2011年07月21日

ソムリエ [ Vintage.U] -scene:1-





        :サンドリオンの店内 -----


男    「聞けば、ソムリエの勉強とやらで彼女をほったらかしで、わざわざフランスへ
      行ったとか ... 
      そんな身勝手な君のために、彼女は2年間という時間を棒に振った... 」

タクヤ  「あんたにとやかく云われる筋合いはない ... 」

男    「確かにそうかもしれない ... だが、彼女にプロポーズをした一人の男として
      また同じソムリエとして、君に問いたいことがあるんだが ... 」

タクヤ  「俺に ... 問う?」

男    「彼女を置き去りにした2年間の成果は、一体どれ程のものなのかをね ... 」

タクヤ  「2年間の成果 ...?」

男    「君にとっての2年間がそれなりに有意義なものだったのなら、それはそれで彼女も
      納得できるだろう ... だがもし、そうでないとしたら ... 君は彼女とここに
      いるべきではないと思うのだが... 」

タクヤ  「何をどうしたいって云うんだ? あんたは」

男    「どうだろう ... テイスティングでその成果を問うというのは ... 」

タクヤ  「テイスティングで...?」

男    「いかがなものかな ...? フランス帰りのソムリエ君... 」

ヒトミ  「イブキさん ... 」

タクヤ  「 ... いいだろう... やってみようか ... 」

ヒトミ  「タクヤ ... 」



マスター  それは .....
      美貌のワインに魅せられた、二人のソムリエの出会いでした ...
      そしてそれは、男として ... またソムリエとしての
      プライドを賭けた駆け引きでもありました ...
      果たしてこのテイスティングの答えの向こうにあるものは -----



男    「マスター ... 聞いての通りです ... 大変恐縮だが、少しの間だけこの場をお借り
      したいんだが ... 」

マスター 「もし、お断りすれば ...?」

男    「そうだな ... 場所を変えて、別の方法で ... 答えを出すしかないかな」

マスター 「別の方法 ...」

男    「多少 ... 荒っぽいやり方になるかもしれないね」

タクヤ  「それもいいかもしれないな ... 」

ヒトミ  「タクヤ ... 」

マスター 「そうですね ... そもそも『ソムリエ』という言葉は、『樽を運ぶ男』という
      意味だそうですから ... 」

バーテン 「マスター ... 」

男    「ほう ... よくご存知なんですね、マスターは」

マスター 「しかし ... それを承知でお二人をこのまま、この店からお出しするわけにも
      まいりません ... 」

男    「となると ... 答えは一つですよね ... 」

マスター 「幸い、他のお客様もいらっしゃらないことですし ... しばらくの間、この場を
      使って頂くのには、問題ないかと ... 」

バーテン 「でもマスター ... 」

男    「よし、話は決まった ... いいかな? ソムリエ君」

タクヤ  「さっさと始めよう ... マスターに迷惑だからな ... 」

男    「では、そうしよう ... 」

ヒトミ  「マスター ... 私は ... 」

マスター 「ヒトミさん ... この状況はあなたの好まざる状況ではないでしょうが ...
      大切な答えを出すには、大事な瞬間と云えるかも知れません ... 」

ヒトミ  「大切な答え ... 」

男    「それじゃ、問題とジャッジはマスターにお願いしたいんですが...
      (タクヤに)君はそれでいいかな?」

タクヤ  「結構だ ...(鼻をすする)」

男    「いかがですか? マスターは」

マスター 「かしこまりました ... 」

男    「じゃ ... はじめようか ... ソムリエ君 ... 」






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2011年07月20日

ソムリエ [ Vintage.T] -final-







バーテン  今宵も「バール サンドリオン」へお越しいただき、誠にありがとうございました...

      ではここで... 今回登場致しましたカクテルを、改めてご紹介させて頂きます...

