2012年04月07日

épisode / ジン来夢 -scene:3-






           :サンドリオンの店内 -----


ジ ン  「時を刻めない ... 妙に説得力のある言葉ですね。それに含蓄もあるし ... 」

マスター 「含蓄、ですか ...?」

ジ ン  「そう。
      いつも隣にいるはずの彼女がいないって事の大きさに、自分自身戸惑ってるん
      です...
      待っていて当たり前、言うことをきいて当たり前、気が利いて当たり前 ...
      彼女の在り方、存在自体が自分にとって当然のことだと思ってた ... 」

マスター 「ちょうどそれが時計の針のように ... 」

ジ ン  「そうですね。
      時計は長針と短針、二本あって当たり前か ... 」

マスター 「今度は少し、ペースが落ちましたね」

ジ ン  「(少し笑い)なかなかチェックが厳しいですね、マスターは」


          :男、グラスのカクテルをゆっくりと一口 -----


ジ ン  「今日のカクテルは、いつもより少しスィートな味わいですね」

マスター 「同じジンベースですが ... 」

ジ ン  「ということは、ライムの味がこうなのかな ... 」

マスター 「そうですね ... ジンベースのカクテルの中でも、どちらかといえば甘口の
      カクテルですから」

ジ ン  「でも光栄だな。いつもビフィーターをジンベースにしてもらって ... 」

マスター 「いいえ ... とんでもございません」

ジ ン  「もともとこのジンはロンドン生まれのブリティッシュ・ジンの代表格 ...
      このビフィーターを出されたら、それは本当に歓迎された証しだという、
      ジン党での語り草ですからね ... ジン愛飲家としては嬉しい限りですよ」

マスター 「ジンに纏わるお話、よくご存じなんですね」

ジ ン  「ジンには含蓄あるんです」

マスター 「そんなお客様ですので、ビフィーターがお似合いかと ... 」

ジ ン  「やっぱりマスターにはかなわないな」


          :男、ゆっくりと一口 -----

         SE:グラスの氷が揺れる -----


ジ ン  「(微かなため息)..... 」

マスター 「やはり今夜は不自然でしょうか ...?」

ジ ン  「どうもいけないな ... 」

マスター 「お見えにならないんですか? 今夜は」

ジ ン  「そうですね ... きっと来ないでしょう ...
      いや、ひょっとしたら、もう会えないかもかもしれない ... 」


          :男、左手の小指から指輪を外してカウンターへ落とす -----

         SE:小さな円を描いて廻る指輪 --- やがて止まる


ジ ン  「これを渡せないままに ... 」

マスター 「綺麗なシルバーリングですね」

ジ ン  「ボクの小指のサイズだけど、彼女へのプレゼントのつもりなんですよ ...
      ほんのこころばかりの ... 」
 
マスター 「それは ... どの指への贈り物なのでしょう ...?」

ジ ン  「 ... 彼女の左手の、薬指ですね ... 」





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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