

ジ ン  「 ... 」


         :沈黙の間を、静かに流れるジャズ -----


ジ ン  「 ... いいでしょう、マスター。やってみましょう ...
      で、どう賭ければいいでしょうかね、ボクの場合は ...?」

マスター 「それはご自分でお決めになられた方がよろしいかと ... 」

ジ ン  「... そうだな ... じゃ、もし7回連続で火が点いたら ... 」

マスター 「火が点いたら ...?」

ジ ン  「彼女のことを最後まで信じてみます ... 」

マスター 「ということは ... 」

ジ ン  「... 一度でも火が点かなかったら、別れます ... このまま彼女と」

マスター 「それでよろしいんですか ... 」

ジ ン  「 ... じゃ、始めますね ... 」


         :男、ジッポーを手に取り -----


ジ ン  「1回目 ... 」


         :火が点く-----


マスター 「2回目 ... 」


         :火が点く -----

ジ ン  「3回目 ... 」


         :火が点く-----


マスター 「4回目 ... 」


         :火が点く -----

ジ ン  「5回目 ... 」


         :火が点く-----


マスター 「6回目 ... 」


         :火が点く -----


ジ ン  「マスター ... 所詮、フィクションの世界、小説と現実は違いますよね ... 」

マスター 「ラストですね ...
      小説はここまででしたが、ここからはノンフィクションです ... 」

ジ ン  「 ... そうですね ... それじゃ ... ラスト ... 」

マスター 「7回目 ... 」


         :男、ジッポーを構えて --- 擦る


ジ ン  「 ... アッ ... 」





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2012年05月17日

épisode / ジン来夢.part:U -scene:4-






         :サンドリオンの店内 -----

         :男、おもむろにタバコをくわえ、ジッポーで火をつける -----
         :ゆっくりと一口喫い -----


ジ ン  「マスターにマルガリータを勧められたあの日以来、結構張り切って彼女への
      アプローチに力入れてたんです。
      ちょうど仕事が忙しくなりだした矢先だったんで、とても彼女を捕まえる時間
      はなかったけど ... 頃合見ては連絡入れてました ...
      それでも、彼女の声を聞くことは一度もなかった ...
      そんな状態が続いてるうちに、いよいよ仕事がいしがしくなってしまい ...
      それで」

マスター 「海外へ行かれてしまった ...」

ジ ン  「タイミングが悪かったのか、それとも ... 」

マスター 「それとも?」

ジ ン  「魔が差したのか ... 」

マスター 「どちらにしましても、あまりいい響きではないようですね ... 」

ジ ン  「今となっては、どちらでもいいことですけどね ...
      彼女は別の男に惚れてるんですから ... 」

マスター 「それは確信でしょうか? ... それとも憶測?」

ジ ン  「残念ながら、確信ですね ... 」

マスター 「どうしてそう?」

ジ ン  「この間、ボクの友達が見かけたらしんです ... 男と二人でホテルのラウンジに
      いたところをね ... 」

マスター 「ただのお知り合いでは ...?」

ジ ン  「ただの知り合いと、腕を組んで歩いたりはしないでしょ ... 」


         :沈黙の間に流れるのジャズ -----


マスター 「お取替えいたしましょうか?」

ジ ン  「エッ?」

マスター 「せっかくのホットカクテルが、冷めてしまったようですので ... 」

ジ ン  「ああ、これですか ... 別にいいですよ、このままで。
      今のボクにはお似合いかもしれないんで ... この冷めかけたカクテルが」

マスター 「今夜はいつもと、雰囲気が違いますね ... 」

ジ ン  「そうですね ... ちょうどこのカクテルベースの、ラムのような心境かな ... 」

マスター 「 ... ラムバリオン ...?」

ジ ン  「さすがマスター ... ラムの語源をよく知ってますね」

マスター 「胸騒ぎ ... ということですか .... 」





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2012年05月15日

épisode / ジン来夢.part:U -scene:3-






         :サンドリオンの店内 -----


マスター 「あらからまだ、お会いになっていらっしゃらないんですね」

ジ ン  「 ... そんなこと言ってましたか、彼女」

マスター 「いいえ ... お二人にのお話をそれぞれに伺って、そう思うのですが ... 」

ジ ン  「そうですね。わかりますよね ...
      ...ボクも彼女もそれぞれ別々に、マスターにこうして話しかけてるんです
      からね、自分の気持ちを」