      カクテル名は「スプリッツアー/SPRITZER」-----

      その生まれは、モーツアルトの生誕の地としても知られるザルツブルグ音楽祭で

      供される飲みものだと聞いております。


      またネーミングの語源はそもそもドイツ語で、「はじける」という意味の

      シュプッリッツェンから転じた言葉だそうで、ソーダ水で割った後のはじける泡から

      こう呼ばれるようになったそうです .....


      どちらかといえば比較的歴史の浅いカクテルで、白ワインのソーダ割りの新しい呼び方

      という方が、正しいのかも知れません。

      つまり ... ハイボールの一種という解釈であり、またその一方では ...

      即興のシャンパンといった雰囲気もしなくはありません .....


      さてその「スプリッツアー」... レシピは至って簡単で ...

      キューブ・アイスを入れたワイン・グラスに、冷やした白ワイン(2/3)を注ぎ

      そこへ同じく冷やした(1/3)を加え、軽くステアすれば出来上がりです .....


      白ワインをソーダで割るだけ ...

      そんなこの「スプリッツアー」は、アルコール分、味わい、共に羽のように軽い

      カクテルですが ...

      爽やかな酔いを感じさせてくれるのは、ほんのりと漂うワインの香りの魔術と

      いえるかもしれません .....


      それでは ...

      明日のお越しを、心より御待ちしております...

      ありがとうございました .....




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2011年07月19日

ソムリエ [ Vintage.T] -scene:4-





        :サンドリオンの店内 -----


タクヤ  「そうか... そういう訳か ... それでイライラしてたってことか ... 」

ヒトミ  「別にイライラなんかしてない ... ただ ... 」

タクヤ  「ただどうしたんだ?」

ヒトミ  「だから私 ... 」

タクヤ  「返事したのか? そのプロポーズに」

ヒトミ  「気になるの ... ?」

タクヤ  「気にならないわけないだろう ... 」

ヒトミ  「そうなんだ ... 気になるんだ、やっぱり ... 」

タクヤ  「そういう言い方はないだろう ... で、どうするつもりなんだ ...?」

ヒトミ  「それって ... 答えなきゃいけないのかな ... 」

タクヤ  「ヒトミ、お前 ...(鼻をすする)」

ヒトミ  「これは私の問題なわけで ... 今更とやかく言われたくない... 」

マスター 「ヒトミさん ... 」

タクヤ  「そうか ... そうだな ... 2年間も女をほったらかしにしてた男には関係ない
      かもな ... 」

ヒトミ  「あなたがフランスへ行く時には ... そんなこと云ってくれなかった...
      でもイブキさんは、私を連れて行きたいと云ってくれた ... 」

タクヤ  「イブキって云うのか ... そいつは ... 」

ヒトミ  「そう ... イブキ ユウジって人よ ... 」

タクヤ  「イブキ ユウジか ... 」

ヒトミ  「それもあなたと同じ ... ソムリエよ... 」

タクヤ  「なんだって ...?!」


        SE:店のドアが開く音 -----


バーテン 「いらっしゃいませ ... 」

マスター 「いらっしゃいませ、ようこそ ... 」

男    「やっぱりここにいたね ... 」

ヒトミ  「! ... イブキさん ... 」

男    「やあ ... 」

タクヤ  「... こいつが ... ?」

男    「近くまで来たんで、ひょっとしたら君がいるんじゃないかと思ってね ...
      (少し笑って)今夜は勘が冴えてたな ... 」

ヒトミ  「イブキさん ... 今はその ... 」

男    「いやいや、お邪魔するつもりはないよ ... 久しぶりのご対面をね」

ヒトミ  「!... イブキさん ... 」

男    「その人なんだろう? 君の2年間を台無しした、ソムリエの彼というのは」

タクヤ  「... 何だと ... 」

マスター 「お客様 ... 」

男    「おっと ... 気に障ったなら謝るよ ... しかし、人のフィアンセを夜な夜な
      呼び出すようなことは、止めてもらいたいもんだね ... 」

