2011年07月07日

ミセス マティーニ -scene:2-




その夜...
静かに流れるジャズの旋律は...
ゆっくりと時間を刻んでいた...
早くもなく遅くもなく-----

そしてその傍ら...
女性の手元にあるグラスは...
いつになく輝いていた...
無色透明な眩い色合いに染められて...

そのカクテルの名は、マティーニ-----



   女 「... 以前にも、どこかのお店でそんなことを言われたことがあったわ... 」

マスター 「そうでしたか... 生憎の二番煎じになりましたね... 」

   女 「いいえ... その時はお世辞程度にしか聞こえなかったし... 私自身、今ほど
      マティーニを意識してなかった頃だったから、何も響いてこなかった... 」

マスター 「では... 今は...?」

   女 「マスターの台詞には響いたわ... 素直に嬉しかった...
      カクテルの中でも今だ人気があり、しかも奥深いマティーニ... それがお似合い
      だと言われて悪い気になんかなれない... 」

マスター 「それは幸いです... 」

   女 「飲む人によって色んなレシピがあるのよね... このマティーニは... 」

マスター 「そうですね... スタンダードなレシピはあるものの、それぞれの嗜好でバリエーションが
      存在するカクテルといえますね... 」

   女 「神秘的だわ... 」


次の瞬間 ...
女性は手元の時計に目をやった ...
微かにその瞳が翳りを表現した -----


   女 「おかしな客ね、私も... たった2杯のカクテルで、小一時間もここにこうしてるんです
      もの... それもよりによってこんな日に一人で... 」

マスター 「それは... 今夜が七夕ということでしょうか...?」

   女 「偶然ね... 」

マスター 「お待ち合わせでしたか... 」

   女 「一応、ね... 」


束の間...
会話は途切れ、 流れるジャズの旋律だけが時間を刻んだ -----


   女 「そうだ... ここ少しいい? マスター」

マスター 「はい...?」

   女 「実は私、タロットに凝ってて... 」

マスター 「占い、でしょうか...?」

   女 「そう」


女性はバッグから一束のカードを取り出す -----


   女 「こうなると、ますます変な客ね... いきなりタロットカードなんかバッグから
      取り出すんだから... でも、これって結構バカにならないものなのよね... 」

マスター 「カード占い... 」

   女 「他にも占星術とか九星気学だとか色々あるでしょ... 」

マスター 「血液型もですね... 」

   女 「そう... でも大概の占いは、大体同じ年の同じ日に生まれてたり、同じ血液だったり
      すると、ほとんど同じ結果になってしまう傾向にあるの... だから本当の意味での
      個人の占いにはなりにくい...
      それに、その場その場で占いたいことの結果が得られなくて、ほとんどがあらかじめ
      用意された答えだけ...」

マスター 「そうなんですか... 」

   女 「自分のことを自分で占えない... ある意味、他力本願かも... 」

マスター 「他力本願... ?」

   女 「でもこのタロットはそんなことはない... 自分の知りたいことを知りたい時に
      自分の手で知ることが出来るから... 」


その女性は、カウンターに22枚のカードを広げ、崩すように混ぜる -----
やがてカードを一組にまとめ、カウンターの中央に置き -----


   女 「これでいいわ...」

マスター 「それで一体、何を占うのでしょうか...?」

   女 「7月7日... 今夜の私の、運命かな... 」

マスター 「...エ...?」






posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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