マスター 「それが現状のようですね ... 」

ジ ン  「今のボクにはマスターだけが、唯一彼女との接点ってわけだ ... 」

マスター 「少し淋しい響きがありますね、今の言葉には」

ジ ン  「そうですね ... ないといえば、嘘になりますよ ...
      少し前までは、彼女とよく、ハートランゲージやってましたからね」

マスター 「ハートランゲージ?」

ジ ン  「言葉を使わずに、心から心に伝えること ... つまり以心伝心ってことです」

マスター 「以心伝心 ... 」

ジ ン  「昔はよく ... といっても、ほんのしこし前のことだけど ...
      たとえばドライブに出かける時には、必ず前もって三つの品物を買ってくる
      のがお決まりだった。
      ポテトチップでもサンドウィッチでもコーラでもなんでもいい。
      とにかく弁当代わりの物とドリンクとお菓子、この三つをその日の気分で
      お互い食べたい物を買ってくる ... それが約束だった。
      それで二人、顔を合わせたところで「せーの」で買ってきた物を見せ合う ...
      時にはボクがおにぎりで彼女がハンバーガーだったり、ポテトチップに煎餅
      だったり ... それでも三つのうち一つには、絶対に共通の物があった ...
      それでたった一度だけ、お互いの品物が全部三つとも、同じ時があった。
      まぐれと言えばそれまでだけど ... あの時はお互いに驚きながらもおかしくて
      それでいてホントに嬉しかったっけ ... 」

マスター 「まさに以心伝心、ですね ... 」

ジ ン  「他愛もない決まりごとのお遊びだったけど、あの頃は彼女の気持ちが素直に
      心の中に伝わってきてた ...
      そんな時期もあったんですよ、ボクと彼女には」

マスター 「それで淋しい響きがあると ... 」

ジ ン  「少し回りくどい言い方でしたね。
      (少し笑って)フフフ ... 今では単なる追憶だな ... 」

マスター 「どういう意味なんでしょうか? それは」

ジ ン  「もう、あの日には帰れないような ... そんな気がするんです ... 」

マスター 「どうしてそう?」

ジ ン  「彼女は今、ボク以外の男性に、心を奪われてるようなんです ... 」

マスター 「別の男性 ... どうしてそんなことがわかるんでしょうか ... 」

ジ ン  「それは ... 」

マスター 「それは ...?」

ジ ン  「そう ... 以心伝心ってやつですかね ... 」






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2012年05月13日

épisode / ジン来夢.part:U -scene:2-






         :サンドリオンの店内 -----

        SE:暖められたタンブラーに角砂糖一つとゴールドラム(45ml)が
          入れられ、そこへラムの約2〜3倍のお湯が注がれる -----
         :角砂糖大のバター1〜2片を浮かべ、シナモンでステア -----


マスター 「お待たせ致しました ... どうぞ」


         :タンブラーが置かれる -----


ジ ン  「どうも」

マスター 「それにしましても、随分と長く行かれてたんですね」

ジ ン  「そうですね ...
      仕事柄、仕方ないんですよ。テレビのCF撮りですからね」

マスター 「そういう関係のお仕事なんですね」

ジ ン  「そっか ... マスターには言ってなかったんだっけ、ボクの仕事のこと」

マスター 「確かそのように ... 」

ジ ン  「てっきり話したと思い込んでた ...
      実はボク、カメラ回してるんですよ。制作プロダクションでね」

マスター 「カメラマンなんですか ...?」

ジ ン  「そう、一応はね。けどまだまだ一人前には程遠いですけど ... 」

マスター 「でも海外まで撮影に行かれる程なんですから ... 」

ジ ン  「そう思うでしょ。だけど大したことでもないんですよ、仕事の内容は」

マスター 「そうなんですか?」

ジ ン  「そう。それにまだまだ下っ端ですからね。
      カメラ回すっていったって、ほとんど助手みたいな存在で、間違っても
      メイン撮影なんかさせてもらえないし ...
      聞こえはいいんだけど、なかなか厳しい世界んですよね、これが ...
      時々嫌になって、マジで辞めてやろうなんて思うこともよくありますよ」

