2011年07月16日

ソムリエ [ Vintage.T] -scene:1-





マスター  それは ...
      彼女のもとへ届けられた、一通のエアメールから始まる出来事でした -----



タクヤ   親愛なるヒトミへ .....

      元気にしてるんだろうか .....?

      まあ、お前のことだから、相変わらずの調子でやってることだと思うけど .....

      それにしても長い間、連絡しなくて悪かった。

      別に悪気はなかったんだが、何となくタイミングがずれちゃって、そのまま

      ズルズルと今日まできちゃって ..... ホント、申し訳なかった .....

      でも、やっとまともな手紙を書けるような状況になったんで、これを送ります。

      実は今度、日本へ帰ることにしました。

      こっちでの仕事もひと段落し、一応の手応えもあったんで、久しぶりに神戸に

      帰ろうかと思い、そう決めました ..... とは言っても、たった一週間程の日程

      ですが .....

      でもまあ何はともあれ、今度の土曜日にはそっちへ帰りますんで、そのつもりで

      よろしく!

      それじゃ楽しみにしてるので .... まずは一報まで -----




ヒトミ   何故今頃になって帰ってくるの .... どうして .....

      2年近くも、私を一人っきりにさせたくせに ..... 私の時間を奪ったくせに .....

      どうして今頃 .....?

      楽しかったはずないじゃない ..... 淋しくなかったわけないじゃない .....

      だって私、一人だったのよ、ずっと .....

      そう ..... あなたとの思い出だけが、私のそばにいたわ .....

      もう諦めてた ..... もう駄目だと思ってたのに .....

      なのにどうして .....?

      だって私、今 -----






タグ:エアメール
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2011年07月15日

止まり木 / 第二夜 -scene:final-







マスター  今宵も「バール サンドリオン」へお越しいただき、誠にありがとうございました...

      ではここで... 今回登場致しましたリキュールを、改めてご紹介させて頂きます...

      その名は「ドランブイ/DRAMBUIE」-----

      平均熟成15年という長い歳月を経たハイランド・モルトをベースとし、およそ

      40種類ものスコッチ・ウイスキーにハーブと蜂蜜を配合して造られたもので、比較的

      甘い、スコットランド産のリキュール酒です。


      この「ドランブイ」.....

      その歴史はリキュールの中でも古く、極上の蜂蜜リキュールとして知られています。

      そもそもスコットランドの蜂蜜はヒースの花から取れる極上のもので、ヘザー・ハニー

      とも呼ばれ、これを薬草に加えた蜂蜜酒は、強壮剤として重宝されているようです。      

      ちなみにこの「ドランブイ」を使ったカクテルをご紹介致しますと .....

      同じ生まれであるスコッチ・ウイスキーを使った「ラスティ・ネール」.....

      またそのベースに、オレンジ・ビターズとレモンピールを加えステアした

      「スコッチ・キルト」 .....

      そのレシピからレモンピールだけを省き、シェークしたものが「セント・アンドルース」

      と .....

      いずれの場合も、スコッチ・ウイスキーとの組み合わせがベースとなっている

      カクテルですが、それぞれに趣のあるカクテルとなっております。


      さて皆様の場合は ... 「ドランブイ」をどのような形でお召し上がりに

      なられるでしょうか ...?


      オン・ザ・ロックでしょうか? それともカクテルになさいますか?


      いずれにしましても ... この「ドランブイ」の場合 ...

      その名前の意味どおりに、満足される飲み物になることと思います ...


      それでは...

      またのお越しを、心よりお待ちしております...

