2012年04月29日

épisode / パール来人.part:U -scene:1-






         :シーサイドを走るクルマの中 ---
         :男と女 ---
         :カーコンポから流れるBGM -----


マスミ  「今夜は楽しかったです。 どうもありがとう ... 」

男    「いいや、こちらこそありがとう。楽しかったよ」

マスミ  「あ、この辺でいいです」


         :クルマが止まる -----


男    「ここでいいの?」

マスミ  「ええ ... ここから歩いてすぐですから ... 」

男    「ホントに?」

マスミ  「ええ ... 」

男    「こんな時間は物騒だから ... 」

マスミ  「大丈夫です。知り合いがすぐそばにいますから ... 」

男    「すぐそばって ...?」

マスミ  「あそこにいるんです ... 素敵な知人が ... 」

男    「サンドリオン ...?」

マスミ  「そうです ... だからご心配なく」

男    「(少し笑って)夜遊びが過ぎるかも ... 早く帰るように」

マスミ  「はい。了解です ... それじゃ ... 」


         :助手席のドアが開く -----


男    「また会えるかな ... 今夜みたいに、二人きりで」

マスミ  「... それは ... 」

男    「それは?」

マスミ  「今夜、考えてみます ... 」

男    「そっか ... それじゃ、期待してるよ」

マスミ  「 ... 」

男    「おやすみ ... 」

マスミ  「 ... おやすみなさい」


         :女、クルマから降りてドアを閉める -----
         :走り去るクルマ ---

         :微かな波の音 -----

         :ゆっくりと歩きだす女 ---
         :ヒールの音にまぎれて -----


      長針短針 ... 彼と彼女 -----
      長針が時のリズムを狂わせれば
      短針が時の流れを見失う -----
      自分の居場所に戸惑いながら
      早すぎるのか遅すぎるのか -----
      気が付けばいつの間にか
      手探りで歩いている自分がいる ----
      彼と彼女の二人の時計は
      今はまだほんの少し -----


マスミ(Na) 私は今夜、彼以外の男性と同じ時間を所有した -----
      お決まりのデートコースといえばそれまでだけど
      何か忘れかけてたものが、私の胸を時めかせた -----

      本来なら、心にある隙間から吹き込む風に震えて、見失いかけてるのもに
      必死に目をこらしているはずなのに ...

      私は彼以外の男性を、この心の隙間に埋め込んでしまったようだ ...

      これは恋なんだろうか ...
      もう一人の自分がそっと耳元で囁く -----

      これでいいの ...?
      同時に二人の男性を、心の中に宿らせたままで ...
      罪の意識とは別に意識が私を覆っていく ...
      怖い .....

      小さい頃、何も怖いものがないと言えたら、大人になれるんだと
      思ってたけど ...
      あれは嘘だった -----


         :ヒールの音 ---
         :サンドリオンの前 --- 止まる
         :ドアの開く音 -----


マスミ  「今晩は、マスター」

マスター 「いらっしゃいませ ... ようこそ」





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2012年04月23日

épisode / パール来人 -final-






         :サンドリオンの店内 -----

         :静かに流れるジャズ -----


マスミ  「この間のケンカの時に、どうやら私の胸の中で少しだけ隙間が出来たんです ...
      ほんの小さな隙間でした ...
      最初はいつものことだからと、別に気にもしなかったのに ... 
      次の日もそしてまた次の日も、どうしてもその隙間が消えなかった ...
      それは ... 彼の声が聞かないから? それとも逢わないからか ...
      自分でも確かめる術がみつけられないまま、時間だけが流れていった ... 」

マスター 「取り留めのない気持ちになられた ... 」

マスミ  「そうですね ... 」

マスター 「それで、より一層 ... 彼と話せなくなっていった、と ...」

マスミ  「そのうちに自分で気がついたんです ... これは彼が ... ジンが原因じゃないと
      いうことに ... 」

マスター 「彼氏が原因じゃないと ...?」

マスミ  「もう一人の自分が、別の人を想うようになっていた ... 」

マスター 「別の男性、ですか ... 」

マスミ  「マスターのような人には話したくなかったです、本当は。
      こんないい加減な自分のことを ...
      でもその反面、マスターだけには聞いてほしかったって気持ちもあるんです。
      (少し高揚して)だから私、今日はここへ ... 」

マスター 「ありがとうございます ... 」

マスミ  「 ... 何だか私、支離滅裂ですね ... 」


         :女はギブソンのグラスを持ち、飲みかけるが ---
         :思い止まり、グラスを置く -----


マスター 「どうなさったんですか?」

マスミ  「 ... ごめんなさい、マスター ...
      せっかく作ってもらったカクテルなのに、今の私には飲めないみたい ...
      ごめんなさい ... 」

