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:バード・バーの店内 -----
SE:ジッポーでタバコに火を点ける男 -----
:ゆっくりと一口喫い -----
男 「そういえばあの頃 ... こんなこともありました .....
そう ... あれは確か、ボクの誕生日の1週間ほど前のことだったっけ ... 」
:回想 -----
:走る車の中で -----
彼女 「どうしたの? 今日は浮かない顔して」
男 「いや ... 大したことじゃないんだけどさ ... 」
彼女 「大したことじゃないわりには、さっきから溜め息ばっかりついててよ?」
男 「ン? ウン ... 」
彼女 「そんな気のない返事してないで、さっさと話してごらんなさいよ ... どうしたのよ
一体」
男 「 ... 覚えてるか? おととい三宮で買い物した時 ... ほら、オレがすごく気に入った
ライターがあったろ?」
彼女 「ああ ... あのプレミアがついてたジッポーね」
男 「あの時は迷ってて、おまけに時間もなかったから、結局買わずに帰ったけど
実は昨夜、手に入れるつもりであの店に行ったんだ ... そうしたら ... 」
彼女 「どうしたの?」
男 「もうなかったんだよ、あのジッポーが」
彼女 「それってもしかして、売れちゃったってこと?」
男 「そうなんだ ... どうやら一足違いだったらしくて ... 」
彼女 「そう ... それは残念ね ... それで?」
男 「それでって ... それがすべてさ ... ショックだったんだよな、オレにとってはその事が」
彼女 「何だ ... そんな事か ... それで元気なかったわけ?」
SE:車の急ブレーキの音 -----
男 「(ムッとして)そんな事って ... そういう言い草はないだろう ... 第一、オレにすれば
前から探してた代物で、やっと見つけたものだったんだから ... 」
彼女 「それならあの時迷ってないで、さっさと買えば良かったんじゃなくて? ... 」
男 「だからあの時は、思ってたよりも結構、値がはってたから ... それで」
彼女 「それで躊躇したんでしょ ...? なら自業自得じゃない ... 諦めなきゃ」
男 「(ムッとして)案外冷たいんだな ... もういい」
彼女 「やめてよ ... そういうので怒るのって ... 」
男 「そうさせたのは、誰のせいだよ」
彼女 「何だか私が、全部悪いみたいね ... 」
男 「自分の胸に聞いてみたら ...?」
彼女 「(怒って)もういい ... 私、帰る ...!」
SE:車から降りる彼女 ----- ドアの閉まる音 -----
バーテン 「それで、どうされたんですか? その後 ... 」
男 「結局、その日のデートはそれで終り... 気になったボクが連絡したけど、彼女は電話に
出てくれなかった ... でも」
バーテン 「でも?」
男 「それから3日後 ... 彼女から連絡があり、近くのカフェ・バーで会ったんです ...
その時に彼女からもらったのが、これなんです」
SE:カウンターに置かれるライター -----
バーテン 「ジッポーのライター ... 」
男 「少し早い誕生日プレゼントだけど ... これ以上、渡さないでいるのは辛いって言ってね」
彼女 「では彼女が ... ?」
男 「そう ... 彼女だったんですよ ... ボクより一足先に、ボクのためにこのジッポーを
買ったのは ... 」
バーテン 「最高のパートナーですね ... お客様にとって、その方は」
男 「そうですね ... そう思ってますよ ... 今でもね」
バーテン 「いかがいたしましょう?... 5杯目ですが ... 」
男 「 ... お願いします」
バーテン 「かしこまりました ... 」
SE:カクテルがステアされる音にまぎれて -----
男(Na) 午前0時40分 ... 彼女はまだ来ない -----
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