2011年07月01日

bar friend 〜 希 望 〜 -scene:1-


およそ言葉も交わさないであろう日常の距離...
決して顔を合わすことのはずのないそれぞれのテリトリー...

女は東を向いて時間を過ごし...
男は西を見ながら時間に流される...

そんなテリトリーの違う二人が出逢った場所...
それがここ... バール サンドリオン....


今宵の物語が、静かに始まった----



   男 「それじゃ、彼女はもう... 」

バーテン 「はい... そう伺いました... 」

   男 「彼女が... そんな... 」

バーテン 「けれど... 確かにそうおっしゃられてましたが... 」

   男 「まさか... 」


マスター -----それはちょうどこの店での... とある夜の出来事でした-----



   男 「(少し酔っている)バーテンさん... お代わりもらえるかなァ... 」

バーテン 「もう8杯目になりますが... よろしいんですか? お客様... 」

   男 「何云ってるんだい... まだ8杯目だろ? 大丈夫だよ」

バーテン 「ですが... 」

   男 「何だよ... お客のオーダーを無視するのかな? この店は」

バーテン 「いえ、決してそんなことは... 」

   男 「それとも客を選ぶのかな...?」

バーテン 「いいえ、とんでもありません... ただ... 」

   男 「ただ何?」

バーテン 「速いペースで... しかもかなり飲まれていらっしゃるので、お体に良くないの
      ではと思いまして... 」

   男 「ほう... 俺のこと心配してくれてるんだ、バーテンさん...
      (少し笑い)こんな男のこと、心配してくれてるんだ... アハハハ... 」

バーテン 「あのう、お客様... 」

   男 「(笑いながら)俺みたいな男でも、気にかけてくれるんだ、バーテンさんは」

バーテン 「お客様... 」

   男 「いいからいいから... 
      心配してくれるなら、黙ってもう一杯作ってよ、バーテンさん。その方が俺は
      嬉しいよ」

バーテン 「(困惑)あ、ハア... 」

マスター 「同じもので、よろしいでしょうか...?」

バーテン 「マスター... 」

   男 「オッ、流石だね... そうだな... そうしてもられるかな... 」

マスター 「かしこまりました... 」

   男 「やっぱり話がわかるね... マスターとなると」

マスター 「ですが、お客様... 誠に申し訳ございませんが、これがラストオーダーという
      ことで、お願い出来ますでしょうか... 」

   男 「...エッ...?」

マスター 「生憎とこの店では... 
      お客様お一人のカクテル・カウントは、ナインハーフまでとなっております
      ので... 」

   男 「ナインハーフ...?」

マスター 「はい」

   男 「それってどういう意味なのかな? マスター」

マスター 「ナインハーフ... 
      つまり9杯目以上口にされるカクテルは、それはもうカクテルではございま
      せんので... 」

   男 「それじゃ一体、何なのかな?」

マスター 「体裁のいい、ただのアルコールです... 」

   男 「ただのアルコール...」

   女 「つまりこのお店には... 
      ただの酔っ払いに飲ませるカクテルはないってことですよね... 」

マスター 「エッ...?」





posted by マスターの知人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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