2011年12月25日

spin-off / Père Noël -recipe-






バーテン  今宵は「バード・バー」へお越しいただき、誠にありがとうございました。      
      ではまず始めに、今回登場いたしましたカクテルをご紹介させていただきます ...

      カクテルの名は『ホット・バタード・ラム / Hot Buttered Ram』-----
      グラスから立ち籠める湯気の中に、ほんのりラムとバターの豊かな香りを
      漂わすホット・ドリンクの代表で、少し寒い夜のナイト・キャップには
      最適のカクテルとして知られています ...

      そもそもこのカクテルはその性質上、温かくて栄養があり、その上寝つきも
      良くなることから、海外では疲労回復や風邪気味の時に良く飲まれている
      そうです -----

      レシピは ... あらかじめ温めておいたホルダー付きのタンブラーグラスに
      ダークラム(45ml)と角砂糖を1個入れ、そこにグラス7分目程度まで熱湯を
      注ぎます ...
      次に同じく角砂糖ぐらいの大きさのバターを入れ、マドラーを添えれば
      出来上がりで ... お店によっては、そこへクロープを3、4個入れる場合が
      あるようです ...
      いずれにしましても、添えられたマドラーで温かい内に飲まれることが
      秘訣であるカクテルです。

      ちなみにこの『ホット・バタード・ラム』 ... 専門的に分類しますと
      ハイボールの一種になると聞いております。
      ... 皆様も、寒い夜には是非一度、ご賞味いただきたいカクテルです ...
      きっと心まで温めてくれる一杯になることと思います -----


マスター  さて今宵はクリスマス ...
      私から皆様へ、今宵にぴったりなカクテルを一品、ご紹介させていただきます ...

      カクテルの名は『ビジュー / Bi jou』...
      宝石を意味する言葉でネーミングされたこのカクテルは、その名のとおり
      深く澄んだその色合いが輝く宝石のようにグラスを染め、その美しい姿は
      まるで『カクテルの宝石』と呼べるような一品です .....

      そのレシピは ...
      ドライ・ジン(1/3)とシャルトリューズのグリーン(1/3)、それに
      スィート・ヴェルモット(1/3)とオレンジ・ビター(1dash)を加え
      絞りかければ出来上がりです -----

      甘口でありながら、それでいてアルコール度数が高いというバランスを持つ
      このカクテルは ... いかにもそのネーミングからイメージ出来るステイタス
      だと言えるでしょう .....

      この『ビジュー』...
      別名を、エメラルド・カクテル、ゴールデン・グロー・カクテル、または
      アンバー・ドリームとも呼ばれているこのカクテルの宝石ですが ...
      今宵クリスマスに大切な人へプレゼントされてみてはいかがでしょう?
      少しお洒落なプレゼントになると思いますが ....

      それでは ...
      素敵なクリスマスをお過ごし下さい ...

      ありがとうございました -----





posted by マスターの知人 at 12:00 | Comment(3) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

spin-off / Père Noël -final-






         :バード・バーの店内 -----


バーテン 「そうでしたか ... そんなことがあったのですか ... 」

マスター 「それから数日後に ... 予定日だったクリスマスの夜にちょうど
       元気な男の子が生まれたんだ ... 」

バーテン 「それじゃ、何よりも嬉しいクリスマスプレゼントになったんですね ... 」

マスター 「そう ... あの彼もそう言ってたな ... それにイシハラさんは自分にとって
       サンタクロースだとも ... 」

バーテン 「イシハラ様が、サンタクロース ... 」

マスター 「何もかもを捨てようとした自分に、もう一度新しい命の息吹をプレゼントして
       くれた ... 彼にとってイシハラさんは命の恩人であり、サンタクロースでも
       あるわけなんだ ... 」

