2011年08月27日

天使の夜 -scene:2-






         :サンドリオンの店内 -----



バーテン 「要するに ... お客様だけのオリジナル・カクテルを、ご希望なのですね?」

女 性  「少し無理な注文かな ... 嫌なお客ですね、私って」

バーテン 「そうですね ... 決してありがたいご注文ではございませんが ... 折角ですので
       チャレンジしてみようかと思っておりますが ... 」

女 性  「(少し驚いて)ホントですか ...?」

バーテン 「その代わりと言っては何ですが ... イメージをお話しいただけますか?」

女 性  「イメージ?」

バーテン 「そう ... カクテルのイメージです」

女 性  「カクテルのイメージ ... 」

バーテン 「それを素に、お作りしたいと思いますので ... お客様のオリジナルカクテルを」

女 性  「そうですね ... わかりました。お話ししましょう ... そのイメージを」

バーテン 「お願いいたします」

女 性  「そのカクテルのイメージは .....

      ある男と女がいたんです ... 
      その二人はとても仲が良くて、長い間同じ時間を過ごしてきました ...
      当然、彼は彼女を愛していたし、彼女も彼を愛していた ..... 」

      --- でもその二人に、突然の別れが訪れるんです ---


男    「もう会わない方がいいと思うんだ、俺たち」


女 性   --- 彼女は、変わりない自分の心うちを告白し、彼の気持ちを確かめようとしました ---


女    「私は今でもヒロシのこと好きだよ ... ちょっと危なっかしくて気が短いけど、笑うと笑顔が
      素敵な ... そんなヒロシが好きだよ ... 」


女 性   --- でも彼は ... 彼女のその思いに答えようとはしなかった ---


男    「 ..... 」


女 性   --- 彼女は、ありったけの自分の気持ちを、必死になって彼に伝えた ---


女    「ねえ、ヒロシ ... 」


女 性   --- けれど彼の心にはもう ... 彼女への愛情はどこにもなかった ---


男    「俺もうナオコのこと ... 愛してないんだ ... 」

女    「ヒロシ ... 」


女 性   --- 何故ならそれは ... ほんの昨日まで、彼と彼女結んでいた赤い糸が ...
       切れてしまったから ---



男    「もう ... 愛せなくなったんだ ... 」

女    「そう ... そうなんだ ... 私とあなたの赤い糸が、切れたんだ ... 」

男    「ナオコ ... 」


バーテン 「切れてしまった、赤い糸 ... 」

女 性  「いいえ ... 正確に言えば ... 切れたんじゃなくて、切られたんです ... 」


女    「きっと誰かに切られたんだね ... 私たちの赤い糸 ... 」


バーテン 「切られた ... ? 一体誰が、その二人の赤い糸をきったんでしょうか ...?」

女 性  「それは ... 」

バーテン 「それは ... ?」

女 性  「人を愛してしまった ... 天使の仕業だったんです ... 」

バーテン 「天使の仕業 ...?」





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2011年08月26日

天使の夜 -scene:1-






        SE:激しい雨音にまぎれて -----


バーテン(Na) それは ... とある夜の、不思議な出来事でした -----


         :サンドリオンの店内 -----



藤 堂  「待ったくひどい雨だな ... 止みそうにない」

バーテン 「この時期には珍しいですね ... こんなに降るなんて」

藤 堂  「小降りになるまでと思ってたが ... そろそろ引き上げるとするかな」

バーテン 「もうお帰りですか? 藤堂様」

藤 堂  「マスターもいないことだし ... 長居は無用だろ」

バーテン 「私では役不足ってところですか ...?」

藤 堂  「今夜はな」

バーテン 「今夜は ...?」

藤 堂  「それじゃ、ボン・ニュイ ... バーテンさん」

バーテン 「ありがとうございました ... おやすみなさいませ」


        SE:店を出る藤堂 -----

         :店内の一角、男と女がいる -----


女    「どうしてなの ...? 急にそんなこと ... 」

男    「そういう気分なんだ ... 」

女    「気分って ... そんなの勝手過ぎない ... ?! 」

男    「勝手なのはわかってる ... でも、今の俺の素直な気持ちなんだ ... 」

女    「どうしてそうなるのよ ... ついこの間までは ... いいえ、ほんの少し前まで
      うまくやってたんだよ、私たち ... なのにどうして ... 」