      ありがとうございました -----




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2011年07月14日

止まり木 / 第二夜 -scene:4-




時に酒場は憩いの場であり...
時に酒場は癒しの場でもある -----

夜毎それぞれの思惑を胸に...
束の間、時の流れに身をゆだねる -----

セピア色に染められたはずの欠片たちが...
過去から今、鮮やかに蘇る -----


今宵、この店に集りし鳥たちは
止まり木の下、どんな時間を紡ぐのか-----



マスター 「ではその方と今夜、ここでお会いにると... 」

男    「そう... 5年ぶりの再会というわけだ... 」

マスター 「そうでしたか... 」

男    「(軽く笑い)それにしても鬼の撹乱だったな、まったくあの時は... 」

女    「まさかそんな事があったなんて... 事実は小説より奇なりって感じ... 」

男    「そうだな... そうかもしれないな... 」


男はそう云って、グラスの酒を飲み干した -----


マスター 「お代わり、お作り致しましょうか...?」

男    「ああ... そうしてもらおうかな... 」

女    「あ、マスター... 私にもお願いします」

マスター 「はい、かしこまりました... 」


氷の入ったオールド・ファッション・グラスにドランブイが注がれ ...
軽くステアされる -----


男    「ほう... 君もドランブイを?」

女    「ええ... 受け売りなんですけどね... 一度彼から教えてもらって、そこからは
      病み付きになってしまって... 」

男    「なるほどな... そう云えば奴も喜んでこれを飲んでたな... 」

女    「その泥棒君がですか...?」

男    「ああ... やっぱり涙を流しながら、美味い美味いって言ってたよ... 」

マスター 「お待たせ致しました... どうぞ」

男    「ありがとう... 」

女    「どうも... 」

マスター 「ちなみに... このドランブイはスコットランド唯一のリキュール酒で
      その歴史も古く、その名前の意味は『満足すべき飲みもの』と聞いております... 」

女    「満足すべき飲みものか... そういえば、彼もそんなこと言ってたな... 」

男    「満足か... 奴にとってはあの時、まさにそうだったかもしれんな... 」

女    「単なるお酒が... 時として人を励ましたり、喜ばせたりすることがあるように...
      お二人にとってはこのドランブイが、深い意味合いを持つお酒のようでですね... 」

男    「しかしそれもまた... 自分に似合った酒場でグラスを傾けることで感じる味わいだ...
      私の場合、それがこの店でなければ駄目なんだろうな... きっと」

マスター 「... 恐れ入ります... 」

女    「その感覚... 私にも何となくわかりますよ... 」

男    「そう言えば... いつかマスターが言ってたな... 」

マスター 「はい...?」

男    「酒場は飛ぶ鳥たちの、翼休めし止まり木だと... 」

マスター 「はい... 確かに... 」

男    「こんなことを言うのもなんだが... 私はこの店と出会えて、良かったと思ってるよ」

マスター 「楠木様... 」

男    「私にとってはやっぱりこの店が... 翼を休める止まり木だ... 」

女    「止まり木か... それにしても、私の止まり木は遅いな... 」


その時、店のドアが開く -----


マスター 「いらしゃいませ、ようこそ... 」

女    「あ、ジョン! 何してたの? 遅刻よ!」

客    「ハーイ...!」

男    「おお来たか... 久しぶりだな... 」

女    「エッ?! それじゃ、ジョンがその泥棒?」

男    「ということは... 会わせたいフィアンセというのは、この娘さん...?!」


マスター (Na)時に酒場は、別れの場であり...
      時に酒場は、出会いの場でもある...
      そしてまた時に酒場は、再会の場でもある -----

      今宵の酒場の止まり木は...
      その出会いと再会の喜びにグラスを傾けられた一夜でした -----



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2011年07月13日

止まり木 / 第二夜 -scene:3-




それは静かにはじまった...
夜の帳に覆われた静寂の中で-----

それは静かに語られた...
微睡に垣間見た夢を紡ぐように-----

セピア色に染められた時間(とき)の欠片たちが...
ゆっくりとその姿を象ってゆく-----


今宵、この店に集りし鳥たちは
止まり木の下、どんな欠片を紡ぐのか-----



男    「それにしても驚いたな... こんな若い女性が私のことを知ってるなんて... 」

女    「私はこれでも一応、ジャーナリストの端くれでして... 
      検事の事は一通り存じ上げてます... 」

男    「そうか... ジャーナリストか... そう云えばあの頃はよく、そんな人達にも檄を
      飛ばしてたな... 」

女    「常に潔白出あらねばならない... それは検事とてジャーナリストとて同じこと...
      歪んだものは正し、虚構に覆われるものは、その真実を明かさねばならない...
      検事がよく豪語されてた言葉ですよね」

男    「そうでなければ世の中が歪んでしまう... そう思わんかな...?」

女    「そうですね... そうであることが望ましいと思います... でもそう云われていた検事が
      何故、審議の最中に引退されたんでしょうか...
      当時のあの事件は裁判の結果次第で、政界にまで捜査が及ぶものと注目されていたのに... 」