バーテン 「確かにそういえるでしょうね ... 」

マスター 「だから、彼にとって処女出版であるこの本を、イシハラさんには絶対読んで
       もらいたかった ... 」

バーテン 「それでこの本をイシハラ様にと、置いて行かれたんですか ... 」

マスター 「きっと ... イシハラさんをイメージして、書かれたものなんだろうな ... 」

バーテン 「どうしてそう ...?」

マスター 「この本のタイトル「Pere Noel(ペール・ノエル)」は、フランス語でサンタクロースって
       意味なんだ ... 」

バーテン 「そうでしたか ... でも、どうするつもりなんですか? この本を ... 」

マスター 「このままこの店で預かろう ... 」

バーテン 「でも、マスター ..... イシハラ様はもう ... 」

マスター 「いいや ... この本がこのままこの店に置かれている限りは ... 少なくとも
       イシハラさんは「Pere Noel(ペール・ノエル)」として、彼や僕たちの胸の中で
       生き続けるんだから ... 」

バーテン 「 ... そうですね ... きっとそうですよね ... 」


        SE:店のドアが開き、何人かの客が入ってくる -----


客1   「今晩は、マスター」

客2   「メリークリスマス、マスター!」

マスター 「いらっしゃいませ、ようこそ ... 」

バーテン 「いらしゃいませ ... 」


マスター(Na) Pere Noel(ペール・ノエル) .....

      それはこの店「バード・バー」に実在したサンタクロースでした ...
      残念ながら今ではもう、お目にかかることは出来ませんが、この本の中では
      お元気にされてるようです ...
       
      Pere Noel(ペール・ノエル).....
      それはこの店だけに存在した、サンタクロースの名前です -----



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2011年12月24日

spin-off / Père Noël -scene:4-






         :バード・バーの店内 -----


マスター 「それじゃあと何日かで、この世に生を享けるんですね ... お客様のお子さんが ... 」

ハジメ  「そうなりますね ... 」

イシハラ 「なのにどうして、あんなことを ... 」

ハジメ  「最後の賭けだと思って、直接出版社に持ち込んだ原稿が、いとも簡単に評価されて
       しまって ... 今までの集大成をと、気合入れて書き上げた作品だったのに ... 」

イシハラ 「それで完璧に打ちのめされたって訳か ... 」

ハジメ  「人から見れば些細なことかも知れませんが ... ボクにすれば決定的な出来事だった
       ... 今日のことは ... 」

イシハラ 「だからと言って、命を粗末にしてもいいものかな ... ねえ、マスター」

マスター 「その代償は ... 残された家族の、深い悲しみだけでしょうね」

ハジメ  「でも、ボクにはもう父親の資格なんか」

イシハラ 「生まれてくる子供には、親は選べないんだよ ... 」

ハジメ  「! ... 」

イシハラ 「仮に君が才能のない男だとしても、たとえ君が最低の男だとしても ... 
       生まれてくる子供にとっては、君が唯一の父親なんだよ」

ハジメ  「オレが、父親 ... 」

イシハラ 「それがまぎれもない事実だろ ... 現実だ」

ハジメ  「 ..... 」

イシハラ 「なあ ... 人それぞれにいろんな生き方があって、いろんな道があると思うんだ ...
       でもその中で、どんな道を選ぶかってことよりも、自分の選んだ道でどれだけやれる
       かってことの方が、大事なんじゃないかな ... 」

ハジメ  「 ... どれだけやれるか ... 」

マスター 「未来にはまだ、失敗はないと思いますよ ... 」

イシハラ 「確かにそうだと思う ... まだまだこれから先があるんだよな、君にも奥さんにも
       ... それにもうすぐ生まれる君の子供にもな」

マスター 「お客様、ご存知ですか ...?」

ハジメ  「エッ ...?」

マスター 「生まれたばかりの赤ちゃんが、ぎゅっと手を握ってるその訳を」

ハジメ  「... それは ... 」

イシハラ 「それって ... どういう意味かな ... マスター」

マスター 「生まれたばかりのその小さな手には、夢を沢山持ってるんだと ... 私はそう聞かされ
       ました ... 」

イシハラ 「夢を持って生まれてくるか ... 」

マスター 「出来ればその手の中の夢を、大切に見守ってあげてください ... 」

ハジメ  「マスター ... 」

イシハラ 「 ... どうかな ...? このカクテルで、少しは温まったかな ... 」

ハジメ  「 ... はい ... そうですね ... 心まで少し ... 」

イシハラ 「何だ、まだ少しか ... それじゃお代わりもらおうかな、マスター」

マスター 「はい。承知しました ... 」


        SE:グラスに角砂糖1個と温められたダーク・ラム(45ml)が
          入れられ、熱湯がグラスの残部に注がれる -----
         :そこへバター(角砂糖サイズ)が浮かべられ、マドラーが
          添えられる -----