ヒトミ  「フィアンセ ...?」

タクヤ  「口の利き方を知らない人なんだな ... あんたは」

男    「たとえ口の利き方を知らなかったとしても ... ワインの利き方は君より
      知ってるつもりだが ... 」

タクヤ  「どういう意味かな、それは」

男    「聞けば、ソムリエの勉強とやらで彼女をほったらかしでわざわざフランスへ
      行ったとか ... 
      そんな身勝手な君のために、彼女は2年間という時間を棒に振った... 」

タクヤ  「あんたにとやかく云われる筋合いはない ... 」

男    「確かにそうかもしれない ... だが、彼女にプロポーズをした一人の男として
      また同じソムリエとして、君に問いたいことがあるんだが ... 」

タクヤ  「俺に ... 問う?」

男    「彼女を置き去りにした2年間の成果は、一体どれ程のものなのかをね ... 」

タクヤ  「2年間の成果 ...?」

男    「君にとっての2年間がそれなりに有意義なものだったのなら、それはそれで彼女も
      納得できるだろう ... だがもし、そうでないとしたら ... 君は彼女とここに
      いるべきではないと思うのだが... 」

タクヤ  「何をどうしたいって云うんだ? あんたは」

男    「どうだろう ... テイスティングでその成果を問うというのは ... 」

タクヤ  「テイスティングで...?」

男    「いかがなものかな ...? フランス帰りのソムリエ君... 」

ヒトミ  「イブキさん ... 」

タクヤ  「 ... いいだろう... やってみようか ... 」

ヒトミ  「タクヤ ... 」



マスター  それは .....
      美貌のワインに魅せられた、二人のソムリエの出会いでした ...
      そしてそれは、男として ... またソムリエとしての
      プライドを賭けた駆け引きでもありました ...
      果たしてこのテイスティングの答えの向こうにあるものは -----






