2011年07月14日

止まり木 / 第二夜 -scene:4-




時に酒場は憩いの場であり...
時に酒場は癒しの場でもある -----

夜毎それぞれの思惑を胸に...
束の間、時の流れに身をゆだねる -----

セピア色に染められたはずの欠片たちが...
過去から今、鮮やかに蘇る -----


今宵、この店に集りし鳥たちは
止まり木の下、どんな時間を紡ぐのか-----



マスター 「ではその方と今夜、ここでお会いにると... 」

男    「そう... 5年ぶりの再会というわけだ... 」

マスター 「そうでしたか... 」

男    「(軽く笑い)それにしても鬼の撹乱だったな、まったくあの時は... 」

女    「まさかそんな事があったなんて... 事実は小説より奇なりって感じ... 」

男    「そうだな... そうかもしれないな... 」


男はそう云って、グラスの酒を飲み干した -----


マスター 「お代わり、お作り致しましょうか...?」

男    「ああ... そうしてもらおうかな... 」

女    「あ、マスター... 私にもお願いします」

マスター 「はい、かしこまりました... 」


氷の入ったオールド・ファッション・グラスにドランブイが注がれ ...
軽くステアされる -----


男    「ほう... 君もドランブイを?」

女    「ええ... 受け売りなんですけどね... 一度彼から教えてもらって、そこからは
      病み付きになってしまって... 」

男    「なるほどな... そう云えば奴も喜んでこれを飲んでたな... 」

女    「その泥棒君がですか...?」

男    「ああ... やっぱり涙を流しながら、美味い美味いって言ってたよ... 」

マスター 「お待たせ致しました... どうぞ」

男    「ありがとう... 」

女    「どうも... 」

マスター 「ちなみに... このドランブイはスコットランド唯一のリキュール酒で
      その歴史も古く、その名前の意味は『満足すべき飲みもの』と聞いております... 」

女    「満足すべき飲みものか... そういえば、彼もそんなこと言ってたな... 」

男    「満足か... 奴にとってはあの時、まさにそうだったかもしれんな... 」

女    「単なるお酒が... 時として人を励ましたり、喜ばせたりすることがあるように...
      お二人にとってはこのドランブイが、深い意味合いを持つお酒のようでですね... 」

男    「しかしそれもまた... 自分に似合った酒場でグラスを傾けることで感じる味わいだ...
      私の場合、それがこの店でなければ駄目なんだろうな... きっと」

マスター 「... 恐れ入ります... 」

女    「その感覚... 私にも何となくわかりますよ... 」

男    「そう言えば... いつかマスターが言ってたな... 」

マスター 「はい...?」

男    「酒場は飛ぶ鳥たちの、翼休めし止まり木だと... 」

マスター 「はい... 確かに... 」

男    「こんなことを言うのもなんだが... 私はこの店と出会えて、良かったと思ってるよ」

マスター 「楠木様... 」

男    「私にとってはやっぱりこの店が... 翼を休める止まり木だ... 」

女    「止まり木か... それにしても、私の止まり木は遅いな... 」


その時、店のドアが開く -----


マスター 「いらしゃいませ、ようこそ... 」

女    「あ、ジョン! 何してたの? 遅刻よ!」

客    「ハーイ...!」

男    「おお来たか... 久しぶりだな... 」

女    「エッ?! それじゃ、ジョンがその泥棒?」

男    「ということは... 会わせたいフィアンセというのは、この娘さん...?!」


マスター (Na)時に酒場は、別れの場であり...
      時に酒場は、出会いの場でもある...
      そしてまた時に酒場は、再会の場でもある -----

      今宵の酒場の止まり木は...
      その出会いと再会の喜びにグラスを傾けられた一夜でした -----



- Recommended menus -


posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(1) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
blogramで人気ブログを分析 にほんブログ村 小説ブログ 脚本・シナリオへ
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。