マスター 「それでも続けていらっしゃる ... 」

ジ ン  「 ... 確かに、そうですね」

マスター 「お好きなんですね、そのお仕事が」

ジ ン  「結果としては、そうなりますね ... 」


         :男、タバコをくわえ、ジッポーで火をつける -----
         :ゆっくり一口吸う -----


ジ ン  「ところでマスター ...
      ボクがこの間、ここへ連絡してから、彼女一度も来ませんでしたか?」

マスター 「いえ ... 確か二度ほどお見えになりましたが ... 」

ジ ン  「一人で?」

マスター 「はい。二度ともお一人でしたが ... 」

ジ ン  「そっか ... 一人でか ... 元気そうでした? 彼女」

マスター 「そうですね。いつもと変わりないご様子でしたが ... 」

ジ ン  「二度とも?」

マスター 「 ... 一度目はいつもと少し、雰囲気が違ったような気もしますが ... 」


         :男、タンブラーのホットカクテルをゆっくりと一口 -----


ジ ン  「二度目はいつもと変わりなく、か ... やっぱり変わったのかな、あいつ ... 」

マスター 「どういうことなんでしょうか? それは」

ジ ン  「ボクがいなくなってもいつも通りってことは ... それは ... 」

マスター 「それは ...?」

ジ ン  「彼女が、いつもと違うってことなんですよ ... 」






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2012年05月11日

épisode / ジン来夢.part:U -scene:1-






         :シーサイドの一角 -----
         :携帯電話をかける男 -----

        SE:受話器から聞こえる呼び出し音 -----

         :相手が出るのを待つ ----- 繰り返されるコール音


ジン   「(ため息)フゥ... 」


        SE:男、仕方なく電話を切る -----


ジ ン  「くそー ... 」


         :足元の空き缶を蹴る -----

         :飛んで転がる空き缶の音が辺りに響く ----- 


ジ ン  「やっぱり、か ... 」


         :男、タバコを取り出してくわえる -----
         :おもむろにジッポーで火をつける -----
         :ゆっくりと一口 -----


ジ ン  「冷えるな、今夜は ... 」


         :微かな波の音 -----



      長針と短針 ... 彼と彼女 ---
      長針が知らない時の世界を
      短針がゆっくりと刻んでいる ---

      同じ場所にいるはずなのに
      それぞれに違う時間を刻む ---
      追いかけているのか逃げているのか
      時の狭間に心が揺れる ---

      彼と彼女の二人の時間は
      今はまだほんの少し .....



ジ ン  「久しぶりだな ... ここも」


         :ドアの開く音 -----


マスター 「いらっしゃいませ ... 」

ジ ン  「ご無沙汰です、マスター」

マスター 「お久しぶりです ... ようこそ」

ジ ン  「しばらく留守にしてたんで、すっかり遠のいちゃってて」

マスター 「どこか行かれてたんですか?」

ジ ン  「ええ、まあ ...
      仕事で海外の方へ ... そう、あれからずっとです ...
      それで昨日、帰ってきたばっかりなんですよ」

マスター 「そうでしたか ... 」

ジ ン  「ホント、久しぶりだな ... かれこれひと月になるかな ... 」

マスター 「確かに、そうですね ... それぐらいにはなるかと ... 」

ジ ン  「だよね ... 」

マスター 「では、そのお久しぶりのご注文は、何になさいますか?」

ジ ン  「そうだな ...
      少し風邪気味なんで、ホットバタードラムをオンシュガーで
      お願いしようかな ... 」

マスター 「風邪を召されてるんですか?」

ジ ン  「そうですね ... 身も心もね ... 」




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