2011年07月05日

bar friend 〜 希 望 〜 -scene:final-




いつもの時間にいつのも場所で...
いつもと同じカクテルを口にする男...

いつもならその右隣りの席には彼女がいた...

取り留めのない話をし、気取ることのないスタンスで
同じ時間を所有していた...

しかし今宵は...
バー・フレンドの姿は、そこにはなかった----



マスター 「いかがなさいますか? もうラスト・カウントですが... 」

   男 「そっか... もうそんなに飲んだんだ... 」

バーテン 「お作りいたしましょうか... 同じものを」

   男 「... それじゃ、アレを頼もうかな... 」

バーテン 「アレと申されますと...?」

   男 「そう... 以前、彼女が飲んでいた、レスポアールを... 」

マスター 「そうですね... 今夜はそれがよろしいですね... 」

バーテン 「かしこまりました... 」


グラスに氷が入れられ、注がれる音-----

男の耳元で、女の声が聞こえた-----


   女  ラスト・オーダーはレスポワールにしてください...
      私の最後のお願いです...


   男 「私の最後のお願いか... 」

バーテン 「お待たせいたしました... レスポワールです... 」


男はしばらくグラスを見つめていた-----
やがておもむろに-----


   男 「マスター... 」

マスター 「はい...?」

   男 「どうだろう... 一緒に乾杯、してもらえないかな... 」

マスター 「乾杯、ですか... 」

   男 「そう... このレスポワールで、あの彼女に... 」

マスター 「レスポワールで... 彼女に... 」

   男 「そう... 多分もう二度と会えない... バー・フレンドの彼女にね... 」

マスター 「...かしこまりました... 」


やがてグラスが重ねられ-----
男はグラスのものを軽く一口、含んだ----


   男 「これは...?!」 


マスター  バー・フレンド...
      それは、行きつけの酒場で幾度となく顔を合わせていながらも、お互いの
      名も知らいまま、プライベートを語ることもなく.....
      ただその場の出会いにグラスを傾け合い、同じ時間を過ごす仲間-----

      そこには何の気負いもなく、何の煩わしさもない会話が交わされております...

      しかしひとたび... そのバー・フレンドという暗黙の関係がリズムを失うと...
      その酒場からグラスが一つ、消えていくと云われております-----

      バー・フレンド...
      それは一期一会にも似た、酒場という止まり木での出会いと別れ...
      今宵も飛ぶ鳥たちは... その運命(さだめ)にグラスを傾け、語り合う----




[ recipe & episode ]
posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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