ハジメ  「あのう ... 」

イシハラ 「ウン ... ?」

ハジメ  「自分のことばかりに気を取られてて、うっかりしてたんですが ...
       まだ名前を言ってませんでした、すみません ... 」

イシハラ 「そう云われれば、そうだったな ... 」

ハジメ  「ボクはヒモトと云います ... 」

イシハラ 「これはどうも ... で、私は ... そうだな ... 」

ハジメ  「 ...?」

イシハラ 「ペール、ノエルかな ... 」

ハジメ  「ペール、ノエル ...?」





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2011年12月23日

spin-off / Père Noël -scene:3-






         :回想 -----


レイコ  「どうだった? 今度のは」

ハジメ  「ウン ... 」

レイコ  「そう ... 今度のはいけると思ってたのにな ... 」

ハジメ  「やっぱり無理なのかもな ... オレには」

レイコ  「そんなことないって ... 大丈夫よ。立派に世間に通用する力が、あなたには
       あるんだから」

ハジメ  「ありがとう ... お前だけでもそう言ってくれると嬉しいよ」

レイコ  「何言ってるの ... 気休めやお世辞で言ってるんじゃなくてよ。ホントのこと
       なんだからね」

ハジメ  「もういいよ ... わかったよ、もう ... 」

レイコ  「元気出してよ ... まだまだこれからなんだから」


         :男、タバコに火を点けて一口喫い -----


ハジメ  「 ... 後悔してないか ... お前」

レイコ  「エッ ...?」

ハジメ  「オレと一緒になったこと ... 後悔してないか ...?」

レイコ  「どうしてそんなこと言うの ...?」

ハジメ  「こんなウダツの上がらない男と一緒になったりしてさ ... 」

レイコ  「 ..... 」

ハジメ  「今時夢なんか追いかけてて、食べていけないもんな ... ホントおめでたいよな
       オレって男はさ ... 」

レイコ  「ハジメ ... 」

ハジメ  「所詮、オレには才能がないんだよ、無理なんだよな ... 作家になるなんてことは」

レイコ  「本気で言ってるの ...?」

ハジメ  「 ... お前もそう思うだろ?」

レイコ  「 ... 残念だけど、私はそんなこと思わないし、そう感じたこともない ... 」

ハジメ  「レイコ ... 」

レイコ  「それにあなたと一緒になって今日まで、一度も後悔したことないし、これからだって
       ずっと一緒にいたいと思ってるよ ... 私」

ハジメ  「お前 ... 」

レイコ  「確かに楽じゃないけど ... 確かに少し辛いこともあるけど ... でも私、あなたのそばから
       離れようなんて思ったことなかった ... 」

ハジメ  「 ..... 」

レイコ  「誰かが云ってた ... 苦労の多いことと、不幸だということは違うんだって。
       私もそう思うのよ ... ハジメ」

ハジメ  「レイコ ... 」

レイコ  「知ってる? ハジメ ... 」

ハジメ  「 ... エッ ...?」

レイコ  「夢ってね ... 見るものじゃなくて、叶えるものなんだよね」

ハジメ  「 ... 叶えるもの ... 」

レイコ  「だから私 ... その夢を必死になって追いかけてるあなたの横顔が一番好きだよ ... 」

ハジメ  「 ... レイコ ... 」

レイコ  「頑張ってよ ... 今のままでいいから、頑張ってよ ... 
       だって今年のクリスマスには家族も一人増えるんだからね」

ハジメ  「? ... 家族が、増えるって ... もしかして ... 」

レイコ  「そう ... そのもしかしてよ ... 予定日は12月25日のクリスマスよ」

ハジメ  「 ... そうか ... そうなのか ... 」

レイコ  「だから、あなたには頑張ってもらわないとね ... 私のためにも、このお腹の子の
      ためにもね ... 」

ハジメ  「 ... そうだな ... そうだよな ... 」

レイコ  「頑張れ ... パパ」


ハジメ(Na) でも、現実はシビアでした ... 書いても書いても、ボクの作品が日の目を見る
      ことは、それ以降もありませんでした ...