男    「 ... ごめん ... 」

女    「ちゃんと説明して ... 理由を聞かせてよ、お願いだから ...
      でないと私、このままじゃ帰れない ... 」

男    「 ..... 」

女    「黙ってないで、何とか言って ... 」

男    「 ..... 」

女    「何とか言ってよ、ヒロシ ... 」

男    「 ... バーテンさん ... お代わりもらえるかな ... 」

バーテン 「かしこまりました ... 」

女    「ヒロシったら ...!」


        SE:店のドアが開き、一人の女性が入ってくる -----


バーテン 「いらっしゃいませ ... 」

ヨーコ  「 ... どうも ... こんばんは ... 」

バーテン 「この雨の中を、ようこそ ... 傘はこちらの方へ ... 」

女 性  「ああ、私 ... 傘持ってませんから ... 」

バーテン 「エッ ...? それでは傘も差さされずに、この雨の中を?」

女 性  「そういうことになりますね ...(少し笑う)ウフフフ ... 」

バーテン 「それにしては ... 少しも濡れていらっしゃらないんですね ... 」

女 性  「それは ... 雨が私をよけて降るんですよ ... だから」

バーテン 「雨がよけて降る? (少し笑い)そうですか ... それではそういう事に
      しておきましょう ... さあ、どうぞ」

女 性  「 ... どうも」


         :女性はカウンターの席に座る -----


バーテン 「 ... ご注文は、いかがいたしましょうか?」

女 性  「そうね ... 少し難しい注文ですけど、かまいませんか?」」

バーテン 「ご満足頂けますよう、努力は致しますが ... 」

女 性  「それじゃ ... 私のカクテルを作って下さい ... 」

バーテン 「ハッ ... ?」

女 性  「私にぴったりの、カクテルを ... 」

バーテン 「ぴったりのカクテル ... ですか ... ?」

女 性  「そう ... 私だけのカクテルを、作って下さい ... 」





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2011年08月25日

止まり木 / 第三夜 -recipe-







マスター  今宵も「バール サンドリオン」へお越しいただき、誠にありがとうございました...

      ではここで... 今回登場致しましたカクテルを、改めてご紹介させて頂きます...

      まず始めに、ジンをベースにした「ギムレット」のオン・ザ・ロック版と言われる
      「ジン・ライム/Gin&Lime」.....
      このカクテルは、材料が同じでもシェイクしただけでカクテル名前が変わってしまうと
      いう、一種ユニークなカクテルでもございます ...

      ベースとなりますのはドライ・ジンで、ベーシックなものではゴードン・ビーフィーター
      ハーブっぽいかすかな甘さのボンベイやそれより少し甘めのタンカレー、さらに甘めの
      オールド・トムと、お好みのテイストで様々なバリエーションをお楽しみ頂けます。
      
      さてそのレシピは ...
      オールド・ファッション・グラスにドライ・ジン(45ml)を入れ、そこへ氷とライム・
      ジュース(15ml)を加え、軽くステアした後にスライス・カットしたライムを添えれば
      出来上がりです。

      ちなみに、ここで使用いたしますオールド・ファッション・グラスですが ...
      そもそも「オールド・ファッション」というカクテルに使われることからそう呼ばれた
      由来を持ち、皆様がよくご存知のロック・グラスと呼ばれるものです。

      次にご紹介致しますカクテルは「マルガリータ/Margarita」...
      その名前ははスペイン語の女性人名とされ、英語のマーガレットという花の名称でもあり
      元々の語源はギリシャ語の「真珠」と言う意味でもあるそうです ...

      またこのカクテルの名前に関する誕生にはいくつかの諸説がございまして ...

      そのひとつには、創作者であるロサンゼルスのバーテンダーの、亡きメキシコの恋人の
      名前に因んで名付けられたという説 ...

      さらにもう一つは ... どんなお酒も塩をなめながら飲むガールフレンドのために
      メキシコのホテルのバーテンダーが創作し、そのガールフレンドの名前をとって名付けたと
      いわれる説がございます。

      いずれにしましても ... 
      恋人を想い愛しんで作られたと伝えられるこの「マルガリータ」は、ロマンチックな情熱の
      カクテルと呼ばれるに値する、一品ではないかと思われます ...

      そのレシピは ...
      テキーラ(40ml)、ホワイト・キュラソー(15ml)、ライムジュース(15ml)をシェーカーに
      入れ、シェークし、スノー・スタイルにしたカクテル・グラスに注げば出来上がりです。
      またこの場合のスノー・スタイルですが ...
      グラスの縁をライムでなぞり、そこへ塩をまぶしつけ、雪が凍りついたようにすることを
      そう呼びます ...  

      さてこの情熱のカクテル「マルガリータ」...
      皆様はどのようなシーンでお口になされるのでしょうか ...
      

      それでは ...
      またのお越しを心よりお待ちしております .....

      ありがとうございました -----





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止まり木 / 第三夜 -final-






マスター(Na)止まり木とは.....
     それは流離い飛ぶ鳥の、翼休めし静寂の場-----

     また止まり木とは.....
     それはつかの間の微睡みに、刹那の夢見し安逸の場-----

     そして止まり木とは.....
     それは夜の帳に覆われた街に、ひっそりと佇む静穏の酒場-----

     さて.....  今宵、その止まり木に訪れし方は-----


         :サンドリオンの店内 -----


マスター 「 ... これ以上ここでジンを口にされますと ... 心の熱まで冷めてしまいますので ... 」

男    「マスター ... それでこのカクテルですか ... 確かベースはテキーラ」

マスター 「情熱のスピリッツと呼ばれております」

男    「情熱か ... 」

マスター 「少しお節介でした ... お許し下さい ... 」

男    「いいえ、とんでもない ... 逆にありがたいですよ、マスターに気遣ってもらって ... 」


         :男、ゆっくりとカクテルを一口 -----


男    「ジン・ライムとは違って、少しドライだな ... テキーラか ... 」

マスター 「お気に召して頂けましたでしょうか ... 」

男    「気に入るというより ... むしろ感激ですね ...
      でも何故このカクテルなんです? 他にもテキーラベースのものは色々あるのに ... 」

