2011年07月06日

ミセス マティーニ -scene:1-




その夜...
彼女は... と言うより、その女性は一人...
この店のカウンターの端でグラスを傾けていた -----

目の前のグラスのカクテルそのもののように ...
その姿は可憐であり、その反面妖艶だった -----

今宵もまた静かに ...
この店でのある出来事の、幕が上がった -----



   女 「すみません... 」

マスター 「はい... 」

   女 「同じもの... 頂けます...? 」

マスター 「かしこまりました... 」

   女 「あ、ごめんなさいマスター... 」

マスター 「はい...?」

   女 「今度はドライでお願いするわ」

マスター 「レシピはいかが致しましょうか?」

   女 「そうね... お任せで... 」

マスター 「かしこまりました... 」


ミキシング・グラスでステアされる音 -----
ほどなくグラスに注がれ、オリーブが添えられ -----
グラスが女性の手元へ -----


マスター 「お待たせ致しました... どうぞ」

   女 「ありがとう」


女性はゆっくりと一口、味わいながら口にする -----


   女 「... 最高だわ... すごいレシピ... 」

マスター 「恐れ入ります... 」

   女 「ちなみに、このジンベースはビーフィーター... ヴェルモットはタンカレーって
      ところ?」

マスター 「いいえ... これはノイリーです」

   女 「大したものね... 一流のホテルのバーでも、このレベルのものには中々お目にかかれ
      ないわ」

マスター 「かなりお詳しいんですね... 」

   女 「そうでもないわ... ただこれが好きだから詳しいだけなの」

マスター 「他のものはいかがなんでしょうか?」

   女 「ダメダメ、全然なの。ウイスキーもブランデーもワインも日本酒も、みんなダメ...
      唯一、このカクテルを口にするだけ... というより、私の口に合うみたいで...
      だからどこへ行ってもこればっかりで、自然と舌がこえちゃって、ついつい含蓄めいた
      こと云っちゃうのよ... ごめんなさい」

マスター 「いいえ... お気になさらず... 」

   女 「でも感激だわ... これほどのものを口に出来るなんて思ってもみなかった... 」

マスター 「余程お好きなんですね... 」

   女 「そうね... 云えるわね。何とかの一つ覚えってとこかしら... 」

マスター 「いいえ... むしろ極めていらっしゃると、そのように思いますが... 」

   女 「いい響きね... その極めるって... 」

マスター 「お客様にはよくお似合いです... 」

   女 「エ...?」

マスター 「そのカクテル.... マティーニが... 」





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posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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