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2011年12月22日

spin-off / Père Noël -scene:2-






         :バード・バーの店内 -----
         :ホルダー付きのタンブラーグラスが、それぞれに置かれる -----


マスター 「お待たせしました ... どうぞ 」

イシハラ 「ありがとう ... 」

ハジメ  「 ... どうも」

イシハラ 「さあ、とにかく乾杯だ。これを飲めば少しは暖まるからな ... ねえ、マスター」

マスター 「そうですね ... 今夜のように少し冷え込む夜には、まさにうってつけの
       カクテルですからね」

イシハラ 「それじゃ、君との出会いを祝して ... 乾杯」

ハジメ  「 ... どうも ... 」


        SE:グラスが鈍く重なる音 -----

         
イシハラ 「ウーン ..... 申し分ないね、このカクテルの味は」

マスター 「ありがとうございます」

ハジメ  「 ...これは、何というカクテルなんですか?」

マスター 「ホット・バタード・ラムというカクテルで、海外では風邪気味の時に良く飲まれる
       カクテルなんです」

イシハラ 「まあ、日本で言う玉子酒みたいなものかな」

ハジメ  「外国の玉子酒 ... 」

イシハラ 「もっとも、君に合わせてオーダーしたんだがね」

ハジメ  「エ ...?」

イシハラ 「少し心が、寒々としてたようだったからな ... 」

ハジメ  「 ..... 」

イシハラ 「本当は ... そのつもりだったんだろ? 君」

ハジメ  「 ..... 」

イシハラ 「大の大人が、信号無視もないだろ ... 」

ハジメ  「 ..... 」

イシハラ 「それとも余程何か悩んでいたか、気を取られてたかだよな ... 」

ハジメ  「 ..... 」

イシハラ 「立ち入るようだが ... よかったら話してくれないかな、その訳を」

ハジメ  「 ..... 」

イシハラ 「勘違いしないでほしい ... 興味本位で聞いてるんじゃないから ...
       ただ気になるんだよ ... 君のその淋しそうな背中がね」

ハジメ  「背中が ... 淋しい ...?」

イシハラ 「男って、ある程度年齢を重ねると、背中がものを云い出すんだ ...
       多分、それまでの生き様が背中にのしかかってるからだろうな ...
       だから男は、背中で人生を語るってよく言うじゃないか ... 」

ハジメ  「背中で人生を語る ... 」

イシハラ 「 ... あの時、たまたま君の後ろに居合わせてその背中を見た時、確かに
       その背中は淋しそうだった ... この上なく淋しそうだったよ」

ハジメ  「 ... そうでしたか ... 」

イシハラ 「そう思ってた矢先に、君は車道へ歩き出した ... まるでその命を投げ出すかの
       ようにしてね ... 」

ハジメ  「 ... そうでしたね ... 確かに」

イシハラ 「そんなに粗末にしちゃいけない ... 大切なもんだからな、命ってヤツは。
       ... ねえ、マスター」

マスター 「そうですね ... 間もなくクリスマスですが ... さすがに人の命までプレゼント
       してくれるサンタクロースはいないでしょうね、きっと ... 」

イシハラ 「意外にシビアなセリフだな、マスター」

マスター 「いえ、決してそんなつもりで云ったんじゃないんです ... ただ ... 」

ハジメ  「 ... ただ、なんでしょう?」

マスター 「 ... 人が思い悩むということ ... それはある反面、いいことじゃないかと
       私は思うんですが ... 」

ハジメ  「それはどういう意味なんでしょう ... ?」

マスター 「目的があるから ... 目標があるから、人は悩む ... 私はそんな風に思うん
       ですが ... 」

イシハラ 「なるほど ... 」

ハジメ  「目標があるから、人は悩む ... 」

イシハラ 「確かにそうかも知れないな ... 」

マスター 「 ... 以前、あるお客様がこんなことを話されてました ...
       希望は人を見捨てたりしない ... 人が希望を見捨てるのだと ... 」

イシハラ 「 ... 君の場合は、どうなのかな ... 」

ハジメ  「 ... ボクは ... ボクは ... 」





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