マスター 「残念ですね ... でも、お気になさらないでください」

マスミ  「 ... ありがとう、マスター ... 」

マスター 「いいえ、とんでもございません ... 」

マスミ  「 ... 今夜はもうお邪魔します、私 ... 」


         :女は席を立ち、帰り支度をする -----


マスター 「少しはお役にたちましたでしょうか ... 」

マスミ  「充分でした、マスター ... ありがとう ... 」

マスター 「いいえ、こちらこそ ... それよりまた、いらっしゃってください」

マスミ  「 ... はい、是非とも ... 」

マスター 「ありがとうございました ... 」


         :女、ドアを開けてふと立ち止まり -----


マスミ  「マスター ... 私って、パールオニオンなんでしょうか?」

マスター 「少なくとも ... 私にはそう見えました ... パールオニオンのように
      綺麗な女性に」

マスミ  「.. でも ... 私にもそう見えます ... マスター瞳がパールオニオンのように
      輝いて見えます ... 」





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2012年04月21日

épisode / パール来人 -scene:4-






         :サンドリオンの店内 -----

         :静かに流れるジャズ -----


マスミ  「いつも調子のいいことばかり言ってるんですよね、彼 ...
      素直にその時にそういってくれればいいものを、いつも後から
      あの時はああだったとかこうだったとか ...
      結局、私の気持ちなんか何にも理解してくれてない ... 」

マスター 「でも、真面目な口ぶりでした ... あの時は」

マスミ  「どうせ長続きしないんです、彼の場合は」

マスター 「そのご様子だと ... 仲直りされる気がないんですね」

マスミ  「 ... そうですね ... 」


         :女、グラスのカクテルを飲み干す -----


マスミ  「マスター ... お願いがあるんですけど ... 」

マスター 「何か?」

マスミ  「私にもお奨めのカクテル、ありませんか?」

マスター 「そうですね ... はい、かしこまりました」

マスミ  「すみません、わがまま言って ... 」

マスター 「いいえ ... お気になさらず」

マスミ  「ありがとうございます ... 」

マスター 「では、しばらくお待ち下さい ... 」


        SE:ミキシンググラスに氷が入れられる ---
         :そこへドライジンとヴェルモットが注がれてステア ---
         :やがてストレーナーをされ、カクテルがグラスへ注がれる ---
         :仕上げに、パールオニオンがグラスの中へ -----


マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ」


         :グラスが置かれる -----


マスミ  「マスター ... これは?」

マスター 「ギブソンという、ジンベースのカクテルです」

マスミ  「ギブソン?」

マスター 「はい。これはマティーニのバリエーションの一つです」

マスミ  「そうなんですか ...
      グラスの底に沈んでる、この真珠のようなものは ...?」

マスター 「パールオニオンです。
      マティーニですと、それがオリーブに変わるんです ... 」

マスミ  「なるほど ... パールオニオンか ... 綺麗だわ ...
      ホントに真珠のように輝いてる ... 」

マスター 「もともとジンが無色透明の蒸留酒ですから、単なるパールオニオンも
      その中に身を沈めると、ジンとグラスに包まれて、そんな風に光輝いて
      見えるんです ... 」