マスター 「お客様... どうかもう... 」

男    「いや、いいんだよマスター... 」

マスター 「エ...?」

男    「彼女の質問の答えは、私が今夜ここへ来た事の、答えにもなるんだからな... 」

マスター 「関係があると、おっしゃるのですか...?」

男    「そのまま答えになるな... そう... 点と線で結ばれてるんだ... 」

マスター 「点と線... 」

男    「君が言うとおり... 確かに私は当時、鬼検事と呼ばれ、その過酷なまでの求刑を
      唱える猛者として、その手腕を奮っていた... しかしそれは自分のモラルであり
      天から与えられた使命だとも思っていた... 」

女    「そのお志には敬服します... でもそれなら何故、あの裁判を途中で... 」

男    「それは... 私自身が罪を犯したからなんだ... 」

女    「ご自身が罪を...?!」

マスター 「エ...? 」

男    「いやなに... 別に人を殺めたとか、物を盗んだわけじゃないんだ... ただ... 」

女    「ただどうされたんですか...?」

男    「こそ泥を一匹、見逃したんだ... 」

女    「泥棒を見逃した...? わざとですか?」

男    「そうだね... わざと見逃してやった... 」

マスター 「先生... 」

女    「それって... 」

男    「まったく間の抜けた奴だったな... こともあろうに検事の家へ空き巣に入るん
      だからな... 」

マスター 「それじゃその泥棒は先生のご自宅に... 」

男    「そうなんだ... その日は家内が留守で、ちょうど奴が物色してたところに、私が
      帰宅したんだよ... 」

女    「それでどうなったんですか?」

男    「奴は身体つきは大きかったんだが、私は腕に自信があったんで取っ組み合いになり...
      結果、私が取り押さえた... 」

女    「それじゃそれで一件落着ですよね... 普通なら」

男    「そう... 確かに普通ならそうなんだ... だがそれが違ってたんだな、そこから... 」

女    「違ってた...?」

男    「私は言葉も通じない、見も知らぬ奴の流す涙を見た瞬間... 哀れみを感じた... 」

女    「言葉も通じない...? 哀れみ...?」

男    「彼は青い目をした青年だった... 」

女    「外国人だったんですか... その泥棒って」

男    「涙を流しながら、片言の日本語でポツリポツリと話す奴の話に聞き入った私は...
      幾ばくかの金を渡してやり、見逃してやったんだ... 」

女    「検事が泥棒に金銭を与えた上に、見逃したんですか...?!」

男    「国にいる父親が病気で倒れ、帰りたいのだが肝心のお金がない... それで空き巣に
      入ったとかで... 」

女    「それは単なる言い訳で、案に同情を買おうとした作り話かもしれないのに...? 」

男    「最初はそうも思ったよ... だが、抵抗はあったにせよ、取り押さえようとした私に
      ケガをさせまいと、一切暴力を振るわなかったことも事実だ...
      私はそこに、彼の本心を垣間見たような気がしてな... 」

女    「それでその泥棒の話を信じて見逃したと... 」

男    「そうだ... 」

マスター 「それが検事をお辞めになった理由... 」

男    「仮にも現職の、それも世間では鬼検事と呼ばれる私が、泥棒の現行犯を見逃した上に
      お金まで与えてるんだ... そんな人間に検事を続ける資格はない... 」

女    「そうだったんですか... 」

マスター 「失礼ながら... わたくしは楠木様らしいと思いますが... 」

男    「鬼と呼ばれる私も... 実のところはただの情に絆される人間だったわけな... 」

女    「でもその泥棒の話... 本当だったんでしょうか... 」

男    「ああ... 話は本当だった... しばらくして奴から手紙が届いたからな... 」

マスター 「手紙...?」

男    「そこにはこう書いてあったよ...
      パパは死んだけど... そのパパのそばにいれたのは、あなたのおかげだと... 」




   
タグ:検事
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2011年07月12日

止まり木 / 第二夜 -scene:2-




静かに流れていく時間(とき)の中で...
人は様々な思いに馳せる-----

時にそれは...
セピア色に包まれた出会いであったり...
涙色に染まる別れであったり...
そしてまたそれは...
約束された再会であったり...

