2011年08月19日

canari 〜 カナリア 〜 -scene:4-






         :サンドリオンの店内 -----



女    「何となくだけど ... マスターの云ってたナイン・ハーフの意味がわかるような気が
      する ... 」

マスター 「マリさん ... 」

女    「カウント・テンまでいっちゃうと、ノック・アウトだもんね ... そこで全部終わり
      だもの ... 」

マスター 「本当にこれでいいんですか ...?」

女    「あ、そうだ、マスター。さっき言いかけて途中になっちゃったことだけど ... 」

マスター 「 ... エッ?」

女    「ほら、ミタさんが入ってくる前に ... 私、マスターに何か言おうとしてたじゃない」

マスター 「そういえば、確か ... 」

女    「それが私 ... 忘れちゃったのよ ... ごめんなさい」

マスター 「マリさん ... 」

女    「何言おうとしてたのか、思い出せないのよ ... 私、もう駄目ね ... 今夜は」

バーテン 「マスター、終わりました ... 」

マスター 「ありがとう ... 」

女    「ご苦労様、バーテンさん ... さっきはごめんなさいね ... 」

バーテン 「いいえ、とんでもありません ... 私こそ、失礼しました ... 」

女    「今度きた時は、可愛いカナリアでいるから ... 今夜のことは許してね」

バーテン 「かしこまりました ... その時をお待ちしております」

女    「それじゃ私、今夜はこれで帰ります、マスター ... おやすみなさい ... 」

バーテン 「ありがとうございました ... 」


         :女、店を出ようとする -----


マスター 「マリさん ... 」

女    「エッ?」

マスター 「さっきのお話の返事は ... 本当にあれでよかったんですか ...?」

女    「 ... エエ ... あれでいいのよ、あれで ... 」

マスター 「そうなんですか ... 」

女    「マスター ... 」

マスター 「 ... はい」

女    「他の人から見ればつまらない感傷でも ... その人にとっては大事なことかも
      知れないじゃない ... そう思わない? マスター ... 」

マスター 「 ... そうですね ... 確かにそうです」

女    「 ... そういうことよ ... それじゃ、おやすみなさい ... 」

マスター 「ありがとうございました ... おやすみなさい ... 」


        SE:女、店を出て行く -----

          :ドアの閉まる音 -----


バーテン 「少し変わったシンガーですね ... マリさんって人は ... 」

マスター 「どうしてそう?」

バーテン 「せっかくのチャンスだったのに ... 」

マスター 「それは ... 彼女がシンガーである前に、一人の女性だからでしょう ... 」

バーテン 「一人の、女性 ... 」

マスター 「ちょうど ... バカルディがバカルディ・ラムに拘ることで、ダイキリではない
       ことを主張したように ... 」

バーテン 「バカルディがバカルディであるための主張 ... 」

マスター 「彼女もまた ... 自分が女であることを主張したのよ ... 」


        SE:辺りに響く、ヒールの音にまぎれて -----


          :回想 -----


マリ   「今度あなたが私の目の前に現れるまで ... 私、歌を忘れるわ ...
      (少し笑って)そう ... 私は、歌を忘れたカナリアになるのよ ... 」

男    「お前 ... 」


女(Na)  あの日から ... 愛しい人のために歌うカナリアは、歌を忘れた -----
       あれからちょうど1年 ... 彼はまだ、帰って来ない -----




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posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(1) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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