マスミ  「ジンに包まれて光輝く、ですか ... マスターらしい、お奨めですね」

マスター 「恐縮です ... 」

マスミ  「でも ... 」

マスター 「でも?」

マスミ  「少し違うんですよね、今の私は ... 」

マスター 「それは ... どういうことでしょうか ...?」

マスミ  「 ... 今の私は ... ジンだけが全てじゃないんです ... 」

マスター 「全てじゃない ...?」

マスミ  「そう ... このパールオニオンが、別のカクテルに添えられるように ...」





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2012年04月19日

épisode / パール来人 -scene:3-






         :サンドリオンの店内 -----


マスミ  「彼がマルガリータなんて、めずらしいな ... いつもジンベースなのに ... 」

マスター 「 いいえ ... 私がお奨めしたんです ... 」

マスミ  「マスターが?」

マスター 「最初はいつものジンべースでオーダーされてたんですが、途中でお奨めすると
      気に入っていただけたようで ... 」

マスミ  「やっぱりね ... 彼、根っからのジン党ですからね。
      でも、どうしてまた彼にマルガリータを?」

マスター 「あの時の雰囲気にはちょうどいいカクテルだったんです ... マルガリータが」

マスミ  「あの時の雰囲気 ...?」

マスター 「情熱のスピリッツといわれるテキーラをベースにして作る、マルガリータと
      いうカクテルの由来が」

マスミ  「マルガリータの、由来?」

マスター 「不運の事故死を遂げた恋人に対する、精一杯の心の表現としてつくられたと
      いう由来です」

マスミ  「心の表現 ... 」

マスター 「ジンは心を冷やしますが、テキーラは情熱を誘います ... そんなスピリッツの
      謂れが、彼の心に響いたのではないかと ... 」

マスミ  「情熱のスピリッツ、テキーラか ... 」


         :女、カクテルをゆっくりと一口 -----


マスミ  「ということは ... 彼がここへ来た時は、元気がなかったんだ ... 」

マスター 「どちらかといえば、そんなご様子でした ... 」

マスミ  「あんなにカッカしてたくせに ... 」

マスター 「でも、反省されていたようですが ... 」

マスミ  「マスターに何かこぼしてたんですね、彼」

マスター 「 ... 戸惑っていらっしゃいました ... 」

マスミ  「戸惑う?」

マスター 「いつもなら隣にいるはずの女性が、いらっしゃらないことに ... 」

マスミ  「 ... 」

マスター 「彼とは会われてないんですか?」

マスミ  「そうですね ... あの日からは ... 」

マスター 「あの日から?」

マスミ  「そう ... 彼がちょうど一人でここへ来た日からですね ... 」

マスター 「そうなんですか ... 」

マスミ  「ほんの些細なことがきっかけで、彼に言われたことがすごくショックだった
      んで ... それで喧嘩別れしちゃって ... 」

マスター 「気にされてました ... そのことを」

マスミ  「そうでしたか ... 」

マスター 「そのことで話されてはいないんですね ... あれから」

マスミ  「ええ... あれから何度か連絡はあったんですが、どうしても彼と話す気になれ
      なくて ... 」

マスター 「それでは ... 今夜も、ですか?」

マスミ  「 ... そうですね。今夜も、ですね ... 」




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2012年04月17日

épisode / パール来人 -scene:2-






         :サンドリオンの店内 -----


マスター 「もし彼女が来たら連絡をくれるように伝えてほしいと、そうおっしゃって
      おられました ... 」

マサミ  「 ... そうですか ... 」


         :女、カクテルをゆっくりと一口 -----


マスター 「よろしんですか ... ? ご連絡されなくても」

マスミ  「エエ ... まあ ... いいんです ... 
      今夜はこうして一人で飲んでたい気分ですから ... 」

マスター 「 ... そうなんですか ... 」

マスミ  「こんな日もありますよ ... 誰だって一度ぐらい ... 」

マスター 「 ... そうですね」


         :女、再びカクテルをゆっくりと一口 -----


マスミ  「(微かなため息)はじめてですね、私。一人でここへお邪魔するのって ... 」

マスター 「エ ...?」

マスミ  「いつもは彼と ... 一緒だったから ... 」

マスター 「同じことをおっしゃってました ... 」

マスミ  「エッ ...?」

マスター 「この間一人でお見えになった時、やはりそんなことをお話しされてました ...
      ボクがこうして一人でいると、やっぱり不自然ですかね、と ... 」

マスミ  「一人で来てたんですか、彼 ... 」

マスター 「はい ... 確か5日程前だったでしょうか ... 」

マスミ  「 ... あの時か ... 」

マスター 「いつものジンベースのカクテルをオーダーされました ... 」

マスミ  「 ... そうですか ... その時 ... 」

マスター 「 ... はい ...?」

マスミ  「何か言ってました? 彼 ... 」

マスター 「 ... ここは彼女が見つけたお店で ... カクテルが美味しいところだとか
      色んなお話をされてました ... 」

マスミ  「そうですか ... 」

マスター 「それに ... 」

マスミ  「 ... それに?」

マスター 「今の自分は、短針のない時計のようなものだと ... 」

マスミ  「短針のない時計?」

マスター 「長針だけでは時間を刻めない ... 今を知る術がないと、そんな喩を ... 」

マスミ  「今を知る術 ... 」


         :静かに流れるジャズ -----


マスター 「今夜はいつもと少し、雰囲気が違うご様子ですね ... 」

マスミ  「そうですね ... そうかも知れません ... でも、少しだけじゃないような
      気がします ... 」

マスター 「それは ... どうしてでしょう ...?」

マスミ  「私は一人でここにいるし ... カクテルもいつもと違うもの ...
      それに私の心まで ... 」

マスター 「心まで ... ?」

マスミ  「 ... いいえ ... 何でもないんです ... 」

マスター 「 ... でも一つだけ、同じものがございますが ... 」

マスミ  「エ ... ?」

マスター 「彼が最後にオーダーされたカクテルが ... そのマルガリータでした ... 」

マスミ  「! ... 彼がマルガリータを ... 」





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