2011年07月23日

ソムリエ [ Vintage.U] -scene:3-





         :サンドリオンの店内 -----


マスター 「それでは ... お二人の答えを申し上げます ...
      まずは最初のワインですが ... イブキ様の方は『カベルネ・ソーヴィニョン
      "ナパ・ヴァレー" [2007] 』とあります」

男    「タンニンが豊かだがやや酸味に欠け、アルコールの高さから甘みさえ感じる程の
      濃縮度 ... その答えに間違いはない ... 」

マスター 「確かにご正解です ... そして、タクヤさんも同じ答えでした ... 」

男    「ほう ... なかなかやるんだね... 」

マスター 「そして次のワインですが ... タクヤさん、答えが白紙ですが ... 」

男    「エッ? 白紙だって?(少し笑い)... それじゃ結果は出たね」

マスター 「タクヤさん ... これは ...?」

タクヤ  「書く必要がない ... それが答えです、マスター ... 」

バーテン 「書く必要のない答え ...?」

ヒトミ  「タクヤ ... 」

男    「ここまでだな ... フランス帰りのソムリエ君 ... 」

マスター 「しかしイブキ様 ... 残念ですが、お答えになった2本目の銘柄は合っておりますが
      ヴィンテージが違っております ... 」

男    「何だって?! そんなはずは ... 」

マスター 「2本目にお出ししたワイン ... 確かに同じ銘柄のワインですが、ヴィンテージも
      同じワインなのです ... 」

男    「そ、そんな馬鹿な ... 」

マスター 「これがその2本のワインです ... 」


        :カウンターに置かれる同じ2本のワイン -----


ヒトミ  「ホントだわ ... まったく同じヴィンテージのワイン ... 」

男    「でもどうして...」

マスター 「それはボトル・バリエーションのせいです ... 」

バーテン 「ボトル・バリエーション ...?」

男    「まさかそんな ... 」

マスター 「同じ生産者、同じヴィンテージ、同じ原産地呼称、同じボトルサイズの、まったく
      同一のワインでありながらも、ボトルによって色調や香り、味わいに微妙な差が
      生じる ... そのことをワイン研究家の間では、ボトル・バリエーションと呼んで
      います ... 」
タクヤ  「つまり ... 同じワインでも、様々な要因で微妙な違いが生まれるということ ... 」

ヒトミ  「様々な要因って ...?」

タクヤ  「例えば輸入経路 ... 同じ船便でもリーファと呼ばれる低温コンテナで輸入された
      ものと、温度調整のないドライコンテで輸入されたものとでは、明らかにその差が
      ワインに出る ... 」

バーテン 「つまり ... その違いがこの2本のワインだと ... 」

男    「なるほどわかった ... 講釈はそのぐらいでいいでしょう ... で、結果はどう判断
      するべきなんだろうか?」

マスター 「それは ... 」

男    「こう云っては何だが、僕はこう判断するね ... たとえ違うヴィンテージで答えたに
      せよ、白紙よりはマシじゃないだろうか ... 」

ヒトミ  「マスター ... 」

タクヤ  「好きに解釈すればいいさ ... 」

ヒトミ  「タクヤ ... 」


        :タクヤ、店を出て行く -----


ヒトミ  「あ、タクヤ ...!」


        :ドアの閉まる音 -----


マスター 「タクヤさん ... 」

男    「これで決まったな ... 」

バーテン 「マスター ... 」

マスター 「白紙の、答え ... 」





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posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(1) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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