2011年07月10日

ミセス マティーニ -scene:final-




その夜...
グラスのカクテルにも似た可憐な女性は ...
タロットの絵札たちに一夜の運命(さだめ)を委ねていた -----

その女性の手元には ...
少し危険な香りを漂わせた妖しげに輝くカクテル ...
それは、マティーニ -----



   女 「ちょっとしたことで知り合った人なの... でも意識したのは二度目に会った時で
      今夜が三度目の正直ってところ... 
      さっきのタロット通り... 曖昧な精神状態が恋のはじまりで、その傾向が真実を
      見失うってわけね... 
      本音を云えば迷ってるの、今... 」

マスター 「タロットでは、答えがだせなかったんでしょうか... 」

   女 「解決のカードが誤算と出た時にこれだと思ったけれど、最後のカードで意味が
      分からなくなったの... 」

マスター 「死神の逆位置... 好転する運命... 」

   女 「でも彼は来ない... 」


沈黙を覆うようにジャズが流れている -----


マスター 「お作りいたしましょうか...?」

   女 「ええ... お願いするわ... 今度は思いっきりドライにしてくださる?」

マスター 「かしこまりました... 」


グラスでステアされる音 -----
やがてカクテル・グラスに注がれ、女性の前に置かれる -----


マスター 「お待たせいたしました... どうぞ」

   女 「どうも... 」


女性は少しだけ口にすると -----


   女 「マスター、これは...?!」

マスター 「はい... ただのジンです」

   女 「私は... 」

マスター 「でも... 飲まれる方によっては、最高のドライ・マティーニかと... 」

   女 「最高のマティーニ... 」

マスター 「この棚にあるヴェルモットのラベルを見ながら、そのドライ・ジンを口にされる...
      これに勝るマティーニはどこのもございません... 」

   女 「ハート・イン・ザ・カクテル... 」

マスター 「そんなところでしょうか... 」

   女 「ただのドライ・ジン... でも飲む人によっては最高のマティーニか... 」

マスター 「ご納得頂けましたでしょうか... 」

   女 「... ええ... とても素敵なマティーニをありがとう... 」

マスター 「恐れ入ります... 」


女性は時計に目をやり -----


   女 「そろそろいい時間ね...  私、行くわ... 」

マスター 「よろしいんですか? お待ち合わせは... 」

   女 「これが運命(さだめ)... 最後のカードの結果かもしれない... 」

マスター 「このまま会われない方がいいと... 」

   女 「それが好転の証しなのかも... 」

マスター 「死神のカードの逆位置... 」

   女 「今夜はありがとう... マスター 」

マスター 「いいえとんでもございません... こちらこそありがとうございました... 」

   女 「じゃ... 」

マスター 「マティーニにはじまり、マティーニに終わる... ですね... 」

   女 「そうね... そんなところね... 」


その時、店のドアが開く -----


マスター 「いらっしゃいませ、ようこそ.... 」

   女 「...エ... ?! 」




[ recipe & episode ]
posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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