マスター 「このカクテルの由来はご存知でしょうか?」

男    「残念ながら ... 」

マスター 「このカクテルの名前は、そもそも人の名前なんです ... それも女性の」

男    「女性の名前 ...?」

マスター 「このカクテルを作ったバーテンダーの初恋の人の」

男    「初恋の人 ... 」

マスター 「しかし ... その恋人は不運の事故でこの世を去り、彼はその彼女を悼んで
      このカクテルを作ったと聞いております ... 」

男    「彼女に対する精一杯の心の表現だったと ... 」

マスター 「そう解釈出来るのではないでしょうか ... 」

男    「心の表現か ... 」

マスター 「その銀の指輪は、女性の指に似合うものだと思います ... 」


        :男、指輪を見つめる -----

        :カウンターに小さくはじける指輪の音 ----- やがて、止まる -----


男    「マスター ... 確かにジンは心を冷やしたけど ... このテキーラは違いますね ... 」

マスター 「 .....(ゆっくりと頷く) 」

男    「しばらくジンとはオサラバして、こいつをベースにしてみますよ ... 」

マスター 「お一人でですか ... ?」

男    「まさか ... 彼女とですよ」

マスター 「いつでも、お待ちしております ... 」

男    「その時にはマスター ... このカクテルをお願いしますね」

マスター 「かしこまりました ... マルガリータ、ですね ... 」



男(Na)  その店は、北野の一角にあるバーだった ...

      夜の帳に覆われた街に、ひっそりと佇む静穏の酒場----

      静かに流れるジャズの旋律と、止まったままの時計が象徴的な

      流離い飛ぶ鳥の、翼休めし静寂の場 ----

      そう ... それはまさしく止まり木のような、そんな酒場だった ----





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2011年08月24日

止まり木 / 第三夜 -scene:4-






マスター(Na)止まり木とは.....
     それは流離い飛ぶ鳥の、翼休めし静寂の場-----

     また止まり木とは.....
     それはつかの間の微睡みに、刹那の夢見し安逸の場-----

     そして止まり木とは.....
     それは夜の帳に覆われた街に、ひっそりと佇む静穏の酒場-----

     さて.....  今宵、その止まり木に訪れし方は-----


         :サンドリオンの店内 -----


マスター 「彼女はご存じないんでしょうか? この指輪のことを」

男    「ええ、何も話してませんからね ... と言うより、ここへ来る前に喧嘩別れ
      しちゃいましたから、夢にも思ってないでしょう ... 」

マスター 「だからいらっしゃらないと ... 」

男    「そう ... ささいなことだったんですけど、ついカッとなっちゃって ...
      大人気ないと言われればそれまでなんですけど ... 彼女の振る舞いが当然だと
      思ってただけに、自分の気に入らない態度をとられると、ついつい素っ気無い
      態度とったり邪険にしたりで ... あぐらかいてたんですね、自分の気持ちに ... 」

マスター 「それは反省ですか ...?」

男    「そうなりますね ...
      さっきのマスターの時計の話しに、自分にとっての彼女の存在が、はっきりしました
      から ... 」

マスター 「彼女は本当にいらっしゃらないんでしょうか ... 」

男    「来ないと思いますね ... 絶対に」

マスター 「それはある種の確信なんでしょうか ...?」

男    「哀しい確信ですね ... 」

マスター 「それでも ... この店へお一人でお見えになった ... 」

男    「ジンが飲みたくなった ... そんな気分だったから ... 」

マスター 「こよなく、ジンがお好きなんですね ... 」


         :男、ゆっくりとグラスのカクテルを飲み干す -----

        SE:グラスの氷の音 -----

         :グラスを置く -----


男    「同じやつ、下さい ... 」

マスター 「恐れ入ります ... お薦めしたいカクテルがあるんですが ... いかがでしょうか ...?」

男    「へー ... 興味津々だな ... マスターお薦めのカクテルだなんて。いいですよ
      お願いします」

マスター 「ありがとうございます ... では、しばらくお待ち下さい」


        SE:スノースタイルのグラスが用意される -----

         :シェーカーに氷が入れられ、カクテルベースが注がれる -----

         :手際よくシェイクされ、グラスへ注がれる -----


マスター 「お待たせいたしました ... どうぞ」


         :男の手元へ、グラスが置かれる -----


男    「マスター、これは ...?」

マスター 「はい ... ご覧おとおり、あえてジンは使っておりません ... 」

男    「どうして ...?」

マスター 「そもそもジンは薬品として誕生したものです ... 」

男    「そう、解熱剤として ... でもそれがどうしたっていうんです?」

マスター 「 ... これ以上ここでジンを口にされますと ... 心の熱まで冷めてしまいますので ... 」

男    「マスター ... 」





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