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2011年07月18日

ソムリエ [ Vintage.T] -scene:3-




ヒトミ  そう ... あれはちょうど3日前の出来事だった ----


         :回想 -----

         :3日前のサンドリオン -----


男    「すまないね ... 急に呼び出したりして ... 」

ヒトミ  「いいえ、そんな ... 私こそすみません ... わざわざここまで足を運んで
      もらったりして ... 」

男    「いやいや、そんなことは一向に ... それより、感じのいいお店だね、ここは」

マスター 「... どうもありがとうございます」

ヒトミ  「実はここ、私の行きつけのお店なんですよ」

男    「フーン ... なかなか趣味がいいんだな、やっぱり君は」

ヒトミ  「通い始めて、かれこれ3年ぐらいになるんですよ ... もっともこのお店自体は
      ここの場所へ移って1年半ぐらいですけどね ... 」

男    「というと?」

マスター 「以前は海岸通りの方で、店をやっておりましたもので ... 」

男    「なるほど ... そういうことか ... 」

マスター 「よろしければ、ご注文をお伺いいたしますが ... 」

ヒトミ  「私はいつものスプリッツアーを ... 」

マスター 「かしこまりました ... (男に)お客様の方はいかがいたしましょう?」

男    「そうだな ... ここでワインを飲むのもなんだし ... それじゃ、彼女と同じもので」

マスター 「はい、かしこまりました ... しばらくお待ち下さい ... 」
         

        SE:氷を入れたワイン・グラスに白ワイン(2/3)を注ぎ
           そこへソーダが加えられ、軽くステアされる -----

         :その音にまぎれて -----


ヒトミ  「ところでイブキさん ... 今夜はどうしたんですか? 急に」

男    「ああ ... 実は今度、研修でフランスへ行くことになったんだ」

ヒトミ  「フランス ... ですか?」

男    「それでこの際、君に云っておきたいことがあってね ... 」

ヒトミ  「云っておきたいことって ... この私に?」

マスター 「失礼致します ... どうぞ ... 」


         :二人の前にグラスが置かれる -----


男    「どうも ... 」

ヒトミ  「ありがとう ... 」

男    「とりあえず、乾杯しようか ... 」

ヒトミ  「エ? あ、はい ... 」

男    「それじゃ ... 僕たちの新しい門出を祝して ... 」

ヒトミ  「僕たち ...?」

男    「乾杯 ... 」

ヒトミ  「あのイブキさん ... それってどういう意味なんでしょう?」

男    「そうだね ... 少し唐突だったか ... つまりこうだ ... 一緒に来てほしいんだ
      フランスへ」

ヒトミ  「エッ?」

男    「そう ... この僕と結婚してくれないだろうか」

ヒトミ  「結婚 ...?!」




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2011年07月17日

ソムリエ [ Vintage.T] -scene:2-





         :サンドリオンの店内 -----


        SE:氷を入れたワイン・グラスに白ワイン(4/5)と

          カシス・リキュール(1/5)が注がれ、軽くステアされる -----


タクヤ  「(鼻をすすり)マスターとも、ホント久しぶりですね」

マスター 「そうですね ... 確か最後にお目にかかったのは、2年程前でしょうか .... 」

タクヤ  「そう ....  この店がまだ海岸通りにある頃だったから、そんなもんかな ... 」

バーテン 「お待たせいたしました ... どうぞ」


         :二人の前にグラスが置かれる -----


ヒトミ  「どうもありがとう ... 」

タツヤ  「どうも ... 」

マスター 「ではお二人も今夜は、お久しぶりの再会というわけですね ... 」

タクヤ  「そうだな ... (鼻をすすり)2年ぶりになるのかな ... なあ、ヒトミ」

ヒトミ  「 ..... 」

タクヤ  「おいおい ... さっきからどうしたんだよ、ろくに口もきかないで ...
      せっかく久しぶりに逢えたんだから、楽しくやろうぜ、楽しく(鼻をすする)
      さあ、グラス持てよ ... 乾杯しよう ... 2年ぶりの再会にな」

ヒトミ  「 ... どういうつもりなの ... 」

タクヤ  「エッ ...?」

ヒトミ  「どうして今までほったらかしだったの ... ?」

マスター 「ヒトミさん ... 」

タクヤ  「だからそれは ... 」

ヒトミ  「せめて電話の一本ぐらい ... かけてくれたっていいじゃない ... 」

タクヤ  「悪かったと思ってるよ ... そのことに関しては」

ヒトミ  「それだけなの ... ?」

タクヤ  「エ ... ?」

ヒトミ  「それだけで ... 私が笑いながら乾杯出来るとでも思ってるの?」

タクヤ  「... 一体何が云いたいんだ? お前は」

ヒトミ  「そりゃ、あなたにとって大事な時間だったと思うわ ... この3年間は。
      でもそれは私にとっても同じ ... 貴重な時間だった ..... 」

タクヤ  「だから俺はこうして ... 」

ヒトミ  「こうして何なの? この2年間の空白をこの一瞬で埋められるっていうの?」

タクヤ  「ヒトミ ... お前変わったな ... (鼻をすする)」

ヒトミ  「あなたがこうさせたのよ ... 」

タクヤ  「俺が?」

ヒトミ  「だって ... 逢えなくて淋しくて ... 話せなくて声聞けなくて私辛かった ... 
      そんな気持ち分かる? 今のタクヤに」

タクヤ  「ヒトミ ... 」

ヒトミ  「それでも ... タクヤが一人前のソムリエになるまでは、私も頑張ろうって
      思ってたから ... なのに2年もの間、何の連絡もくれないなんて酷いじゃない」

タクヤ  「 ... 」

ヒトミ  「あげくに今度帰るからよろしくって ... 一体何のつもりよ」

タクヤ  「 ... 随分な云われようだな ... 喜んでもらえると思ってたのに ... 」

ヒトミ  「時間は人を変えるわ ... 」

タクヤ  「人を変えるか ... (鼻をすする)」

ヒトミ  「 ... どうして ... どうして今なの... 何故今頃帰ってくるのよ ... タクヤ」

タツヤ  「‭ヒトミ ... 」




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