すべては記憶という名の眩い欠片-----

今宵、この店に集りし鳥たちは
止まり木の下、どんな時間(とき)を刻むのか-----



男    「随分とご無沙汰だったね、マスター」   

マスター 「本当にお久しぶりです... お変わりございませんでしたか?

男    「ああ、そうだね... 別にこれといって変わったところはないんだが...
      強いて言えば、頭の白いものが増えたことぐらいかな... 」

マスター 「そういえば... あれからもう5年程になりますでしょうか... 」

男    「そうだな... そんなもんだろうね... 」

マスター 「早いものですね... 時間の流れというものは... 」

男    「そうかも知れんな... それよりマスター」

マスター 「はい...?」

男    「私の注文を聞いてくれるかな?」

マスター 「これは申し訳ございません... お久しぶりにお顔を拝見したものですから...
       失礼致しました... 」

男    「(少し笑い)いやいや、一向に構わんよ... むしろ私にすれば嬉しかったぐらいだ。
      よく覚えててくれたもんだ、この私を... 」

マスター 「先生... 」

男    「それじゃ早速だが、久しぶりにアレをもらおうかな... 」

マスター 「はい... かしこまりました... 」


氷の入ったオールド・ファッショングラスに
それが注がれ、軽くステアされる-----


男    「そうか... もう5年か... 」

マスター 「お待たせ致しました... そうぞ」


男の前に、そっとグラスが置かれる-----


男    「どうもありがとう... 
      (一口飲み、ゆっくりと味わい)ああ... この味、久しぶりだな... こいつとも
      ご無沙汰だったからな... 」

マスター 「口にされてなかったんですか... ドランブイを... 」

男    「そう... 何故だかきっぱりとね... 」

マスター 「そうでしたか... 」

男    「それにしてもなんだな... 場所は変わっても、店の雰囲気は同じなんだな...
      前と同じように時間を過ごせる... 」

マスター 「それにしましても、よくこの場所がお分りになられましたね」

男    「いや、私も最初は戸惑ったよ。だがよくよく考えれば無理もない事だ...
      5年という歳月の中では色んなことがあったからね... 
      でも、なぁーに... 昔の知り合いに頼んで調べてもらえば、造作もないことだったよ」

マスター 「痛み入ります... わざわざお越し頂き、ありがとうございます... 」

男    「いやいや... そうまでして来たのには、他にもそれなりの理由があったからな... 」

マスター 「それなりの理由...?」

男    「実は今夜ここで、人と会う約束になってるんだ... そう... ちょうどその彼とも
      あれ以来だから、5年ぶりになるんだ... 」

マスター 「5年ぶりの再会ですか... 」

男    「そうなんだ... それでここを、その再会の場所にさせてもらったんだ... 」

マスター 「それは光栄です... それでしたら今夜はごゆっくりとお過ごしください... 先生」

男    「... 悪いんだがマスター、その先生っていうのは止してくれないか...
      私はもうそんな風に呼ばれる立場でも何でもない、ただの男なんだから... 」

マスター 「左様でございましたね... 失礼致しました... 楠木様... 」

女    「楠木...?」

男    「そう... それでお願いしたいな... 」

女    「楠木って... まさか... ひょっとして... (男に)あのう... 失礼ですが... 」

男    「ン? 何でしょう...?」

女    「もしかしてその昔、鬼検事と呼ばれたあの楠木真吾さんでしょうか...?」

男    「... だとしたら、何か...?」

女    「やっぱりそうでしたか... お顔は幾度かお見かけしたことがあったもので... 」

男    「そうでしたか... それはどうも... で、その私に何か?」

女    「失礼ながら... 過酷なまでの求刑を唱えられていた検事が、どうしてあの汚職事件の
      公判中に突如としてその立場から退かれたのか... それをお伺いたく思いまして... 」

マスター 「お客様... この方は今、この店の一お客様でいらっしゃいます...
       個人的な中傷や詮索は、どうかお止めください... 」

女    「ごめんなさい... でも私は... 」

男    「いいや、一向に構わんよ... そのとおりなんだからな。
      確かに私は当時、鬼検事とよばれた楠木だ... 」

マスター 「先生... 」






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タグ:ドランブイ
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