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:サンドリオンの店内 -----
:静かに流れるジャズ -----
マスミ 「いつも調子のいいことばかり言ってるんですよね、彼 ...
素直にその時にそういってくれればいいものを、いつも後から
あの時はああだったとかこうだったとか ...
結局、私の気持ちなんか何にも理解してくれてない ... 」
マスター 「でも、真面目な口ぶりでした ... あの時は」
マスミ 「どうせ長続きしないんです、彼の場合は」
マスター 「そのご様子だと ... 仲直りされる気がないんですね」
マスミ 「 ... そうですね ... 」
:女、グラスのカクテルを飲み干す -----
マスミ 「マスター ... お願いがあるんですけど ... 」
マスター 「何か?」
マスミ 「私にもお奨めのカクテル、ありませんか?」
マスター 「そうですね ... はい、かしこまりました」
マスミ 「すみません、わがまま言って ... 」
マスター 「いいえ ... お気になさらず」
マスミ 「ありがとうございます ... 」
マスター 「では、しばらくお待ち下さい ... 」
SE:ミキシンググラスに氷が入れられる ---
:そこへドライジンとヴェルモットが注がれてステア ---
:やがてストレーナーをされ、カクテルがグラスへ注がれる ---
:仕上げに、パールオニオンがグラスの中へ -----
マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ」
:グラスが置かれる -----
マスミ 「マスター ... これは?」
マスター 「ギブソンという、ジンベースのカクテルです」
マスミ 「ギブソン?」
マスター 「はい。これはマティーニのバリエーションの一つです」
マスミ 「そうなんですか ...
グラスの底に沈んでる、この真珠のようなものは ...?」
マスター 「パールオニオンです。
マティーニですと、それがオリーブに変わるんです ... 」
マスミ 「なるほど ... パールオニオンか ... 綺麗だわ ...
ホントに真珠のように輝いてる ... 」
マスター 「もともとジンが無色透明の蒸留酒ですから、単なるパールオニオンも
その中に身を沈めると、ジンとグラスに包まれて、そんな風に光輝いて
見えるんです ... 」
マスミ 「ジンに包まれて光輝く、ですか ... マスターらしい、お奨めですね」
マスター 「恐縮です ... 」
マスミ 「でも ... 」
マスター 「でも?」
マスミ 「少し違うんですよね、今の私は ... 」
マスター 「それは ... どういうことでしょうか ...?」
マスミ 「 ... 今の私は ... ジンだけが全てじゃないんです ... 」
マスター 「全てじゃない ...?」
マスミ 「そう ... このパールオニオンが、別のカクテルに添えられるように ...」